「センパイ、私たちのスピードでいきましょう!」
「てかいつもセクハラ紛いな事言ってるのに…。他人に言われるとダメなんだね、優良は」
「いや! セクハラ紛いな事なんて………!」
そう言って否定するが、不意に頭をよぎる“センパイのパンツチェック(未遂)”。
いや、あれは未遂だからセーフ。極めてセーフに近いセーフである。
「……………………ないっす!」
私は潔白を証明するように片手をピシッと上げて、否定をするがえみには全く信じてもらえていないようで、じぃっ、とこちらを見ている。
「間があったように感じたんだけど?」
「気のせいかと!」
「……まぁうちが気にする事じゃないからさ。どうでもいいんだけど」
ならどうして言った!!! と強くは言えず。私は少し引き攣った笑顔を浮かべながら立ち上がるえみを凝視する(睨んでいる、と言っても過言ではないかもしれない)。
「それじゃうちはもう教室に行くよ。ご飯食べ終わったしね。でも優良はもう少し先輩といたら? あ、先輩。パンご馳走様でした」
やや早口でそれだけ言い、センパイに頭を下げるとえみはタタタッ、とその場を後にした。
場を荒らすだけ荒らして帰りやがった、あの野郎…!
なんて思いながら去っていくえみの背中を見つめているとセンパイが呟くように「12月ですか…」と言った。
「センパイ?」
「結城さんはどうしたいですか?」
「えっ…。えっと…、それは…」
つまりさっきえみが言っていた“ホテル”の事ですか…?
と、そう思いながらセンパイの言葉をドキドキと心臓を高鳴らせながら待つ。
「予定です。どこか行きたいところはありますか?」
「あ……そっちですか…」
「“そっち”、とは?」
「いえ、なんでもないです!」
「そうでしたか」
センパイはニコッ、と笑ってそう言い、ガーリックトーストを齧る。
そんなセンパイに私は「はい!」とだけ返して視線を移し、自分の食べていたもう冷めきっているクロワッサンを見つめる。
予定か……、どうしようかな…。
えみに言われて思わずあぁ言っちゃっただけで…。確かに早いとは思うけど、イマドキの高校生なら普通なんじゃ…?
「…………結城さん?」
………………いやいや。仮にそうだとしてと私とセンパイのスピードでいこう。うん。他の人に惑わされちゃダメだよね。
それにいざそういう事になったら私、緊張と恥ずかしさと何かで死にそうになるもん!! きっと!!!
「結城さん、どうかし──」
「センパイ!」
「はい、なんでしょう?」
「私たちのスピードで! ですよ!」
「…………すみません。何の話ですか?」
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