「センパイ、えみが意味不明な事を!」


「センパイ! このジャムパン美味しいですよ!」


「………………」


「センパイ! こっちのクリームパンも美味しいです!」


「………………」


「センパイ!」


「………………」


「センパァイ!」


「………………あのさ」


センパイにクロワッサンをあーんしている時だった。えみが少し気まずそうに口を開く。


「これ、うちがいる意味ある?」


「え、ないの?」


「さっきっから二人のラブラブ見せられている意味があるって思えるとでも?!」


私の左隣に座るえみはそう言ってセンパイから貰ったカツサンドを頬張る。そしてそれをミルクティーで流し込んだ。


「大体うちいなくても…」


「いえ。普段から結城さんがどのような奇行に走っているのかを知りたくて。教えていただけませんか?」


おいこら、センパイ。どさくさに紛れて“奇行”って言いましたね? “奇行”ってなんだ、“奇行”って。


「奇行って言っても…思い当たるのはひとつ…ふたつ……」


「えみも! 真剣に考えなくていいから!」


「みっつ、よっつ…」と増える私の奇行カウンターに私は終止符を打ってオレンジジュースを飲む。


「そもそも私が奇行に走った事なんて………」


不意に思い返される奇行の数々。


センパイの教室へ突然の訪問。

センパイのパンツチェック(未遂)。

センパイの………、と。これ以上思い出すと心が痛くなるためやめておこう。


「ありますよね?」


「ヤメテクダサイ…。ココロガ…、ココロガイタイデス……」


「うっ!」なんて言いながら心を抑える。


「そういえば…」


そんな様子を見ていたえみがゆっくりと口を開いた。


「ん?」


「三ヶ月記念日、来月なんだよね?」


「そう! 12月!」


私が嬉々としてそう答えるとえみはなぜか真剣な顔つきになり、一瞬考える仕草をしてからこう続けた。


「どこか行くの?」


「“どこか”……」


「“行く”………ですか」


「まだ決めてませんよね」


「えぇ」


私とセンパイが顔を見合わせているとえみは深いため息を吐いた。


「せっかくの三ヶ月記念日なんだし、どっか行くのは決定事項として…。予約とか必要だと思うよ」


そう言ってミルクティーを飲むえみの言葉はなんだか信ぴょう性があった。


「確かに12月はイベント月ですし。予約は必須かもしれませんね」


「どうせならホテルとか泊まりなよ」


「……………」


えみの爆弾発言に私は持っていたオレンジジュースの紙パックを落としてしまった(中身を飲み終わった後だったから良かった)。


「…………おやおや。紙パック、落ちましたよ」


そう言って私の落とした紙パックを拾ってくれるセンパイにお礼も言わずに私はえみのほうに詰め寄る。


「いやいやいや!!! 何言ってるの?! 私たちまだ高校生だよ?! そそそ、そんな事より大切な事があるでしょ?! 何言ってるのかよく分かりませんねぇ!! あはははは!!!」


えみの肩をブンブンと揺さぶりながら私がそう言うとえみは呆れたように私の手を肩から剥がした。


「分かりやすく動揺してんね…」


「そうですね」



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