「センパイ、運命の再会ですね!」


「やっとお昼だァ〜〜〜」


お腹が究極に減る地獄の四時間目を終えて私はバッグからお財布を出して席を立つ。


「えみ、購買行くよ〜」


「おっけ〜」


えみのなんとも言えない緩い返事に私は返事を返さず、一緒に教室を出る。もちろんえみの手の中には財布が握られている。


本来ならママからお金を貰って購買のパンやらジュースやらを買うのだが今日は忘れてしまっていた。

レシートを見せて後で請求をしよう、なんて思っているとすぐに購買に着く。案の定の人の多さである。


「うわ、やっぱり人多い…」


「今日ってなんかあったかな…?」


「近くのパン屋さんからの直輸入日だった気が…。いい匂いするし」


「それだ。…少し避けて待ってる?」


「いや、食べる時間なくなるし…」


そう言って考え込むえみ。そして何かが決まったのかパッ、と顔を上げてこう言った。


「よし。割り込もう」


「ちょっと待て」


早速割り込みに行こうとしているえみの肩を掴み、慌てて止める。


え? この子、今なんて言った? 割り込み? ダメでしょ!!!


「割り込みはダメでしょ!! 並びなさい!」


「だってもう無法地帯だし…。並ぶとか関係なくなってるし…」


確かに購買の方を見れば人はそれこそ砂糖に群がるアリのように列をなしていない。無法地帯である。


「でも並ばないのは……」


「おや。結城さんじゃないですか」


私は後ろから聞こえてきたその声にパッ、と振り返る。


このイケボは………!


「結城さんたちも購買で買い物を?」


購買の袋を下げたセンパイだぁぁあ!!!


きちんと着こなした制服がスーツに見えてきて、妻である私のお願いでしょうがなく会社帰りにスーパーに寄った夫に見えるのは気のせいではないだろう。


「そうなんです!」


そう食いつくように私は言い、センパイへ駆け寄る。それを後ろから見ていたえみには「犬だな」なんて言われたが気にしない。気のせいである。


「そうでしたか。しかし人が多くて大変なのでは?」


「そうなんですよ…。だからどうしようかと…」


「あぁ。それでしたら…」


センパイはそう言うとガサッ、と片手に持っていた袋を私の目の前に掲げた。


「一緒に食べませんか? そちらの…えみさんもご一緒に」


「えっ、でもそれはセンパイのお昼じゃ…」


「実はパン屋直輸入という言葉に惹かれまして…。いつもよりも多く買ってしまったんです。なので一緒に消費して頂けると嬉しいのですが…」


「そういう事なら…! ねっ、えみ!」


私が後ろを振り返ってそう聞くとえみは片手を振りながら「いやいやいや」と言った。


「うちがいたら楽しめないでしょ。二人で食べてきなよ」


「いや、えみも一緒にってセンパイ言ってるから! 一緒に食べるぞ!」


きっとえみは遠慮をしてしまっているのだろう。いつもなら遠慮の“え”の字も出ないくせに。

こういう時は空気が読めちゃう子なんだよな、なんて思いながら私はえみの腕に自身の腕を絡ませる。


「それじゃ行きましょー! 場所は中庭でいいですか?」


「はい。そちらにしましょう」


「ちょっと! うちはまだ行くとは…」


「大丈夫、大丈夫! 中庭には自販機あるし!」


「そういう意味じゃねぇって!」



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