「センパイ、持ってますか?」
「セーーーーフッ!」
「アウト寄りのセーフだ。早く席に着けー」
「なんでよ、カーティ! どう考えたってセーフじゃん!」
「だからセーフって言っただろ! それに俺の事をカーティと呼ぶな!
「うぇ〜〜、カーティに怒られたァ…」
なんて情けない声を出しながら私は席に座る。私から見て斜め前にいる親友のえみ(本名は
極めて不快である。くそっ。
「それじゃ結城も来たところだし、全員いるな〜。おっけ〜。今日の予定は…」
そう言ってカーティは出席簿を見ながら今日の予定を話す。それを右から左に流して私はバッグの中身を確認する。
…………やっぱり昨日の教科書のままだ…。しまった…。教科書、誰かに借りないと…。
「はぁ」、なんてため息を吐きながら私は頬杖をついてカーティの話を(仕方がなく)聞く。
私たちの担任。カーティの本名は轟
車好きと苗字の轟からカー(車)と、ティーチャー(先生)の“ティ”から“カーティ”とみんなからは呼ばれている(本人は嫌がっているが)。
「んで、文化祭終わってもう12月になってきて寒くなるから着込んでおけよ〜」
カーティの言葉に私は「そうだ」と呟く。
もう12月だ。センパイと付き合って3ヶ月になる月である。
少し前にえみが言っていた“3ヶ月単位で別れる現象”…。気をつけなければ。
「それじゃ一時間目は数学な。お前ら頑張れよ〜」
カーティはそう言うと教室を出ていった。と、同時にクラスのみんながザワザワと騒ぎ出す中、えみがこちらへとやってくる。
その顔ははやりニヤニヤしている。
「優良〜、今日は遅かったね。どうしたの?」
「そんなニヤニヤしてる人に教えたくない」
「先輩と何かあったんでしょ」
「ないよ」
「3ヶ月近いから別れよう、とか?」
「それはないですぅ! ラブラブなんで!」
「じゃあなんでギリだったの?」
「寝坊」
「つまんな」
「聞いてきたのそっちでしょ…」
私はため息を吐きながらバッグの中を再度確認する。ガサガサ、と筆箱やらスケッチブックやらを避けて数学の教科書とノートを探す。
「あ」
「何、どうした」
「昨日、数学あった?」
「ないよ」
「終わった…」
えみの言葉を聞き、私は机に突っ伏した。数学の先生は厳しくない優しいおばあちゃん先生で、教科書はなくてもさほど問題は無いのだが…。
数学が苦手な私からすると教科書はあった方がいい。
「バッグの中身、昨日のままなんだよね…」
「隣のクラスから借りてきたら?」
「…………センパイ、持ってるかな?」
「さすがに一年の教科書持ってねぇよ」
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