6.花嫁強奪戦
ワンワンと眉毛犬っコロが吠えると、侍は振り向いて、オレ達を見た。
ビクッとするオレ達に、
「どうやら、沢山のニンゲンが招待されたようだ」
と、侍はそう言うと、ツカツカと近付いて来た。そして、オレ達の目の前で、
「初めまして、この世界は来たばかり?」
と、笑顔で問う顔に、滿井と田辺が惚れ惚れしている・・・・・・。
こんな事態で普通は恐怖を感じ、脅えるのが通常だと思うが、そんな感情が支配していても、恋は別腹なんだなぁとオレは改めて思う。
「ねぇねぇ、学ランの平太郎さんだよね?」
翔太が友好的にと言うか、無礼にと言うか、怖いもの知らずと言うか、やはりそこは勇者だから、当然のように侍に話しかける。
勇者とはそういうものだ。
知らない町人に平気で話しかけ、知らない家にズカズカ上がり込んで、開いていれば城の宝だって持って行く。
まさに翔太そのもの。
そんな話はどうでもいいとして。
オレは侍を見た。
侍とは言っても、日本刀を持っているだけで、見た目はオレ達と変わらない高校生のようだ。着ているものも、オレ達はブレザーだが、詰襟の黒い学ランと言う制服を着ている。
「俺の名前は太郎、大平 太郎(おおひら たろう)」
「大平? 平ちゃんと同じ苗字だ」
オレがそう言うと、
「大平先生とボクは遠い親戚関係にあるんです」
突然、木田がそんなカミングアウト。
へぇと頷くオレと翔太。だが、田辺が、
「じゃあ、顔が似てるって事はこの人、木田くんの親戚の一人じゃないんですか?」
そう言うから、オレと翔太はえぇ!?と、驚く。
「わかりません、僕の血筋関係の人間が失踪したなんて聞いた事もないですから。でもそれは多分、遠い昔なのかもしれません、アナタのその学ランのボタン、桜の紋章ですが、そんな学校は、僕達の時代には、もう存在しませんから」
と、木田は、大平 太郎と名乗る男の第二ボタンを指差して言った。
と言うか、大平 太郎、略して平太郎でいいだろう。
「・・・・・・そう、もうあっちの世界は、そんなに時間が流れたんだね」
平太郎さんは悲しげに、そう呟く。
「あ、あの、アナタはどうやってこの世界に来てしまったんですか? オレ達の世界で、アナタは七不思議の1つで——」
オレはそこまで言うと、言い辛くなってしまい、黙り込んだ、すると、
「平太郎さんは、その剣で多くの女生徒を襲って、姿を消したんだよ」
翔太がそう言い出し、オレは、幾らなんでも何でもかんでも言い過ぎだろと、バカッ!と、翔太を睨んだ。だが、平太郎さんは、
「それは怖いね」
と、微笑んだ。
その優しい笑みに、またも滿井と田辺が惚れ惚れしている。
微笑んだだけで、うっとりされるって、実際にあるんだなぁ。
「それで事実はどうなんですか?」
木田が思い切って確信に迫る。自分の血縁関係かもしれないとなると、犯罪者か、そうじゃないのか、気になるのかも。
「多分、襲ってはないんじゃないかな。只、この剣を持ってみたかっただけとか、大した理由はなく、持ち出してしまったのかも。でも証明はできない。悪いが、もう記憶にないんだ。昨日の事のようで、今日の事のようで、でも、遠い昔の事のようで、俺はすっかり忘れてるよ。でも覚えてる事もある。俺は間違いなく、人間だった——」
「人間だった? 今だって人間だと思うけど?」
オレがそう言うと、平太郎さんではなく、木田が、
「七不思議の住人は人間でも、人間ではないのかも」
と、呟き、皆、黙り込んだが、オレは、まさかと、翔太や木田、滿井や田辺を見て、
「オレ達、8つ目の七不思議になるなんて事ないよな!?」
そう言った。
シーンと静まる嫌な空気。
隠された8つ目の不思議を知ると、不幸になる。
そのシークレットって、七不思議の世界に来てしまい、8つ目の不思議になってしまうなんて、そんな事ないよなと、オレは皆を見る。
「・・・・・僕達は肉体ごと、こちらへ移動した訳じゃありません。こうして実体化してますが、多分、それは実体化しているようなだけであって、実際は実体化していないのかもしれませんから、ええっと、それに、七不思議は人によって言い伝えているものが違えば、七つだけではないでしょうし、だとしたら8つ目と言う数字になるとは限らないと言うか、だから、その、えっと、兎に角、僕達はまだ帰れる手段がある筈ですから!!」
動かない腕時計を見ながら、木田がそう言ったが、やはり只の憶測、説得力はない。
「あのさ、ずっと思ってたんだけど、赤川 哲夫って人肉食った犯人。ソイツ、ここの住人だったんじゃねぇの? 確か、階段を上ってて、足を踏み外して、高い場所から転がり落ちてから、おかしくなったんだろう? つまりさ、赤川 哲夫はその時に死んだんじゃないのか? で、魂みたいなもんがさ、抜けちゃって、そこに肉体だけが残って、こっちの住人が、オレ達みたいに、たまたま、あっちの世界へ行っちゃって、赤川 哲夫の体の中に入っちゃったんじゃないのか?」
オレがそう言うと、木田はうーんと考え始め、
「有り得るかもしれませんね、もしかしたら、こちらの世界にもある、その階段を上っていた何者かが、たまたま死体という肉体のある空間で立ち止まってしまったとか、或いは、共に足を踏み外したとか、何らかのアクションを起こした拍子に、リンクする交差した空間が開き、赤川の肉体に入り込んだのかもしれませんね。多分、この世界と、僕達の学校は、あちこちでリンクされているんだと思います、それが何かの弾みで、リンクが作動し、こちらの世界とあちらの世界を行き来してしまうのかもしれません。でも、僕達全員が移動する程、そう簡単にリンクが作動するものかと言うのが謎になりますが——」
更に考え始める。すると、平太郎さんが、
「難しい話はよくわからないが、キミ達は王様に招待されたんだと思うよ」
そう言った。
「王様から招待状なんて届いてないよ? なのに来ちゃって平気なんかな?」
翔太が、キョトンとした顔で聞き返すが、招待状が届いても、普通来る気はないだろう。
オレはないぞ!
そもそも王様って辺りに不信感だらけだ。
「確かに、誰かに連れて来られたり、招待されたりすれば、僕達が魂だけだとしても、実体化している理由がつきます。ここの住人に、招待されると言う事は、肉体がなくても、存在していると言う事ですから。でも、どうして僕達が王様に招待されるんですか?」
木田がそう平太郎さんに尋ねてる間、翔太が、招待状来た?と、小さい声でオレに聞くから、招待状ない奴は城で美人の姫と踊れないと、からかってやると、翔太は城で美人と踊りてぇ!!!!と、本気で嘆く。そんな翔太に面白ぇと笑った、その時、平太郎さんが、
「この世界が終わろうとしているからだよ」
そう言った事で、ふざけていたオレと翔太はシーンと静まり返った。
この世界が終わる?
「王様は向こうの世界の者を一人でも多く、こちらに呼び寄せ、世界が終わる根源を止めようとしているんだ。だから、こちらと向こうの世界を繋ぐ扉を幾つか開け放ち、こちらへ来られる要素がある者は全て引っ張ってこようって魂胆だと思うよ。全ての扉が開くのは一瞬で、全て同じ時刻だと言うから、キミ達は、その一瞬に、開いた扉に飛び込んだんじゃないかな」
平太郎さんがそう言うと、木田が、成る程と頷きながら、
「放課後の16時44分。それが扉が開く時間で、僕達は、その時間に事故に遭遇し、抜けかけた魂が、開いた扉に飛び込んでしまった。そして、王様は招待する為に扉を開けた訳だから、扉に飛び込んだ者は、肉体があろうが、魂だけだろうが、招待者として実体化、つまり、この世界に確実に存在するって事なんですよ!!」
木田がそう言って、平太郎さんを見るが、平太郎さんは、特に頷く事も、首を振る事もなく、
「王様は世界を終わらせない為に、まだまだニンゲンを呼ぶんじゃないかな。でも俺はこの世界が終わってくれた方がいいかな。もうこの世界にいる意味がない——」
最後の台詞を切なそうに言う平太郎さん。
何故、いる意味がないのか。
確かに、元々は人間なんだから、こんな世界にいる意味はないだろう。
可哀想だとは思うが、所詮、他人事。
オレ達は、この世界が終わるという事に、不安感を覚えていた。
この世界が終わったら、オレ達はどうなるんだ?
そして、木田がハッと気付いたように、
「新校舎ができるからじゃないですか!?」
そう言った。
「新校舎ができれば、旧校舎は壊されて、七不思議も一緒に消えますよね。でも、新校舎が完成する前に、事故が多く起これば、新校舎の工事は中断になる可能性があります、世界が終わる根源を止めるとは、そういう意味なのでは!?」
木田が、そう言うと、翔太が、
「でも略完成しちゃってんじゃん? 今更、中断するもんなん?」
と、聞き返す。
「この世界が終わらないよう、何か手を打たなければと、それが少しの可能性でも賭けてみる価値があるのでしょう。それに新校舎が完成するのは7月ですから、まだ2ヶ月もあって、その間に事故が多く起これば、中断、もしくは延期などは充分に考えられますよ、学校側も新校舎より生徒の身の方が大事でしょうから」
木田がそう言って、深刻な顔で、何故かオレを見る。
わかっている、木田が言いたい事は。
このまま、王様の無茶な手段を放っておいたら、他の生徒達も、こちらの世界へ次から次へ来て、こっちの住人達の餌になるに違いない。
オレ達の高校は重体に繋がる事故やら、解決策のない事件で溢れ、閉鎖になる可能性もあるだろう。
だからなんだって言うんだ?
オレ達はその最初の犠牲者じゃないか!
特にメイは——!
メイはオレの彼女なんだぞ!
カエルの花嫁でもなければ、餌でもない!
オレだって喰われてたまるか!
関係ないが、彼女と言えば、高二になって、修学旅行前と夏休み前って言うのもあるせいか、急に彼女できた奴、多いよなぁ・・・・・・。
彼氏彼女がいなくても、修学旅行を楽しみにしてる奴も一杯いるし。
嫌な先生もいるけど、平ちゃんは、割りと好きな先生で、他にもいい先生はいる・・・・・・。
勉強は嫌いだけど、友達と一緒にいられる学校は楽しい。
学食のラーメン定食は気に入っているし、文化祭や体育祭の、祭りごとイベントは好きだ。
ムカツク先輩はいるけど、挨拶をしてくれる後輩もできて、オレは、あの学校が——。
メイと出会えた、あの学校が好きかもしんない。
オレと同じで、みんな、あの学校に入学できたから、出会えた人がいる訳で——。
木田はオレをずっと見ている。
あぁ、わかったよ、もう!!!!
人間的にオレはそんなに悪い奴じゃない!
だから、自分本位な考えだけを持っている訳じゃないし、他力本願だけでもない!!
「王様がこの世界を守るなら、オレ達はオレ達の世界を守ろう。というか、オレ達の学校だけど」
木田を睨みながら、そう言うと、木田はホッとしたように微笑み、
「僕も榛葉くんに賛成」
そう言った。
「木田くんが賛成なら私も賛成」
と、滿井。
「わ、わたしも賛成です」
と、田辺。
「ボクはタクに賛成!」
そう言った翔太に、
「つまり木田くんが賛成なら賛成って事?」
と、滿井が言うが、翔太は、
「誰が賛成してもしなくても、タクに賛成!!!!」
と。
「でもさ、どうやってオレ達の学校を守る?」
オレがそう言うと、平太郎さんが、
「王様は大変な美食家。若くて美しくて賢い娘しか食べない」
突然、そう言った。
「私、超危険じゃん!!!!」
声を大にして、自分の身を抱くように両手を胸の辺りで交差し、肩を持つ滿井に、
「今、そんな冗談いらないから」
と、普通に突っ込んだ翔太の首を滿井が絞める。それを無視して平太郎さんは話し続けるから、オレも木田も田辺も、若干、煩い環境ではあるが、平太郎さんの話しを黙って聞く。
「王様が美食家だから、王様もどんどん優れた人間に近付いて行き、今では人間以上のチカラも持っているけど、花嫁さんがいないと王様はチカラを使えない。何故なら、王様は愛されないと、チカラのない只のカエル。どんどん優れた人間に近付いても王様は根本的にカエルだから、醜い姿。醜い自分を愛してくれる者が現れてこそ、王様は人間以上のチカラを使えるんだ。人間は愛あってこそ。王様の能力は人間以上のチカラだけど、人間から得たものだから、愛がなければ使えなくなる。だけど、王様は花嫁さんをぺロリと食べてしまった。とても愛してくれていたのに・・・・・・いや、愛そうと努力していた彼女を・・・・・・ペロリと。理由は、こちらへ引っ張ってきた娘が、思いの他、王様の心を射止めてしまったから——」
「私じゃないわよね!?」
「だから風香ちゃんは若いだけで、美しくも賢くもないっしょ!?」
懲りずにそう言った翔太の首を、さっきよりも更に強く締め上げる滿井。
「だから、花嫁さんの心を射止める者がいれば、王様は愛されずにチカラを失う」
「つまり王様にチカラがなくなれば、この世界と僕達の世界を繋ぐ扉を閉じる事ができるって事ですよね。そうすれば、もうこちらへ来る人間はいなくなる」
木田がそう言うと、平太郎さんはコクンと頷いた。
「行きましょう、北川さんを救いに!」
木田がそう言って、オレを見る。
まぁ、どの道、メイを助けに行くつもりだったし。
それが大層な事になっただけであって。
でも問題は、王様のチカラがなくなったら、オレ達って、元の世界に戻れんのかって事。
扉、閉じたら、帰れないんじゃないの?
オレがそんな事を考えていると、ピアノの音が鳴り響いた。
「ショパン、ピアノ協奏曲第一番第一楽章・・・・・・」
木田が言う。
「さっきもショパンだったよね、木田くん、そう言ってたもんね」
木田の台詞に、滿井が嬉しそうにそう言うと、
「今日はショパンの日なんだろうな」
と、平太郎さんが言った。
「とても上手ですね、誰がどこで弾いてるんですか?」
田辺がそう聞くと、平太郎さんは、空を見上げるようにして、学校の二階の窓を指差して、
「あそこ、音楽室なんだ。昨日はモーツァルトだったかな、あぁ、いや、一昨日だったか? それとも一昨年? 確か明日はバッハだったかな。それは今日か?」
と、考え込み出すから、時間の概念がないって大変だなぁと思う。
というか、今日はショパンだと言ったのはアナタですよ、平太郎さん。
「まぁ、兎に角、ピアノの気分によって、その日、その日で変わるんだよ。殆どがクラッシックだけど、たまに妙な曲の時もある」
「ピアノが勝手に弾いてるって事? それって自動演奏みたいなもん?」
オレが問うと、
「ピアノがピアノの気分で弾いてるんだよ。ピアノは気分屋だから直ぐに曲を変える事もあるけど、好きな曲は何度も繰り返し弾いてるよ。弾き終わった後、拍手してあげると、嬉しいらしく、また直ぐに弾き始める。わかりやすくて可愛い人だよ」
と、当たり前のようにピアノを人と言って、少し笑ってみせる辺り平太郎さんは、人間に見えても、やっぱり七不思議の住人だ。
もし、オレ達は帰る事ができなかったら、平太郎さんのように、ここに住んで、時間の流れがないまま、昨日か今日か明日かもわからず、いつしか、不思議を当たり前のように微笑んで話すようになって、この世界の、七不思議の住人になるのだろうか。
いや、それはこの世界が終わらなければと言う話であって、終わってしまえば・・・・・・?
あれ?
ちょっと待て。
王様のチカラがなければ、ここと向こうを繋ぐ扉が開かない。
オレ達が帰る、帰れない以前に、向こうから誰も来なくなったら、新校舎の工事が進んでしまい、この世界は、オレ達の存在があるまま、終わるんじゃないのか?
オレはハッと気付いて、木田を見る。
木田は滿井に迫られて、苦笑いしながら、話をしている。
なんで、オレに、オレ達の世界を守ろうと言わせた訳?
賛成はしたけど、提案者をオレにさせたのは、オレ達が帰れない事をわかっての事か?
この終わるかもしれない世界で、オレはみんなを閉じ込めてしまう発言をしてしまったんじゃないのか!?
「タク?」
険しい表情で、沈黙しているオレの顔を覗き込み、
「平太郎さんがしてくれた、メイちゃん強奪戦の話、聞いてた?」
と、翔太。
「あ? え? そんな話してたっけ? ごめん、考え事してて」
「だから、王様以外のカエル達は兵隊だから、平太郎さんとボクとタクと木田くんで、戦って、風香ちゃんと田辺さんは、その間にメイちゃんを助けるって話」
「あぁ、そうだな、それがいいか」
「メイちゃんは王様の近くにいるだろうから、風香ちゃんと田辺さんは気付かれないように近付いて行く。その為にはボク達が大騒ぎして、王様の目をこっちに向けなければならない。でもカエル達はリザードマンだから武器を持ってる」
リザードマンと言う翔太に、皆、首を傾げるが、翔太が話している相手はオレであって、オレがわかれば問題ない発言だ。
「リザードマン相手に、ホウキとモップでどこまで持ち堪えるかが問題だよね」
確かに翔太の言う通り、相手はソードみたいなもんを持っていた。
兵士だから、そりゃそうなのかもしれないが、ソードに勝てる武器と言ったら、今、ここでは、平太郎さんの刀しかないだろう。
だから、オレも翔太も平太郎さんをジッと見ていると、
「適当に逃げながら大騒ぎしてくれれば、後は俺が倒すよ」
と、平太郎さんが言ってくれて、オレも翔太も頷く。
でもソード持った奴相手に、大騒ぎするのは当然だが、向かって行きながら、逃げ切れるものなのだろうか。
やるしかないけど。
「あのぉ、オイラは何をすれば?」
そういえば、お前がいたな、眉毛犬っコロ!
「マユくんは、わたしと一緒にメイちゃんを助けに行こう?」
田辺がそう言うが、
「戦えそうじゃん、その無駄にある牙でカエル達に噛み付くんだ、眉毛犬!」
と、翔太が言う。
「無駄にある訳じゃないよぅ、これは犬として必要な犬歯だ!」
「眉毛あるし喋るし、最早、犬とは思えないんだから、必要なくなるな」
オレがそう言うと、
「そうそう、必要なくなる前に、必要とされている今、使っとけ!」
翔太がそう言って、眉毛犬っコロはワァァァァァァァンと、人間の子供みたいに泣き始める。だから、そんな風に泣いたら、こっちがイジメてるみたいだろ。
「榛葉くんも三澤くんも、マユくんをイジメないで下さい!!」
田辺が怒って、そう言うが、イジメた覚えがないオレ達は、お互い見合って、イジメた? ウウン、正論だよな? ウンと、会話する。
「みんな、心の準備はそろそろいいかな? 花嫁強奪戦に向けて、最終確認するよ? 俺達は、この世界の王様と、それに仕える兵士達に戦いを挑む」
平太郎さんはそう言うが、そう聞くと、最終決戦みたいだ。
でもオレ達にしてみれば、メイを花嫁にしようとするエロガエルと、リザードマンを相手に、掃除用具で戦いを挑む訳だから、カエルとは言え、敵は最終ボス並みの手強さだろう。
「兵士達はジャンプ力もある!」
そりゃそうだろう、カエルなんだから。
「舌も伸びる!」
そりゃ・・・・・・そうか、カエルなんだから。
「数も相当だ!」
そりゃそうだ、カエルなんだから、アイツ等は一度に卵を数十匹ぐらい平気で生む。
「だが、大した事はない!」
そりゃそうか? 人間みたいなカエルだぞ?
結構、大した事あるだろう。
平太郎さんは刀持ってるから、強気でいられるのかもしんねぇけど、オレ等、ホウキとモップだぜ、戦う武器じゃなくて、掃除する道具なんだぜ?
かと言って、刀を渡されても、オレは扱えない自信たっぷりだけど。
「花嫁を奪い、花嫁の心を射止める為にも、男は戦うんだ!」
その台詞に、オレは平太郎さんがオレとメイが付き合ってるって知らないんだと気付く。
しかも、今、この世界で、この状況だと、オレとメイが付き合ってる事なんて、全く関係ないんだと悟る。
メイを助けられる奴こそが、メイの運命の相手。
木田の目が真剣に、しかも、真っ直ぐに、中庭へと続く道を見つめている。
オレは、本気で頑張らなければ、メイを奪えない。
でも剣道を習っている木田相手に、オレが、どうやって、カッコよく、この状況を潜り抜ける事ができるだろう。
「いざ! 参る!!」
平太郎さんはそう言うと、背を向け、中庭の方へ向かって歩き出した。
オレ達も平太郎さんに続き、メイを助ける為に中庭へ向かう。
オレ達の後ろを滿井と田辺がついて来る。
オレの横には、右に木田、左に翔太がいて、オレの真正面は平太郎さんの背中がある。
「榛葉くん」
木田がオレを呼ぶ。見ると、木田は真っ直ぐ、前を向いたまま、
「負けないよ」
そう言った。
「それは王様に対して? それともオレ?」
「・・・・・・兎に角、僕は北川さんを奪うよ」
「・・・・・・メイを王様から奪ったら、元の世界に帰れない」
オレがそう言うと、木田は知ってるよと言う顔で、チラッとオレを見ると、
「僕達は4階の窓から落ちた。肉体は重症だろうから、死を迎える確立の方が高い。なら、元の世界へ通じる扉を閉じて、誰にも邪魔されないまま、そして帰れないまま、この終わろうとしている世界で、北川さんを抱き締めて最期を迎えたい」
そうなるだろう未来が見えているのか、自信たっぷりの顔で言った。
オレが黙っていると、
「僕達の世界を守ろうと言ったのは榛葉くんだよ」
そう言われ、オレは、
「言わせたんだろうが。お前がオレを見て黙ってるから、オレは言うしかなかった」
少しキツイ口調で、そう言うと、
「でも、言ってと僕は頼んだ覚えはない」
と、確かに、頼まれた覚えもない。
「僕は榛葉くんの意見に賛成です、最期の時、北川さんと一緒にいられるなら、それでいい。後のみんなが、榛葉くんに賛成した事をどう思うのか、それは知りませんが——」
木田はメイに好かれる自信があるんだ。
オレは・・・・・・。
木田に言いたい事を言われるだけ言われ、オレは何も言い返せないまま、ゲコゲコとカエルの鳴き声が響き出し、見ると、カエルの群衆がこちらを見て、戦闘態勢。
ヒィィッと、奇妙な悲鳴を上げる滿井と田辺。
「きっ、気持ち悪い!!!! ぎょえぇぇぇ!!!! 目が合った、目が!!」
と、滿井。
「お、押さないで下さい、滿井さん、わたしもカエルは苦手なんですから」
と、田辺。
その横で唸り声を上げてるのは眉毛犬っコロ。
「ガキの頃さぁ、カエルをイジメた記憶があんだけどさぁ、その時の仕返しかなぁ」
「翔太、お前も? オレも。あの時はゴメンナサイって謝っても手加減してくれそうにないな」
「なんせソード振り上げて、大きな目でボク等を睨んでるからねぇ」
「こんな事ならイジメなきゃ良かった。そして部活やっとくんだった」
「確かに。バトミントンだっけ? ボクは卓球だけど、それでもやってれば、少しは体力あったかも。なんかさぁ、全てに後悔。高望みせずに、美人じゃなくてもいいから、せめてブスではない普通の彼女つくっとけば良かったなぁ」
「・・・・・・オレも」
もっとメイと一緒にいれば良かった——。
今、平太郎さんが、雄叫びを上げながら、カエルの群衆に走っていく。
同時に木田も、平太郎さんに続くように向かって行き、オレと翔太も走り出す。
平太郎さんの刀が、カエル達を斬り裂いて行く。
鮮やかに飛び散る血と華麗に舞う平太郎さん。
カエルの攻撃をスルリと交わしながら、モップの柄を突きの攻撃で、カエルの腹部に当て、カエル達を失神させて行く木田。
あわあわしながらも、カエル達の攻撃から抜け出し、ホウキを適当に振り回していると、狙ってもないカエルの後頭部に当たったり、顔面に当たったりで、何気に多くのカエルを倒している翔太。
オレはと言うと——
「うわぁ、待って待って待って!! 待てっつってんだろ!!」
モップは弾き飛ばされ、ソードが掠って、あちこち切り傷だらけ、最早、走って逃げるしかなく、しかも待ってと言っても待ってくれない状態で、数匹のカエルに追われている。
言い訳じゃないが、これでいいんだ、別に戦わなくても、逃げるだけで!!
滿井と田辺がメイを助ける為の作戦なんだから、多くのカエルを引き付けていれば、それで問題ない!
走って逃げていると、目の前にカエルが現れ、うわぁと悲鳴を上げながらUターン。
だが、追われている訳だから、後ろからもカエルは現れて当然。
挟み撃ちかよと右へ回ると、またもカエル達が現れ、Uターンすると・・・・・・当然、カエルが立ちはだかる。
オレをぐるりと囲むカエル達。
「ひ、卑怯だぞ、オレ、モップ持ってないし、丸腰相手に、卑怯すぎるだろ!!!!」
ゲコゲコ鳴く声が笑い声に聞こえる。
丸腰相手に人間は攻撃してくるじゃないかと、責めている声にも聞こえる。
こうやって、オレ達人間は弱い者を叩くんだなと、結構な恐怖だと気付かされる。
オレを囲む円が小さくなって行く。
ど真ん中で、うろたえているオレに、今、
「榛葉くん!!!!」
メイの声が届いた。
その声のする方を見上げると、大きなカエルが、オレ達を見下ろしていて、その横で、鳥籠に入れられているメイがオレを見て、
「榛葉くん!!!!」
オレの名を叫んでいる。
大きなカエルがゲコッと鳴いて、ギョロッとした目でメイを見ると、メイの視線を辿り、オレを見据え、またゲコッと鳴くと、
「ソイツを食い千切れぇ」
そう叫んだ。
オレを取り囲んでいたカエル達がゲコゲコと頷くように鳴き、オレに向かってジャンプし、沢山のカエルがオレの上に降ってくる。
「やめてぇ!!!!」
メイの泣き叫ぶ声が聞こえた。
「あっぶね!」
オレはギリギリ、ジャンプするカエルから避けていたが、目の前で、カエル達がどんどん積み重なって行き、カエルのタワーが出来るのを見上げ、避けれて良かったと思っていた。
こんなのに下敷きになったら普通に死ぬ。
「北川さん、今行きます!」
木田がそう叫び、カエルの攻撃を交わしながら、メイに向かって走っていく。
どうやら滿井と田辺は鳥籠に入っているメイを助けられなかったようだ。
もうこうなったら、真っ向勝負しかないと、木田が走っていく姿を見て、オレも行かなければと思うが、カエルのタワーがグラグラ揺れて、今にも崩れて来そうなので、とりあえず、この場所から離れなければと、その時、オレの目の前にホウキが飛んできた!
翔太が振り上げたホウキを弾き飛ばされたようだ。
翔太はカエル達に取り囲まれて、ついさっきのオレのよう。
メイの所へ急ぐか、翔太を助けに行くか!
オレに迫られた2つの選択。
考えている暇はない。だからオレは翔太の元へ走った。
メイは木田が助けてくれるだろう、翔太はオレが助けてやらなければ、誰も助けない。
ホウキを振り上げて、
「翔太ぁぁぁぁぁ!!!!」
オレがそう叫ぶと、翔太は、何を思ったか、ポケットからキャベツ太郎を取り出し、
「見ろ、このパッケージ!!!! お前等の仲間だぞ!!!!」
と、カエルの絵を、カエル達に見せた。
カエル達はキャベツ太郎のパッケージに動きを止めるが、オレも、思わず、ホウキを振り上げたまま、立ち止まってしまう。
「いいか、この中に、カエルが入っている。だが、ボクのチカラで、この中のカエルは粉末になっている!!!! 見ろ、粉々の粉々だ!!!!」
翔太はそう言うとキャベツ太郎の袋を開け、粉々になった菓子を手の平に置いて見せた。
カエル達はどよめいている。
「そして、ボクはこれを食べる!!!!」
口を大きく開けて、上を向き、袋を口元にあてて、サラサラと粉末になったキャベツ太郎を口の中へ流し込んでいる。
カエル達はフリーズして、翔太を見ているが、オレもフリーズ状態だ。
翔太は歯に粉末のキャベツ太郎をつけて、ニヤリと笑い、
「お前等もこの袋に入れて、粉々にした後、食ってやる」
ホラー発言。
カエル達は恐怖の余り、翔太から逃げていく。
その場に残ったオレと目が合った翔太は、
「食う?」
と、キャベツ太郎を差し出すから、
「食わない」
そう答えると、あっそと、翔太はクッチャクッチャと口を動かし、食べ続ける。
何故、オレは迷いなく、翔太を選んでしまったのだろう。
オレは体を向き直し、メイを見る。
鳥籠の中、メイは、木田を見ている。
木田はメイの隣にいる大きなカエルに向かってモップを振り上げている。
本来なら、アレはオレだったのでは!?
今、オレの目の前を平太郎さんが走り抜けて、鳥籠に付いている鍵を刀で切り落とす。
ガシャンと言う音がして、鳥籠が開くと、今度は木田と入れ替わるようにして、平太郎さんは大きなカエルに向かって刀を振り切り、木田は鳥籠から出たメイの手を持ち、そして、こちらへ向かって走って来る。
ぼんやりと立ち尽くしているオレの横を、木田とメイが、手を繋いで通り過ぎた——。
「タク! 何してんの! 撤退すっぞ!!」
翔太がそう叫び、それでもオレは、走り出せなくて、ふと平太郎さんが、大きなカエルと戦っているのを目にする。
大きなカエルが持っているソードは、まるでお裁縫に使う針のよう。
だが、平太郎さんの振り切る刀を、その針が全て受け止める。
大きな水かきの付いた手で、器用に小さな針を持って、平太郎さんを見下ろすカエルは、平太郎さんの動きを見切っているかのようだ。
そして、平太郎さんは、大きなカエルを目の前に、まるで小さな小動物のようにピョンピョン跳ねて、戦っている。
「タク!」
オレの名を呼ぶ翔太に、
「先に逃げてて!」
と、オレは平太郎さんに加勢する為、大きなカエルに向かって走っていた。
だが、行かせるものかと、ソードを持ったカエル達が立ちはだかる。
オレはホウキを持って、カエル達に立ち向かう。
ソードを何度も受け止めていると、ホウキの柄は切り落とされてしまい、それでも短くなったホウキで、オレは戦っていた。
戦う意味なんてあるのだろうか。
オレも、平太郎さんも——。
今、花嫁を奪ったにも関わらず、平太郎さんが刀を振り上げる意味は?
オレが逃げずに残った理由は?
『俺はこの世界が終わってくれた方がいいかな。もうこの世界にいる意味がない——』
そう言っていた平太郎さん。
『この終わろうとしている世界で、北川さんを抱き締めて最期を迎えたい』
そう言っていた木田。
この2人は似すぎている。
平太郎さん、アナタが愛した人は、今のアナタを見て、どう思うんだろう。
木田、メイは、この世界での出来事は全て無駄だと思ってるのかな?
オレは信じたいよ、この世界に来た事には、意味があるって。
オレ達じゃなければ、駄目だった理由を見つけたいよ。
だって、そうだろう?
だってさ、この世界だからこそ、出会えた奇跡ってあるんじゃないの?
どう考えても、平太郎さんと戦っているアレは王様だとしてもカエルだ。
大きなカエル。
それを人間が愛するなんて、非常識だ。
逆に常識的に考えても、幾ら容姿は関係ないと言う人だったとしても、絶対に有り得ない。
だけど、花嫁は、あのカエルを愛した、いや、愛そうとした。
何故?
平太郎さん、アナタを守る為だったんじゃないの?
平太郎さんの話をしたら逃げていくように去った白いウサギがいた、そして、カエルと戦う平太郎さんは、どう見ても、どう考えても、この世界の王様に逆らっている。
それは、愛する人を守りたい為に戦ってるんじゃないの?
だったら、独りでも辛くても悲しくても寂しくても、生きなきゃ駄目だろ!!!!
愛する人に出会えた奇跡を生きて守るんだよ!!!!
今、大きなカエルが持っている針のような剣が、平太郎の頭上で光り、平太郎さんが剣を見上げた瞬間、大きなカエルの大きな右目に、短くなったホウキが突き刺さった!
物凄い悲鳴を上げる大きなカエルと、それに驚いて大慌てのカエル達。
平太郎さんが振り向いて、額から血を流し、右目が、その流血のせいで見えなくなっているオレと目が合ったので、オレは息を切らしながら、
「逃げよう、今更、命懸けても、アナタの花嫁は戻らない」
そう言った。
「・・・・・・俺の花嫁?」
聞き返す平太郎さんに、
「兎に角、一緒に逃げて下さい、見てわかるっしょ!? オレ、結構、重傷なんすから、手を貸して下さいよ!」
そう叫ぶと、平太郎さんは、目を押さえながら悶え、奇声を上げ続け、左目から大粒の涙を落とすカエルを見上げ、そして、オレの元へ走り寄り、オレの腕を自分の首にまわし、
「走れるか?」
そう聞いて来たので、
「なんとか」
と、答えると、平太郎さんはコクンと頷き、オレを引き摺るようにして、走り出した。
横腹はソードが掠って、血が出ていて痛いし、腕は勿論の事、足も切り傷だらけで、左足は挫いてしまい、捻挫状態で、引き摺って走っているオレ。
ちなみに、左足を挫いたのは、体勢を崩した自分のせいであって、カエル達にやられた訳ではない。
平太郎さんの肩を貸してもらっているから、オレの方が礼を言わなければならない立場。
なのに、
「ありがとう」
逆にそう言われ、オレはチラッと平太郎さんを横目で見ると、
「逃げずに加勢してくれて、ありがとう。王様の目を潰したのはキミだろう?」
そう言った。
「あ、あぁ、えっと、王様がデカ過ぎて、的も狙いやすかったんで、クリティカルヒットしました」
「ははっ、クリティカルヒットか」
笑う平太郎さんの顔は、本当に木田に似ている。
「キミは新しい花嫁を奪えそう?」
「え? メイはもう王様から——」
奪い返したじゃないですか、そう言おうとしたが、王様からではなく木田からだと思い、オレは黙り込んだ。
「相手は王様より手強そうだ」
「・・・・・・カッコイイらしいっすからね、滿井が言うには」
「ははっ、彼は俺に似てるから、そう言われると、俺が嬉しくなる」
平太郎さんがそう言って、木田そっくりな顔で笑うから、なんとなく、オレも笑ってしまう。すると、頬の裏側にあたる部分の口の中が切れていて、痛みが走り、苦笑いになった。
アイビーのアーチを潜り、最初に田辺と眉毛犬っコロに出会った花壇の場所に来たが、最早、花壇ではなく、大きな花達が蠢く、森の中みたいになっている。
「切っても切っても、コイツ等は成長が早い」
と、驚きもせずに、溜息混じりに言う平太郎さん。
大きな赤や黄色や白の花達が、オレ達を見下ろしているから、小人になった気分になる。
「気を許すな、綺麗だなんて見惚れると、コイツ等は血を吸うぞ。斬ると消滅するが、根をやらない限りは、こうして直ぐに再生するんだ」
平太郎さんが、そう説明するので、頷くが、気を許すなと言われても、どういう態度でいればいいのか。
「あの、カエル達、追ってこないみたいだし、一人で歩きます、ありがとうございました」
と、オレは肩を貸してくれた平太郎さんに礼を言って、離れて、一人で歩き出す。
風に乗って、ピアノの音が微かに聴こえる。
「メンデルスゾーン、結婚行進曲」
平太郎さんがそう言った。
確かに結婚式の曲だ。
ショパンの日じゃなくなったんだろうか。
花の森を潜り、みんなを探しながら歩いていると、目の前が開けた場所に出て、ピンクの花吹雪と優しい香りに足を止めた。
桜の季節は過ぎて、葉桜の5月だと言うのに、満開のピンクの桜の花——。
今、その桜の木の下で、メイと木田が向かい合っていた。
木田が、拾ったと言うメイの時計を渡している。
メイは時計を受け取ると、自分より身長が高い木田を見上げ、木田もメイを見下ろし、2人見つめあう。
美男美女の光景。
『裏庭には大きな桜の木が一本あるでしょ、桜が満開の時期に、あそこで告ると絶対に恋愛成就するんだって。永遠の愛を誓う場所として、そこで愛を誓い合った2人は一生を共にして、絶対に逃げれないって話』
——メイ。
オレ、メイの事、凄い探したんだよ。
金曜の夜、ラインをしてから、既読にもならないから、有り得ない数のラインと電話をしたんだ。
やっと会えたのに、こんな夢みたいな世界で、現実は厳しい。
——メイ。
オレは今まで感じた事のない胸の痛みを感じてるよ。
どうやら、オレには、メイに振り向いてもらえるものが何もない。
木田や翔太に比べ、重傷のオレは戦う様もカッコ悪い。
それに木田や平太郎さんのように、最期の覚悟を決める程、気持ちがそこまでいかない。
オレは終わるなんて考えられないんだ。
——メイ。
でもさ、始めるには、終わらせなきゃならないんだよな・・・・・・。
終わらせなきゃ、始まらないんだよ・・・・・・。
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