第26話 万事休す!

 ダンジョン:ポポのお花畑、隠しダンジョン下層にて。


 ポポの合宿2日目にして、いろいろとあった。


 目的である、パーティー全体の強化は順調だと言える。

 しかし、トトがスキル獣化を使用して猫になったはいいが元に戻らない。


 知能低下して猫そのものになっている。

 言葉を理解しているので、なんとか事なきを得た。


 現在はポポの想い出が詰まる下層に滞在していた。

 ポポはラブコメと言う単語を力説する。

 ウダユウとキリは真剣に耳を傾け、

 トトは花咲き乱れる丘で蝶々を追いかけていた。


 俺はまだハブられている。


 もうそろそろいいのでは、と呼びかけた。


「ポポ! そろそろ再開しないか」


 ポポはこちらを見て立ち上がった。


「待たせたのじゃ。それではオーガの巣にいくのじゃ」

「オーガがポップするのか?」

「そうじゃ、オーガ退治なのじゃ」


 なんでもオーガの集落があるらしい。




 ポポに連れられ3時間ほど歩くとそれは見えてきた。

 集落? ・・・いやいやいや、あれは砦だろ!


「このフィールドにはオーガ族が7部族おるのじゃ」

「え、そんなにもあるのか?」

「そうじゃ、7部族が勢力争いをしておるの」

「勢力争い?」

「終わらない戦いじゃ。

 常に戦闘をしておる古参のオーガは、

 とてつもなく強いと推測するのじゃ。

 ポポもよく把握をしておらんのじゃ」

「大丈夫なのか?」

「ギリギリの戦いでエクストラスキルは生えるのじゃ」


 ダンジョンに生息する魔物は、年数を重ねるほど強くなると言われている。これは冒険者では通説である。

 稀に発生するスタンピードの驚異を軽減する為、ダンジョンの魔物の間引きを推奨している。


 では、この隠しダンジョンのオーガはどうなのか?

 冒険者の存在は皆無であり、間引きは一切ない。

 7部族で勢力争いを展開している為、自浄作用しているが、古参のオーガが生き残り族長になっているらしい。

 各部族共に集団戦を得意とし、小隊単位での行動を展開している。


 ポポの想い出のフィールドであるはずだが?


「ポポ、ここはラブコメが存在していたんだろ?」

「なんじゃ、お主、盗み聞きか?」


 質問を質問で返された。


「・・・すまん。聞こえてた」

「うむ、アレクサンドロスが封印したんじゃよ」

「封印?」

「そうじゃ、封印の地は各地にあるのじゃ。

 ここもその一つでな。ポポはアレクに頼まれたのじゃ」


 うむ、これはポポの為に処理したほうがいいのか?


「ポポはアレクに頼まれて、うれしかったのじゃ。好いた殿方の頼みじゃ、オーガなどなんの問題ない」


 違った! これも想い出になっとる。


「でも、オーガをなぜ封印する必要があった?」

「特異進化したオーガキングが7体じゃ、災害級なのじゃ」

「え、ここはA級までの魔物しかいなかったんじゃ?」

「そんなこと言ったかの?」


 なっ、惚けやがった!

 オーガの巣が、オーガの砦に、

 古参のオーガが、特異進化したオーガキングに、

 前にA級しかいないと言っていたが、災害級に、


 規模が段々大きくなっとるがな! ウソつきか!


「封印のオーガは、ポポのダンジョン取り込められた。際限なくリポップする。特異進化したオーガに気をつけるのじゃぞ」


 しかも、行ってこいと!


 ウダユウとキリは、やる気満々である。


「イチ、心配はいらん!」

「そうよ、みんなでなら大丈夫よ」

『にゃー』


「わ、わかったよ」




 30分後、熾烈な戦闘が展開された。

 

 戦端はウダユウの挑発で開かれた。

 砦から角笛が響き渡り、前門が開かれた。


 ドドドドッ、

 オーガは重装備で体を覆い、大剣を担いで大挙した。


 ウダユウは鉄壁を展開し、盾具現でキリを守る。

 挑発に煽られたオーガは、ウダユウに殺到した。


『ギャオオオオオ!!!』


 トトが反応した。仲間が攻撃を受け怒り狂う。

 スキル、ウォークライ、俊足、連撃、先読が発動したと思われる。次々にオーガを狩り倒していく。


 流石に多勢に無勢である。

 ウダユウは少し押されるがシールドスタンとビックインパクトでなんとか場を凌いでいく。


 後詰めでオーガが現れる。

 俺は影騎士を出し、遠距離攻撃でそれを迎え撃つ。

 取りこぼしは、スキル影縛りを使い動きを封じた。

 気配遮断と無音歩行、身体透過を発動し各個撃破していく。


 ウダユウに群がったオーガを粗方処理したその時だった。


『グオオオオオオオオオオウ!』


 砦奥から咆哮が放たれた。

 地響きが腹の底に届く。

 体が萎縮して縮まるが、

 キリがリラックスを唱え平常心を保てた。


『ギャオオオオオ!』


 トトがウォークライでやり返す。

 ウダユウが再度、挑発を発動させた刹那、


 ドォゴーン!


 空高くウダユウが宙に舞った!


「・・・ウダユウ!」


 そこには、赤いオーガが威風堂々と立っていた。


『ほう、人間か』


 トトが踊りかかる!

 俊足を活かした連撃は一撃目で受け止められ、

 その前足をガッシリと握られた。


『ミャー』と、力弱い鳴き声をあげた。


 怒りがこみ上げた俺は赤いオーガへと走る。


「やめろおおおおおっ」


 俺の声に反応した赤いオーガは、巨大な金棒を片手で振り抜く。身体透過ですり抜け、鉄剣を脇腹に刺し込んだ!


 赤いオーガはトトを放り投げ、刺し込まれた鉄剣を掴む。

 掴んだと同時に引き抜き、金棒で俺を狙って撃ち込むが、捉えることができない。だが鉄剣を手放してしまった。


 影騎士が背後から、黒い槍を突くが躱された。

 ふりむきざまに金棒が影騎士をかき消した。


『人間共! 何用だ!』


 赤いオーガは鉄剣を地面に突き刺した。


 ウダユウは倒れたままだ。キリが駆け寄っていく。

 トトは萎縮したのか縮まっていた。


 おい、どーする?

 このままじゃ、全滅だぞ!


 赤いオーガはウダユウに向かって歩き出す。


『人間共、覚悟はできているな』


 ウダユウはキリにヒールを受けているが、

 まだ、回復していない。


「おい、ちょっと待て、俺が相手だ!」


 気配遮断、無音歩行を解除して姿を現す。


「トト、キリ、お前らは逃げるんだ!」

『ほう、俺がお前らを逃がすと思うか』

「なっ」


 気づくと片手で首を掴まれ、足が宙に浮いていた。


「がはあっ」


「イチくん! いああああぁ!」

「ギリ、と、トトをつえて逃げ、がふっ」


 万事休すだ。どうにもならないと思われた。

 気が遠くなるのを感じた。





 微かに聞こえる波長が、俺に問いかける。





『太陽の塔とリンクしますか?』


 だ、誰だ?


『私は、Aタブレット№1。太陽の塔とリンクしますか?』



_________________________________________



 お読みいただきありがとうございます!

 これからもよろしくお願いします。


  評価をいただけたら幸いです。

  感想もお待ちしております。


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