第25話 ポポ&ラブコ・・・

 ポポの合宿2日目にして、

 トトが猫の魔獣になってしまった。

 スキル獣化を発動させ猫に変化したが、

 自我が定着していないらしい。


 ポポ曰く、大丈夫じゃ。

 で、ある。


 自我が定着し安定すれば元に戻る。


 猫と言うには、かなりでかい。

 魔物、魔獣のほうがしっくりくる。


 トトはとにかく俺にじゃれつく、もしくは甘えてくる。

 仕方あるまい。撫でてやるとすぐにお腹をみせる。

 ゴロゴロ、ゴロゴロと鳴く。


 ポポはじっと、俺とトトを見ていた。


「トトは、幸せじゃ。とても幸せじゃ!」と言った。


 はあ、何を唐突に、

 モフモフと撫でられ、腹を見せながらゴロゴロと鳴くのは喜んでるいるからだと思うが・・・


「神眼で見たのじゃ。

 トトは幸福で満たされておるのじゃ!」


 おお、どうした? ポポがいつになく力強く発言した。


「ラブじゃな。ラブコメなのじゃ!」

「何を、ラブコメってなんだ?」

「・・・昔、ポポが好いた殿方が教えてくれたのじゃ。

 お主達にも教えようぞ。ポポも昔はラブコメじゃった」


 えっ、ウダユウとキリが跪く。

 なんだ? 説法でもはじまるのか・・・


「ラブとは愛じゃ。コメとは可笑しみじゃ。

 それを合わせてラブコメと言う。至上の言葉なのじゃ」


 どーということはない。

 どーしたのだ、ポポ!

 俺はどうすればいいのだ?


「トトはいま、愛に満たされておる。それがラブじゃ! そして、知能の低下が可笑しみに拍車をかけておる。だからコメじゃ! まさにラブコメを体現しておる!」


 え、バカにしてる? 本気なのか! どっち?


「あとはドタバタが必要じゃ、ドタバタが肝なのじゃ!」



 閑話休題。



 ようやく、ためにならないラブコメ説法が終わった。

 ポポはブツブツと言っているが・・・修行の再開だ。


 スキルの確認だ。

 トトが獣化してしまって、やもえず中断したが、次は俺の番である。


「んじゃ、俺の番だ。1人でやってみる。

 トト、魔物を探す。索敵できるか?」


『にゃー』と鳴くとトトは歩き出した。


 俺らはそれついて行く。

 言葉はちゃんと理解していて助かる。


 しばらくしてトトは立ち止まり、

 こちらを向き視線を合わせた後、

 標的対象の方角に顔をむけた。


 大樹の枝にブラックキラービーの巣が視認できた。


「ちと、行ってくる」


 俺は気配遮断と無音歩行を発動。

 俺は投げナイフを一本取り出し、巣に投げた。

 異変を察知したブラックキラービーが3匹出てくる。

 影を3つ確認。

 影縛りを発動すると、呆気なく3匹は落下した。

 その拘束力は強く、僅かに羽だけ震えている。


 おお、結構強力だな!


 次に影騎士を発動する。

 黒い鎧を纏った騎士が出てきた。

 おぼろげであり、肌の露出部分が判然としない。

 身長は高く2m程度はある。

 ブラックキラービーの討伐を命じると、

 目の前に転がる獲物3匹を黒い槍で串刺しにした。


 影騎士は巣の攻撃をはじめた。

 手の掌を開くと、黒い槍が宙に出現。

 それを対象に向かって射出した。


 ヒュンッ、 ズドドドーン!


 盛大に爆ぜた。

 巣は壊滅した。

 オーバーキルです! 


 え、何それ! 終わり? 影騎士怖いんですが・・・


 だけれど、あれは遠距離攻撃だ。

 我が家にいなかった遠距離さんだ。


「おーい、イチ、どこにいる?」


 俺はスキルを解除する。


「おお、ここにいたか。あれが影騎士か?」

「そうだな」

「とんでもないな!」

「そうだな」


 みんな化け物みたく強化されてきた。

 本当に俺の力なのか疑いたくなる。




「イチマツ、次のステージじゃ。

 このエリアで出来ることはないのじゃ」

「どこに行く?」

「下層じゃ。標的をA指定の魔物に変更するのじゃ」

「なあ、ポポ、俺らはかなり強くなったと思うが?」

「何を言っておる。あれでは饕餮に敵わぬぞ」


 うへ、比較対象が神獣じゃないか・・・


「で、下層にはどうやって行く?」

「こうやるのじゃ」


 ポポは指先を鳴らすと地面から小さな祠が出てきた。

 俺らが隠しダンジョンを見つけた物と同じように見える。


「小扉を開けるのじゃ」


 ウダユウが小扉を開けた。


 ゴゴゴゴー、と、こんもり地面が盛り上がる。

 2m程の高さで、ぽっかりと穴が空いていた。

 覗くと階段がある。


「なあ、ポポってダンジョンマスターなのか?」

「いまさらじゃな、お主はアホなのじゃ」

「なっ、アホ言うな」

「ここはポポの土地じゃ。全部ポポの物じゃ」


 うむ、そうだったか、ウダユウは知っていたのか?


「ウダユウは知ってたか?」

「当たり前だろ。ポポのお花畑ってダンジョンだぞ!」


 ・・・左様でございますか、アホですいません。


「よし、下層に行くのじゃ!」




 下層は、花が咲き乱れていた。

 哀愁が漂う、ノスタルジーが存在する。

 俺の心が懐かしい何かに、

 静かですこしだけ悲しいものに包まれた。


「おい、ポポ、美しいな」

「なんじゃと! ポポには想い人がおるのじゃが」


 ボケだよな?


「いや、ここの花が美しいと言った」

「ふむ、そうじゃな。

 ここはポポの思い出が、

 いっぱい詰まっとるのじゃ」


 ポポは哀愁を漂わす表情を浮かべる。

 む、思い出とやらには触れないでおこう。


「ここは、ラブコ」「ポポ、ここに魔物はいるのか?」

「なんじゃ、ポポの話を折るでない」

「いや、こんな美しい場所に魔物がいるのか?」


「おるぞ。ダンジョンじゃからな。昔はおらんかったのじゃが・・・・・ここは、ラブコ」「どんな魔物がいる?」


 少しだけポポの片眉が上がった。


「・・・ウダユウ、トト、キリ、こっちに来るのじゃ。

 いまから、イチマツは放っておく。ポポは思い出の話がしたいのじゃ。お主たち、聞いてたもう」


 え、ハブられた!


 ふむ、ハブられたら、気になるではないか!

 俺は聞き耳を立てる。




 要約すると、想い人とは、

 アレクサンドロス王だった。

 アレクサンドロスが王になる前のお話だった。

 え、マジでか?


 ここで、アレクと2人でつつましく暮らしたとか、アレクはポポにラブじゃったとか、毎日、可笑しみが溢れていたとか、頑張って子を宿したとか、永遠に続くことを祈ったが3年しか一緒にいられなかったとか、うふふって笑いながら話していた。


「ここにはラブコメが存在したのじゃ」


 ポポの話は、とめどなく続いていく。



 以前、モノリスの因子を持つ者はアレクサンドロスの末裔だと話していた。ポポは子を宿したと言った・・・


 その話が本当だとすると、

 俺はポポの血族である可能性があるのか?

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