第21話 マーク・キャンベルと饕餮

 はい、マフィアの活動中であります。

 座会傘下のマフィア幹部候補って聞いてたが、

 メッチャ雑用させられてます。


 まず俺に与えられた任務は諜報活動。

 ウダユウ達はどーしたって、内緒で活動していますとも。

 だから、かなり忙しいんだ!


 昼間は冒険者活動、夜は諜報活動である。

 最近、睡眠不足だ。なんでこうなった? 




 今は、腹黒い商人の腹黒い会合に参加している。

 って、これこそがマフィアの会合なのだが・・・


 カンゾウ親分が中央の、1番偉そうな席に着席していた。

 マフィアのドンの中でも実力者なのだろう。


 この会合の議題は、

 クーデター発生後の利権問題だった。

 来る未来を見据えて縄張り争いが活発化していた。


 クーデターが発生するのは既成路線だそうだ。

 東部辺境伯が王位第2継承者を担ぎ上げ着々と準備が進んでいるらしい。


 その王位第2継承者は無能を絵に書いたような人物らしいが、東部辺境伯は恐ろしく有能みたいだ。

 政情に敏感な貴族は王族を見限りはじめている。


 現国王は高齢で政務の半分を第1継承者に任せている。

 その第1継承者はどうか? 

 可もなく不可もなしと言ったところで、動乱の兆しが見え隠れする王国では、ちと荷が重いみたいだ。


 今回の会合は探りあいである。

 情報合戦が展開されているらしいが、

 俺にはちっともわからなかった。


 東部辺境伯が準備ができたら挙兵すっぞって事はわかった。とんでもない話を聞いてしまったものだ。

 普通暮らしていても、そんな情報は漏れてこない。

 




 カンゾウ親分からの依頼とは、

 東部辺境伯傘下のマフィアの動向だ。

 フラッポ商会が最大勢力となる。

 フラッポ商会の本拠地は東部にあり、

 最近は王都でも活動を活性化していた。


 東部辺境伯が抱える勢力にモノリスの因子か厄災が潜んでいるのではないか? とのことである。 

 

 フラッポ商会にいるのではないかと推測されていた。

 まあ、座会に俺ら見たいなのがいるのと同じことだ。


 フラッポ商会の専属冒険者で最近名前を上げている奴がいる。マーク・キャンベルB級冒険者だ。

 召喚術師らしく黒い魔物を使役していると聞く。

 この会合には現れなかった。


「イチマツ、フラッポ商会、インザキの顔を覚えたか?」

「はい、あれだけ特徴があれば忘れませんよ」


 インザキは左目に大きな傷跡がある。

 刃物で縦に切られたのだろう。


「インザキを付けろ、寄ってくる貴族を把握したい」

「承知しました」


 うは、今日も夜勤ありか・・・辛いです。


 影法師のスキルで透明人間みたいになれるので、

 こんな仕事ばかりが回ってくる。

 マフィアと言うより、諜報担当みたいである。




 俺はスキルを発動させ、透明人間となる。

 フラッポ商会の馬車後部につかまり潜伏した。


 インザキはフラッポ商会に着くとまたすぐに出かける。

 一緒に護衛が2人出てきた。

 そのうちの1人はかなり若い。俺と同じくらいか?


「マーク、警戒態勢だ。

 尾行者は始末しろ。ベスマス辺境伯の館に向かう」


 あいつがマーク・キャンベルか!

 さっそく確認できたぞ。

 マークは身長が高く、ガッチリとした体格だ。

 装備は魔物の革鎧だろうか、全身真黒だ。

 黒い革鎧とは反して肌は真白だった。


 うむ、美しい! と思う。


 その装いに感嘆としていると、マークは何かを唱える。


饕餮とうてつ!」


 彼の前に、黒い何かが出現した。

 その刹那、俺の背筋が凍りつく。


 あ、あかん、逃げろ!

 緊急事態発生だ。あれは無理だと直感した。


 黒い何かは、俺を察知している。

 駄目・・・


 俺はすかさずタブレットを出し、スキルを確認した。


 影法師  LV5

 気配遮断 LV1

 無音歩行 LV1

 影縛り  LV0

 潜影   LV0

 影騎士  LV0

 

 スキルポイント45.25P



 気配遮断にすべてのポイントを振った。

 気配遮断はLV5でカンストし、新しいスキルが生える。

 よし、なんかきた!!!


 【身体透過】・・・を意識する!


 黒い何かは俺の位置を正確に捉え、鋭い爪が襲う。


 ヴォオンッ!


 ん、外した?


「饕餮どうした!?」

『マーク、ここに人間がいる』

「え、何もいないが?」

『人の匂いがある。先程まで確実に気配があった』


 ヴォオンッ!


 どわ、饕餮とやらの爪が俺をすり抜ける。


『ここに匂いがある』

「饕餮がそう言うなら、そうなんだろうね。まだいるの?」

『わからぬ、存在が有るようで無い』

「なにそれ哲学的だね」


「マーク、何をしておる出発するぞ!」

 同僚である護衛の1人が彼を呼んだ。

「すいません! すぐ向かいます」


 た、助かった。

 俺は少し後ずさりする。


 饕餮はそれに反応した。

 一度こちらを睨む。

 俺の体が硬直する。

 鼻がヒクヒクと動くがマークの後に続いて、

 その場から立ち去った。



 俺は馬車が見えなくなるまで一歩も動けなかった。

 

 




 _________________________________________



 お読みいただきありがとうございます!

 これからもよろしくお願いします。


  評価をいただけたら幸いです。

  感想もお待ちしております。

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