第2章
第20話 マフィア幹部候補って!
やはり、座会のカンゾウさんは真黒だった。
俺が相談したいとお願いしたら、
なぜか1人だけ、座会本部の地下室に呼ばれた。
仄暗い部屋でランタンの灯りがときおり揺れた。
雰囲気マックスの演出に俺はビビっている。
「ようこそ、裏側の世界へ」
「お、おはようございます」
う、裏側の世界だと・・・
「イチマツ、安心しろ」
何を持って安心しろと言うのだ。
逆に煽られているような気がします。
「ははは、そう緊張するな。
お前を虐めるとトトに嫌われる」
はじめに、裏側の世界って発言がなければ、
こんなに身体が強張ることもなかった。
「ここに呼ぶのは、お前だけだ」
俺だけでよかったと思う半面、
ウダユウも道連れすればよかった思う。
「お前は俺と同じ匂いがする」
なに、銀猫獣人特有の匂いネタか?
いやいや、それは違うだろ。気質の話だ。
と、言うことはカンゾウさんも、変態なのか?
そっちの裏側ならば・・・いける口だが・・・
「か、カンゾウさんも変態なんですか?」
カンゾウは一瞬止まった。
変態の言葉に反応したのだ。
「どういうことだ?」
質問を質問で返された。
返答に窮する。沈黙がランタンの揺らぎを止めた。
だ、ダメかもしれん、緊張で思考が覚束ない。
俺はこんなにもヘタレだったのか・・・
「イチマツ、俺はマフィアのドンだ」
変態の問いは流された。
でも、マフィアのドンって!
カミングアウトがなされた。なんでだ!?
「お前らは俺を信じて、すべて話しているだろ。
だから、俺の裏側を話す。まあ、お前だけだがな」
知らなくてもいいことを、
知ってしまうってことですね。
闇が俺だけを引きずり込むようです。
「マフィアは必要悪だ。
非合法な案件を片付けていく。
盗難、強盗、殺人も、仕事のうちなる。
お前は幹部候補で、マフィアのコントロール、
王族や上位貴族の情報入手・暗殺を手掛けていく」
えええぇーっと、
相談持ちかけたら、難題をぶっこんできた。
マフィアの幹部候補ってなんだよ!
「前に国が乱れると言った。おぼえてるか?」
コクコクと頷く。
「このフィッツベル王国は終末を迎える」
色々とぶっ込み過ぎで理解が追いつきません。
「カンゾウさん、
マフィアの件は理解しましたが、
国が乱れるってどういうことですか?」
「この国のいたるところで厄災がはびこりだした」
え、厄災は北部森林都市に住み着いたのでは?
どういうことよ・・・
「厄災ってなんなんですか?」
「お前は、大衆新聞を読んだことあるか?」
それって、ゴシックだらけの怪しい新聞だよな。
「『くだらないダンジョンの会話』って記事がある」
ああ、あれかウダユウが好きな連載記事だ。
「あの記事には【Aタブレット№2】って単語が出てくる」
なんだって!
ウダユウはなぜ気づかない!!!
「モノリスの因子についても書かれていた。
そして、Aタブレット№2の持ち主は、厄災候補者だ」
んな、どういうことだよ?
「強大な力を持つものが選定され厄災候補者となる」
「カンゾウさん、でもあれはゴシック新聞じゃないですか」
「信憑性は高いだろ。
【Aタブレット№2】これだけで、真実味がでる」
たしかにそうだ。
「イチマツ、お前も厄災になる可能性を孕んでいる」
いやいやいや、なんの呪いだよ!
「国造りの英雄になるか、
厄災として魔王となるか、どっちがいい?」
はあー! どっちもいやだ。俺は変態でいいです。
「どっちも、いやです」
「ははは、だからお前はいい。
マフィア幹部候補の件もやりたくなければそれでいい」
え、どうなった? マフィア幹部候補が回避された。
「だがな、国造りは動き出す。裏側の力が必ず必要となるだろう。今のうちに顔を繋いでおけ、座会は全面的にお前達に協力することを決定した」
うがっ、座会までもが国造りを押してきた。
全面的に協力するだと・・・
「ポポの件だが、お前達の最優先事項はポポだ」
「どういうことですか?」
「今後、座会から依頼を出すことになるが、
それよりも、ポポの指示を最優先にしろ。
座会はポポの怒りを買いたくない。そういう事だ」
「え、座会はポポを怒らせたくないと?」
「イチマツ、ポポは神だ。肝に命じろ!
大昔の話だ。人々はポポの怒りに触れた。
その怒りは大地に影響を及ぼし大飢饉を発生させた」
あの幼女が!
トトに干し肉を貰っても喜んでるポポがか・・・
「き、気をつけます」
カンゾウさんと相談した結果、
結局、マフィア幹部候補として各方面に名を売ることになった。国造り役立つとのことだ。
最後にカンゾウさんは、一言添えた。
「俺は変態ではない」と。
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