第16話 ドロップアイテムの査定額


 俺らは家を借りることを検討している。

 座会との専属冒険者の契約で家賃9割負担とあった。

 俺らが実際に支払う家賃は1割になる。


 購入する意見も出たが却下された。

 太陽の塔への巡礼が長期間続くかもしれないからだ。


 うむ、みんなは危険地帯に行く気満々である。

 厄災さんや凶暴な魔物さんが跋扈しておるというのに。


 まあ、それはいい。とにかく安宿から卒業だ。


 賃貸住宅なら冒険者ギルドも斡旋している。

 マリエさんに相談することにしよう。


 なので冒険者ギルドに向かう。

 そうそう昨日、納めた魔石やアイテムの査定も聞かねば。


 冒険者ギルドの銀行口座に座会から、いかほどの入金があるか確認もしたい。


 あの魔石の量だ。

 かなりの金額が予想される。

 それに座会から専属契約の入金もあるはずだ。


 また、みんなで買い物を楽しんでもいいな。

 でも、あまり派手に散財するなと、ギルドマスターが言っていた。


 もどかしい気持ちになる。が、仕方ない。

 しばらくは、慎ましく生きねばならんのだ。


 冒険者ギルドに着くと個室に回された。

 マリエさんの目にクマができている。

 なんでも、俺らの報告書作成に時間がかかったらしい。


「まず、月花について謝罪いたします。政治的な問題で月花採取の依頼は取り下げとなりました。ギルドからは補填として150万ゼニが支払われます」


 え、そんなに貰えるのなら文句は言わないが、

 政治的な問題が気になるではないか。




 月花はモノリスの欠片に群生していた・・・

 つまり、モノリスの欠片の周辺しか生えない。

 その現象を知っている貴族が月花採取の依頼した。

 たしか、依頼者はグラファート公爵と言っていた。


 グラファート公爵は月花よりもモノリスの欠片の情報が欲しかったかもしれない。

 また、ポポが言っていた、誰も隠しダンジョンには辿り着けない。裏を返せば、モノリスの因子を持つ者しか辿り着けないのだ。


 公爵はそのことを知っている可能性があると推測される。

 ギルドマスターが依頼の取り下げをしたことも・・・


 うむ、不穏な気配しか感じぬ。恐ろしいです。


「では、ドロップアイテムの査定額はこちらになります」


 マリエさんはそう言うと査定額を記した伝票を手渡した。ポポのお花畑と隠しダンジョンで獲得したアイテムが列記されていた。


・D級魔石✕154個 15,400ゼニ

・B級魔石✕276個 2,760,000ゼニ

・コボルトの牙✕24本 120ゼニ

・キラービーの蜂蜜✕32個 3,840ゼニ

・ウルフの毛皮✕46枚 4,140ゼニ

・レッドキャップナイフ✕2本 1,000,000ゼニ

・コボルトアサシンナイフ✕1本 350,000ゼニ

・ブラックキラービーの毒針✕4本 1,720,000ゼニ

・軍隊アントの鉤爪✕152本 5,320,000ゼニ


              合計11,173,500ゼニ


「おおおお、1千万超え!」

「D級冒険者としては前代未聞です。こんな金額を叩き出すのはA級冒険者でも簡単ではないです」


 A級でも難しいとな、インベントリが活躍したと思うが、高位冒険者ならマジックバックを所持しているだろう。


 なぜだろうか?


「A級冒険者でも簡単じゃないって、どういことです?」


「ドロップアイテムが大量なんです。一度にこんなに納品されたのは、初めてですよ」


 ああ、トトのスキル、豪運さんか! 納得した。


「全部のアイテムを換金しますか?」

「もちろんです」

「わかりました。では口座振込みますが、分配はどうされます?」


 俺はウダユウに目配せをする。


「それじゃあ、端数の73,500ゼニは現金で受け取ります。残りを5等分してください。パーティー専用口座と4人の口座に振込をお願いします」


 さすが、ウダユウ兄さんは計算がはやいです。


「承知しました。月花の補填分を含めると、それぞれ2百52万ゼニの振込みとなります。手数料は各200ゼニで1,000ゼニとなります。現金をお渡しするゼニから差し引きますね」


「お願いします」


 また、途方もない金額が発生した。

 もう、俺らは金持ちと言っていいのではないか?


 安宿から、はやく撤退しなければならない。


「では、次にこれをお渡しします」


 マリエさんは、C級ランクのプレートを4枚並べた。


 おお、これはもしや、昇格した?


「今回の実績で昇格いたしました」


 やっぱり、昇格の話でありました。


「B級冒険者に昇格する話も出ましたが、あまり目立つのはよくないとのことです」


 全然問題ない。

 むしろ俺は目立ちたくない。


「昇格によって紹介できる依頼も増えました。討伐案件をお願いしたいと考えています」


 討伐案件を幾つか紹介された。

 C級の魔物を狩る依頼となる。

 一通り案件に目を通し何件かピックアップしていく。


「マリエさん、依頼はわかったが時間が欲しい」


「何か用事でもおありですか?」


「大したことじゃない。安宿を引き上げる。賃貸住宅を探したいんだ」


「ああ、申し訳ありません。私も失念おりました。ギルドでも幾つか物件を紹介できますので、しばらくお待ち下さい」


 マリエさんはすぐに用意できる物件を2つ持ってきた。


 さて、どれどれと書類を読む。


 どちらも冒険者ギルドから近い。

 家賃は月15万ゼニと18万ゼニだ。

 A級冒険者が支払う家賃の相場がこれくらいだとのこと。


 その、9割を座会が支払う契約になっている。

 俺らが支払うのは、1万5千ゼニから1万8千ゼニというところだ。金銭的になんの問題もない。


 一軒家と高級アパートだ。

 どちらも冒険者ギルドが管理する物件である。


 高給アパートは高位ランクの冒険者が住んでいると聞いた。

 ぽっとでの冒険者には敷居が高い気もするが、仲良くしてもらえれば、いろいろと教えてくれるかもしれない。

 問題は仲良くできるかどうかだが・・・


 一軒家は庭付きである。

 間取りは5LDKとなっている。

 しかも地下室があると言う。

 ポポにもらった転移スクロールのこともある。

 こっちのほうがいいかもしれん。

 あるいはポポがここを訪れる可能性だってある。

 できる限り、人目を避けたい。


「トトは一軒家がいいな。キリちゃんはどう?」

「私も一軒家かな」


 女子が主張する。その理由はなんぞ?


「アパートは共同生活でしょ。宿屋と同じじゃない」

「トトは、一軒家に住んでみたかったの」


 気を遣いたくないこと、それに憧れか・・・


「ウダユウ、どうする?」

「一回見てみないと、なんとも言えないな」


 左様でございますか。

 ならば物件を見に行きましょう。

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