第15話 冒険者ギルドに報告していいの?

 ダンジョン:ポポのお花畑、隠しダンジョンにて


 朝から予定通り軍隊アントを狩っていた。

 職業レベルが5になったところで、狩りを切り上げることになった。


「イチマツ、これを持っていけ」


 と、ポポがアイテムを手渡した。


「転移魔法陣のスクロールじゃ、これを使えばタブレットに転移ポイントが登録できる。お主たちの拠点に設置するとよいのじゃ」


 ありがたい物をいただいたが、設置する場所がない。

 だが、金ならある。ウダユウと相談だな。


 ポポは俺らを、ダンジョン入口まで転移魔法を使って運んでくれた。


「お主たちは、まだ弱いのじゃ。太陽の塔に巡礼するのは、まだ時期尚早だの。ポポは庵で待っておるぞ」


「ポポ様、すぐに戻ってまいります」とウダユウ。

「ポポちゃんも一緒にくればいいのに」とトト。


 キリは、ずっとポポの手を握りしめていた。


 ウダユウとキリは、信者と化した。

 トトは、まるで友達感覚だった。


「ポポ、月花を納品する依頼を受けたが、隠しダンジョンのことを話していいか?」


「よいぞ、どうせお主たちしか辿り着けんしの」


 ん、そうなのか? 


「ポポにあったことは?」


「問題ないのじゃ。ここはポポの土地じゃからな」


 それもそうか。要らぬ気を使わなくてもいいみたいだな。


「それじゃあ、ポポ、また戻ってくる」




 王都フィッツベル冒険者ギルドに着くと、受付でマリエさんを呼んでもらった。マリエさんは俺らを確認すると個室で待つようにと言った。


 しばらくして個室にマリエさんが入ってきた。


「待たせたわね。依頼は達成できたかしら?」


 俺はインベントリから、依頼品を取り出した。


・朝露の葱・・・10本

・ギシギシの根・・・15本

・月花・・・1本 


 マリエさんは驚いた顔をする。

 月花を発見したのだ当然の反応だ。


「ど、どっからだしたの?」


 そっちか!


「マリエさん、インベントリって収納スキルです」

「なにそれ、聞いたことないですけど!」

「マジックバックみたいなもんですよ」


 マリエさんは、目をパチクリとさせる。


「月花も発見しましたよ」


 俺は月花を手に取り、マリエさんに差し出す。


「な、なんですって?」


 マリエさんは依頼書を取り出し、月花の絵図と特長を記した書類を読む。月花と書類を交互に見比べて、むくりと首を上げた。


「だ、大発見です! これはポポのお花畑にあったのですか?」


「もちろん、ポポのお花畑にありました。隠しダンジョンではあったけど」


「か、隠しダンジョンですって!」


 マリエさんのテンションが上がっていく。


 俺はインベントリから大量にあるD級魔石とB級魔石を取り出した。どちらもズタ袋にまとめてある。


「な、なんですか、この大量の魔石は! B級魔石がこんなにも・・・」


「隠しダンジョンにB級の魔物がいるんですよ」


「なんですって!」


「軍隊アントを沢山、狩りましたからね」


「軍隊アントを沢山、狩った」


 マリエさんは、手のひらを俺に向け、待ったの合図を送る。

 ブツブツと独り言をつぶやく。


「イチマツさん、軍隊アントはB級の魔物ではありますが、群れの討伐はA級指定となります」


 え、そうなん、とウダユウを見ると、頷いている。

 おい、ウダユウ兄さん、そういうのはちゃんと教えてくれ。

 俺らはA級指定の群れに一日中、凸してたのか・・・




 俺はその他の、ドロップアイテムを並べていく。


・コボルトの牙・・・24本

・キラービーの蜂蜜・・・32個

・ウルフの毛皮・・・46枚

・レッドキャップナイフ・・・2本

・コボルトアサシンナイフ・・・1本

・ブラックキラービーの毒針・・・4本

・軍隊アントの鉤爪・・・152本


 マリエさんは、ちょっと待て、落ち着いてと、ブツブツ言いながら、人手を呼んだ。


 隠しダンジョンと月花の発見の件がある為、ギルドマスターに報告すると言った。


「他にも、何かあるませんか?」


 と、尋ねられたので、


「隠しダンジョンで、モノリスの破片を見ま・・・」


 途中でマリエさんに口を塞がれた。


「お、応接室を用意します。先程の件は直接ギルドマスターに報告して下さい」


 ふむ、口を塞ぐほどの案件なのか・・・


 応接室に入るとすでにギルドマスターが待っていた。

 そして、また1から10まで説明をしていく。


「トトが月花の群生地を見つけました。その中央に黒い石板が立っていて、それはモノリスの破片だとポポが教えてくれました」


「イチマツ、ポポに会ったのか?」


 ギルドマスターは話を割って聞いた。


「はい、ポポに会いました」


 俺はポポについても言及した。

 あとでわかったことだが正直に話すのが正解だった。


「そうか、土地神にあったか。で、月花の群生地にモノリスの破片が立っていたってか」


 ギルドマスターは腕を組み、応接の天井を仰ぐ。


「マリエ、月花の依頼者は誰だった?」

「グラファート公爵です」

「そうか・・・この件は隠蔽する。座会のカンゾウにアポを取ってくれ」


 すぐに手配しますと言ってマリエさんは退室した。


「ポポは他に何か言っていたか?」


「厄災がはびこる周期に入ったと、モノリスの因子が芽吹きはじめた。俺もその1人だと言っていました」


 それから俺はポポが協力者であること、いずれ太陽の塔にポポと一緒に行くであろうことを話した。


 ギルドマスターは最後に、ポポだけではない、

 冒険者ギルドも全力で協力すると言った。




 あ、いや、なんだって引くに引けなってきたぞ・・・



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