第14話 ポポの修行と職業スキル

 ダンジョン:ポポのお花畑・隠しダンジョンにて


 ダンジョン、3日目。ポポの修行がはじまった。

 ポポは、とにかく魔物を狩るのじゃ、と言う。

 俺らのスキルレベルが低くて話にならないと・・・


 隠しダンジョンはA〜B級指定の魔物が棲息している。

 A級がいる事に驚くが、下層階にいるらしい。

 A級には、まだ勝てぬから、B級の軍隊アントを狩るのが最も効率的じゃ、とポポが提案した。


 軍隊アントかよ、昨日は散々な目にあったから、仲間うちで避けることに決定した。

 その話は早速、なかったことになる。ポポ信者であるウダユウとキリが息巻くのだ。


「なるほど! たしかに軍隊アントは湧き出るほどポップする。上手くやれば一日中狩りができるな」


 ウダユウ兄さん、一日中は無理。死にます!


「ポポ様が言うことに間違いないわ。やりましょ!」


 キリさん、一日中の狩りはウダユウの発言です。


 ウダユウとキリの熱量が凄い。

 つられてトトもやる気を出していた。



 それから、1時間後。

 仲間は、軍隊アントの大軍に包囲された。

 まじかと、焦りが生じるが俺はそれを眺めているだけだ。


 挑発スキルでウダユウに軍隊アントが密集する。

 ワラワラと群がるそれを鉄槌で吹き飛ばす。

 トトはウォークライを発動して戦場を駆け巡る。

 キリはウダユウにヒールを送りサポートした。

 



 俺はと言うと、戦場の片隅でタブレットを見ていた。

 換算されたスキルポイントを、あらかじめ決めていたスキルにポイントを振っていた。


 ポポは言った。元となる職業スキルが肝要だと。


 ウダユウは重戦士。

 トトは獣戦士。

 キリは治癒士。


 お、俺は影法師だ。


 なんだよ影法師ってレア職業スキルらしい。

 聞いたことないけどな。


 ともかく、職業スキルにポイントを振っていくように指示されたのだ。


 スキルポイントはみるみると換算されていく。

 みんなの職業スキルレベルが1つ上がると、殲滅速度が上がった。


 目標はレベル5。

 ポポの話ではレベル10でスキルがカンストするらしい。


 レベル3になると余裕が出てきたように見える。

 心配する必要もなくなってきた。


 だが、レベルアップに必要なポイントが増加した。

 30ポイントから50ポイントになってしまった。


 しかも、軍隊アントの1体分のポイント換算値が減少した。


 レベルが4になった。 

 仲間が軍隊アントを屠っていく姿をみて、

 あれは人なのか? と思うほど強くなった。


「イチちゃーん!」


 と、ときおりトトが嬉しそうに手をふる。


 軍隊アントのリポップが追いつかなくなってきた。


 ウダユウ達の体力も限界を迎えてきたようだ。

 結局、一日中狩りをしたことになる。


 昨日、あんなに手を焼いた軍隊アントを簡単に殲滅することができるようになっていた。


 ポポが帰る準備をするよう指示を出した。

 大量にドロップした魔石を拾うのに骨が折れた。




 ポポの庵に戻ると早速、みんなでタブレットを覗いた。

 打ち合わせ通り職業スキルにポイントを全部振った。

 職業スキルはレベルが上がるごとに、新たなスキルを生やした。


 全員職業スキルはレベル4になっている。


 ウダユウの重戦士は【シールドスタン】と【ビックインパクト】が生えていた。


 シールドスタンは範囲で効くらしい。

 ビックインパクトは鉄槌で繰り出す技だ。これもダメージの範囲効果がある。


 トトの獣戦士は【瞬足】と【獣化】が生えていた。


 瞬足は読んで字の通りである。瞬間的に相手の懐に入り込むことができる。銀猫獣人であるトトは身体能力が高い、このスキルを使えば誰も反応できないんじゃないかと思う。

 獣化はなんだろうか? 猫になってしまうのかな。


 キリの治癒士は【瞑想】と【リフレッシュ】が生えていた。


 瞑想は魔力回復が向上するみたいだ。

 リフレッシュは毒や麻痺、混乱を癒やす効果がある。


 俺の影法師は【影縛り】と【潜影】が生えていた。


 影縛りは対象の影を縛り動けなくすることができる。

 潜影は影の中に隠れることができるみたいだ。



「明日も軍隊アント狩りじゃ。レベル5まであげるまではスキルポイントは温存するんじゃぞ」


 と、ポポに釘をさされた。

 ポイントを振りたくてウズウズするが仕方あるまい。

 ポポの指示に従ったことで、戦力の底上げができたのだ。


 明日は早起きをして、狩り場に出かける。

 狩りは午前中のみとした。昼になったら王都に帰る予定だ。


「イチ、今日1日ですごい成果をあげたな」

「そうだな。疲れただろ?」

「ああ、疲れた。けどな充実感が半端ない」


 ウダユウは鉄槌を手ぬぐいで磨いていた。

 俺もそれに習い、鉄剣を磨く。


「どこまで強くなってんだろ?」


 んー、どこまで強くなってんだろう。A級冒険者ぐらいになってるかもしれん。恐るべき成長速度だ。


「ウダユウ、まだまだ成長できる」

「ああ、そうだな。厄災と戦わないとだからな」


 え、ウダユウさん、厄災と戦うつもりなのか?

 俺は、できることなら避けて通りたいと考えてるぞ。


「あのな、できればだが厄災と会いたくない」

「それは、そうだろうが、お前が巻き込まれたら、ほっとけないぞ。どっちにしろ強くなっておくほうがいいさ」


 強くはなりたいさ。

 スキルレベルがあがるのはうれしい。


「ああ、そうだな。でもウダユウ、本当にやばくなったら逃げるぞ。最悪の場合、俺を見捨ててもいいからな」

「はっ、何言ってんだ。逆にお前は俺やトトとキリが危ない目にあったら逃げるのかよ」


 う、逃げるわけがない。俺は逃げないと思う。


「お前が逃げるなら、ちゃんと俺ら3人も連れてけよ」

「当たり前だろ」


「さっきも言ったが、俺は今とても充実感がある。お前の運命に乗っかてる形だがな」

「ポポの話はデカすぎると思うが、このまま続けたほうがいいとは思っている」


 ウダユウは充実していると言う。

 トトやキリはどうだろうか?


 2人を見ると、ポポと夕飯の準備をしていた。

 その表情は楽しそうだった。


「とにかく、俺はお前らが幸せならいいんだ」


 ウダユウはにっこりと笑顔になった。


「ああ、幸せになってきたじゃないか」

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