第13話 モノリスとは太陽の塔そのものじゃ

 ダンジョン:ポポのお花畑・ポポの庵にて、


 ダンジョン2日目はポポの庵で宿泊することになった。

 トトとキリはポポのお世話をしている。

 ポポは女の子らしい。見た目は幼女そのものだ。

 保護欲を誘うのは、俺も理解できるが・・・


 トトは干し肉を与え続けていた。

 ポポの頬はずっと膨らんでいる。

 ニマニマと幸せそうだ。


「ポポは、トトとキリを加護するのじゃ」と宣言。


 ぽわっと、2人はやさしい光に包まれた。


 それをウダユウは、羨ましそうに見つめる。

 

 ウダユウ、ポポって神だよな。と、確認すると。

 「俺らの神様だ」と、即答した。


 ウダユウは立ち上がると、干し肉を持ってポポの元へ行く。


 ウダユウ、お前もか!




 しばらく経って、タブレットを眺めていたら気づいた。

 ウダユウ、トト、キリに【ポポの加護】が付いているではないか。


 ちなみに、俺には付いてない。

 干し肉か、干し肉なのか!


 その【ポポの加護】をタップすると・・・


『ポポの加護:ポポは植物を司る神である。大地の恵みが与えられる。HP回復20%向上・MP回復20%向上・植物魔法適正・土魔法適正・縁結び』


 植物の神とな、タブレット曰く、ポポは植物の神だと書いてある。HPとMPってのが意味が不明だが回復能力が上がるのだろう。他にも、土魔法と植物魔法の適正が付与されている。


 あと、縁結びってなんなんだ。


 


 就寝前にポポは太陽の塔とモノリスについて話しだした。


「太陽の塔とはモノリスそのものじゃ。モノリスの欠片が月花の群生地にある黒い板かの。モノリスの因子とはタブレットのことじゃよ」


 俺のぼけっとしていた意識がポポの言葉に反応した。


「イチマツはモノリスの因子と結ばれいる。お主は適合者だ」


 Aタブレット№1を意識する。目の前にそれが現れる。


「太陽の塔はスキルを生み出す、いにしえの建造物じゃ。お主はタブレットを通じて直接、そのスキルの恩恵を受けることができる。普通はそうはならん。お主らが知る通り、血の滲む苦行が必要じゃ」


 スキルポイントの数値を確認する。

 このタブレットがなければ、俺らは普通のD級冒険者だ。


「適合者とは、アレク王の末裔、太陽の王アレクサンドロスのことじゃな。お主はその子孫になる」


 なぬ、アレク王の子孫だと!

 そ、そんなん知らんし、俺って孤児なんだけど。


「い、イチちゃん、王子さまなの!」


 トトの目が輝きだした。尻尾がピンッと天を指す。

 いや、違うぞトト。俺はただのD級冒険者だからな


「厄災がはびこる周期に入ったから、モノリスの因子が芽吹きはじめたのじゃ。それはイチマツだけではない。他にもおる。モノリスの因子達は厄災を切り取り、国造りを競うのじゃ」


 ウダユウとキリは真剣にポポの話を聞いている。

 トトはおがむ様に、ポポではなく俺を見ていた。

 

 え、俺をそんなに見つめるな。

 いまは俺じゃない、トトさん。


「モノリスの因子には協力者がつく、ポポがそうじゃな」


 ポポが協力者?




「そ、その話、どこまで信じればいいんだ?」


 ポポは豆鉄砲を喰らったような顔をする。


「全部じゃが・・・」


「はっきり言う。理解できない」


 いや、バカだからじゃないぞ。話がデカくないか?

 厄災を退治して、国造りを競うのじゃって、もうあれだ意味がわからん、ストレスが半端ない。それに語尾の、のじゃのじゃが癇に障る。


 トトは俺の頭を撫でた。

 干し肉も渡される。俺はそれを喰らった。


「なんじゃ、ポポもじゃ」と、ポポは手を出す。


 スッさ、とウダユウが干し肉を手渡す。

 ぬぐ、ウダユウはすでに信者か!


「時間をくれ。すべて飲み込めない」


 スッさ、とトトは水袋を出す。


 トトさん、ありがとうございます。だがな、この行為でポポは、俺が干し肉が飲み込めないと、100%思ったぞ。


 ポポは俺が干し肉をちゃんと飲み込むまで待った。


「考える時間がほしい。話が大きすぎる」


「うむ、時間はたくさんあるのじゃ。しっかりと考えるがよい。しかし、イチマツよ、運命には抗えぬぞ」


 ポポの話は終わった。

 ポポは寝るのじゃと言って鳥の巣みたいな寝床の中に入っていった。




 俺の目指すものは、仲間との安定した生活だ。

 冒険者ランクを上げて、大金持ちになるのが夢だった。

 スキル所持者になって、それは夢じゃなくなったが、国造りってなんだよ。そこんところ説明がほしい。


 【国造り】言葉通りなら途方もない。できる気がしないぞ。


 太陽の塔は北部森林都市にあると聞く。北部森林都市は魔物が跋扈する危険地帯じゃないか。しかも厄災が住み着いるって噂だ。ポポは厄災を切り取れと言った。


 冗談じゃない。そんな危険を仲間達に負わせれん。

 最悪、俺が1人で行く!




 ん~、1人でいけるか? 怖くね・・・。


 んだ、俺1人は危険だ。

 ウダユウは連れて行く。

 タンクだし、鉄壁だし、


 トトとキリはお留守番だ。傷付けてはいかん!


 と、考えながら眠りに落ちた。




 ーーキリsideーー


 キリは知っていた。


 彼女は北部森林都市から難民として逃げてきたホビットだった。一番古い記憶はお爺さまと2人で王都で暮らしていた事。そのお爺さまが一族に伝わる古き話を彼女に教えた。


 ホビット族に古くから伝わる伝承を、太陽の塔がモノリスであること、厄災がはびこるとき、英雄達が立ち上がること、動乱で国は亡くなり、新たに王が選ばれることを・・・


 爺さまが亡くなる前にこんな話も聞かされた。


いにしえのホビット族は太陽の塔にある地下大迷宮の住人であった。本来は太陽の塔の管理者だったんだ。だがホビット族は罪を侵し、その権限を剥奪された。キリよ、これは内緒の話だよ。ホビット王族に伝わる内緒の話だ。わかったかい。それとは別に、今が昔ならキリはお姫さまなんだよ」


 キリとっては衝撃的な内容だった。

 でも、孫を最後に喜ばせる作り話だと思っていた。


 彼女はハイホビットだと言われるまで、大好きな爺さまのやさしい嘘だと思っていた。


 ポポの話で、それは真実だと彼女は確信した。


 そして、彼女は太陽の塔へ行きたいと強く願うのだった。

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