第12話 モノリスとポポと因果について
月花の群生地、その中央に黒い板が立っていた。
俺らは、それに近づく。
裏表共に真黒だった。
なんの素材だろうか、キレイに処理された大理石の様に滑らかな質感である。
俺がその黒い板に触れると文字が浮かび上がった。
蒼白く薄っすらと光る文字だ。
『モノリスの因子を持つ者よ、汝は協力者を連れ巡礼の旅に出よ。太陽の塔に導かれよう。国造りは解き放たれる』
ん、これはタブレットと同じ文言じゃなかったか?
確か、一番はじめだ。そんなことが書いてあった気がする。
「ウダユウ、これにも太陽の塔って書いてあるな」
「イチ、読めるのか?」
「ん、ああ、読めるぞ」
「俺にはなんて書いてあるか、さっぱりわからんぞ」
「まじか?」
ウダユウはこの文字が読めないらしい。
俺は、皆に書いてあることを伝えた。
そして、タブレットを入手した時も、同じ文言を目にしたことを話す。
「イチ、導かれているぞ。ここにいることが証拠だ」
うそ、もう導かれが始まってるだと!
いやいやいや、んー、そうなのか?
ポポか、土地神様のポポの仕業に違いない。
んで、モノリスの因子、国造りとは、なんぞ?
「国造りは解き放たれる・・・カンゾウさんが言った、国が乱れる兆しがあるってのも関係あるかもな」
ぬお、ウダユウさん、変な発言しないでほしい。
私は、そんな大事に巻き込まれたくありません。
お前は英雄にでもなりたいのか・・・
「モノリスの因子は・・・わからんな」
「国造りの因子とも言う、それはイチマツの因果そのものじゃ」
ふと声の方を振り向くと、後光と共にポポが黒い板の前に鎮座していた。
突然、ポポが出現した。
「ポポちゃん! 大丈夫だった?」
「ホホホッ、ポポは元気じゃ」
この、トトの謎コミュ力と言ったら・・・
自然と人の話を断つが、憎めない。
「お主たち、ようたどり着いた。歓迎しようぞ」
すると風が巻き上がり、花びらがひらひらと舞った。
トトとキリは、見惚れた様にそれを見ていた。
「イチマツよ、まずモノリスとは? じゃな」
ポポはくるっと向きをかえ、黒い石板をポンポンと叩いた。
「この黒い石板じゃ。モノリスの欠片じゃな」
なんと、モノリスとは、この黒い石板とな。
「モノリスの因子はモノリスとその欠片に辿り着く。お前も、その1人じゃ」
「え、俺がそうなのか? その1人って、他にもいる?」
「当たり前じゃ、国造りは1人で出来ぬであろう」
ん、国造りって・・・なんなのさ。
変なもんに巻き込まれてるんじゃ・・・
トトがポポに干し肉を渡すと、ポポはそれを食べた。
「ポポちゃん、美味しい?」
「うむ、美味いのじゃ。トトには良いことがあるぞ」
えへへっ、と笑うトト。お供物か・・・
「ウダユウ、トト、キリはイチマツと深い縁がある。これも因果じゃ。お主らが、ここへ来たのは必然なのじゃよ」
ポポはトトに手を差し出す。手を取り何かするのかと思ったが、トトは干し肉を差し出した。それは催促の手であった。
「モノリスは各地にある。モノリスの因子を持つ、同士や敵対者が目覚めはじめておるよ」
同士に、敵対者だと!
敵対者ってなんなん?
「そうじゃな、お主のタブレットに№がある筈じゃ。何番じゃった?」
「Aタブレット№1ってなってる」
「ほう当たりじゃな。序列筆頭ではないか。しかも、コードAじゃったか、ポポはうれしく思うぞ」
ん、当たりはうれしいが・・・喜んでいいのか?
ポポは干し肉を頬張る。ほっぺが膨らみリスのようだ。
ふむ、信じていいんだよな・・・この土地神様を。
「しかし、お主らは弱い。修行せねばならぬの」
ふと、ウダユウを見るとプルプルと震えている。
お、なんだウダユウ、怖いのか!
「ポポ様!私はどうすればいいでしょうか? 私は皆の為に、強くならないといけない。どうか、修行をつけて下さい」
おおおお、土下座した。え、おい、ウダユウよ。
干し肉を頬張ってる、得体の知れない何かだぞ!
し、信じてるのか!
キリがそれに続いた。
「ぽ、ポポ様、私もウダユウと同じ気持ちです。かけがえのない仲間を守りたいのです。修行をお願いします」
キリが土下座した。土下座を・・・
ん、祈りか、祈願か、神にお願いしてるのだから。
で、でも、ポポの後光って怪しくないかな・・・
「ポポちゃん、私は・・・イチちゃんの・・・およ、お嫁さんになりたいです」
え、ええええー、何言ってんだトトさん。
「ホッホッホッ、分かったのじゃ、叶えよう」
ど、どういうこと。
何処までが信じていいんだ?
トトのはスルーだよな。
ちと、一緒についてくるのじゃ、とばかりにポポは俺らを先導した。月花の群生地を抜け、さらに30分程歩くと、小さな庵に着いた。
「ポポの家じゃ、入るとよい」
とは、言うが小さい。俺ら4人入ったら壊れるんじゃないかと心配になる。
ポポに続いてトトが腰をかがめて入っていく。
「ポポ様、失礼します」とウダユウ、キリが入っていく。
うう、あいつら、何の躊躇いもないな。
グイグイいくんじゃありません!
と、文句を言いたいところだ。
仕様がない、俺も体を屈めて庵の中に入っていく。
庵の中は広かった。
冒険者ギルドの闘技場ぐらいはある。
「なんだこれは、広いじゃないか」あ然とする俺に、
「空間魔法じゃ、造作もない。お主らもそのうちできるじゃろ」と、ポポは言った。
「イチマツ、タブレットでここのポイントを登録するのじゃ」
「どういうこと?」
「タブレットは転移ポイントが作成できるんじゃ」
と、言いますと転移魔法陣でも作成するのか?
「ポポの庵を貸してやる。安全じゃろ」
そう言うと、両手を地面にかざしポポは地面に魔法陣を描く。みるみると、魔法陣は構築され最後に光を放った。
「イチマツ、登録するのじゃ」
言われるまま、タブレットを魔法陣に持っていくと、それは反応した。
『【転移魔法陣:ポポの庵】を登録しますか?』
実行すると、『リンクに成功しました』と表示された。
使用方法は、タブレットと任意の転移魔法陣が起動すると回廊開き、通じるようになる。いつでもポポの庵に転移できるらしい。
「ポポ、ダンジョンを出てくときはどうするんだ?」
「現状は徒歩でいくしかないの。じゃが、ポポがダンジョンの入口までなら送ってやれる」
それから、ウダユウとキリは修行についてポポに教えを乞うていた。あの態度、まさに信者ではなかろうか? と疑うのであった。
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