第11話 月花の群生地と黒い板

 ポポのお花畑3層、2日目。


 朝食を取ると探索を再開する。

 昨日、獲得したインベントリに荷物を放り込む。


 必要最低限の装備にした。

 防具と武器に腰袋。その他はインベントリの中だ。


 かなり身軽になった。インベントリ大活躍である。

 嵩張っていた大量のD級魔石や食糧も担がなくていい。



 試したいのは新スキルだ。

 早速、索敵して、その効果を試してみる。


 コボルトを発見。7匹が群れていた。

 ウダユウは挑発と鉄壁を発動した。

 狂った様にウダユウに群がるコボルト。

 ガイン、ガインと攻撃を弾く鉄壁スキル。


 トトがウォークライを発動させ突撃する。

 あ、と言う間に7匹すべての首が飛んだ。


 フンス、フンスと息が荒いトトは、狂戦士ではないかと疑う。キリのリラックスがないと運用が危険じゃねえかと思う。


 ふむ、D級では話にならなくなってきた。

 まあ、昨日もそうだったんだが・・・




 月花を発見する為、隅々まで3層を探索する。

 ウロウロすること小一時間、トトが何かを発見した。


 それは草むらの中に隠されていた。

 俺は草むらをかき分け、ウダユウに聞く。


「何だろな。小さな祠か?」


 その小さな祠らしきものに、小さな小扉が付いていた。


「んー、わからんな。中になんか入っているかもな」


 ウダユウさんも、わからないと、んじゃ。


「開けてみるか?」

「罠じゃな・・・あ、」


 トトが小扉を開けてしまった。


 ゴゴゴー、地響きと共に、こんもりと大地が盛り上がった。大きさは、2メートル程でポッカリと穴がある。


 トトさんや、軽率すぎるぞ。

 俺の心臓がバクバクと跳ねているではないか!


 トトを見ると、ぱっー、と晴れやかな顔をしている。すごいでしょってな具合だ。


 ・・・うむ、しゃーない。結果オーライだ。


 中を覗くと、階段があった。

 なんだこれ、隠しダンジョンか?


「イチ、どーする? これは隠しダンジョンだぞ」

「行ってみるしかないだろう」

「みんな、いいか?」


 パーティー全員、賛成だ。


「んじゃ、行きますか」




 全員で階段を下りると、また地響きがした。


 ゴゴゴーと、


 嫌な予感がしたので、入口を確認すると塞がっていた。


 「罠だった?」と俺。

 「罠だな」とウダユウ。


 パーティーに動揺が芽生えるが、キリがリラックスを唱える。落ち着きを取り戻した。リラックスは地味に優れている。


 「階段を下りるしかないな」


 俺がそう発言すると、ウダユウは頷き階段を下りていく。トト、キリ、俺の順に続いた。


 思いのほか長い階段を下ると、

 一面、花が咲き乱れるフィールドに出た。


「おお! ウダユウこれこそ、ポポのお花畑だな」

「ああ、幻想的だ」

「イチくん、月花はここに咲いてるんじゃない?」

「んだな、ありそうだ」


「イチちゃん、何かいるよ!」


 トトの耳がピクピクと反応していた。



 レッドキャップだった。それも3匹いる。

 向こうも、こちらに気づいていた。


 俺らが視認すると、奴ら動きだした。

 1匹はキリを目掛けて走り出す。

 その他、2匹は何処にいった? 一瞬で見失う。


「ウダユウいくぞ!」


 俺が叫ぶとウダユウは挑発を発動。

 レッドキャップは攻撃目標をキリからウダユウに切り替えた。


 トトのウォークライ発動と共に、

 俺もスキルを発動する。


「トト、レッドキャップ2匹は何処だ?」


 トトは素早く反応して駆けだす先にレッドキャップが現れた。ウダユウの背後、茂みに擬態していたのだ。


 トトは擬態したレッドキャップに連撃を加えるが有効打がヒットしない。


 俺はレッドキャップの背後に回り一撃を加えた。不意を突かれたレッドキャップは体勢を崩しトトによってトドメが刺された。


 ウダユウを見るとレッドキャップ2匹を引きつけ防戦している。やや、押され気味だ。


 トトが参戦すると形勢は逆転した。

 ウダユウの鉄槌が唸り、レッドキャップが吹き飛ぶ。

 吹き飛んだ先にトトが飛びつき首を狩った。


 もう1匹は、逃亡を図るが、あいにく逃げた先に俺がいた。気配遮断と無音歩行を発動した俺に気づけていない。正面から袈裟斬りを喰らわす、驚くレッドキャップはトトの餌食となった。


 興奮状態の俺らにキリはリラックスをかける。

 1人1人の怪我の有無を確認するが、誰も怪我はないようだ。


「ふー、驚いたぞ」

「レッドキャップが3匹か・・・」


 B級指定の魔物だとウダユウが言う。


「キリを狙いやがった」

「ウダユウの挑発が遅れたら、やばかったな」


 治癒士であるキリは、俺らの生命線である。一番大切だと言って過言はない。


「このパーティー構成だと、挑発が成立する前はイチとトト、2人でキリを護衛だな」


 ウダユウはとにかくキリを守れと言う。

 まあ、その通りだ。俺らの弱点だ。


「ウダユウは大丈夫か?」

「任せろ。防御のみならレッドキャップ5体は無傷で対応できるぞ」

「おお、まじか! 頼もしいな」


 でも、ウダユウさん。さっきアンタ、2匹のレッドキャップに押されてたんじゃ・・・


「ああ、だが次のスキル会議で挑発を上げたいな。ヘイトが俺に向かなっかたら、ゾッとするよ」

「お、おう、鉄壁も上げると、なおいいぞ」




 それから俺らは、探索をしながら出口を探した。

 レッドキャップの他にもB級指定の魔物が現れた。

 コボルトアサシン、ブラックキラービー、軍隊アント等だ。


 特に軍隊アントが酷かった。

 延々と増え続けるアントに心が折れそうだったが、なんとか耐え抜いた。


 パーティーで話し合った結果、軍隊アントには手を出さないと決まった。


 ドロップ品もすごいことになっている。

 これすべてB級指定のドロップだからな。

 軍隊アントのおかげでB級魔石もうなるほどだ。

 トトの豪運さんのおかげである。




 そしてと言うか、やはりトトが豪運を発揮した。

 月花の群生地を見つけたのだ。


 月花の群生地は圧巻だった。透き通る花びらに仄かに輝く雄しべと雌しべ。黒い石板を中心に円を書くように広がる。


 ん、黒い石板が、ある。なんだあれは?


 同様の疑問を抱いたパーティーメンバー全員が、黒い石板を注視するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る