第7話 ショッピング

 俺の泊まっている部屋に、全員を集合させた。

 ウダユウとキリは、二日酔いから回復したようだ。

 トトは嬉しそうに、キリの耳元に囁く。


「今日も肉の日だよ」

「え、今日も肉がたべれるの!」

「そうだよ」


 2人は、非常にうれしそうな顔をうかべる。

 俺だって、そんな2人を見るとうれしい。


「どうだった?」


 ウダユウは、換金の有無を確認する。


「カンゾウさんは、快く換金してくれたぞ」

「おお、それでいくらになった?」

「ふふふ、聞いて驚け・・・・512,300ゼニだ!」

「うおおおおお、すげえ金額だな」


 テーブルに硬貨を並べる。


「こ、これが金貨か?」


 ウダユウとキリは、金貨に触れて呆けている。


「ど、どうする?」


 ウダユウの声は震えていた。


「ごもっともな質問だ」

「お、おう」

「我々は、今から買い物に行くことを提案する」

「何を買うんだ?」

「貧乏から脱出する。まずは身なりを整えるぞ」

「ええ、服を買ってくれるの?」


 キリが話に飛びついた。


「少し違うが、ほぼほぼ、その通りだ」

「ん、?」

「自分のお金で買うんだ。1人頭、10万ゼニを分配する。服、装備、日用品を好きに買っていいぞ」

「え、お金貰えるの?」

「いいだろ、ウダユウ」

「そうだな、いい案だ。だが、装備は皆で検討して選びたい」

「おう、それもそうだな」

「あとは、ちと心配だから会計するときは俺が立会う」

「うむ、トトは特にだな。計算できんだろ」


 むふふって、笑うトトさん。今度、勉強すっぞ。


「ねね、10万ゼニってどれくらいなの?」

「今の生活水準で166ヶ月分だな。年だと13年分くらい」


 ウダユウが即答する。


「おお、私たち、大金持ちになったんだ」


「トト、違うぞ。いままでが貧乏過ぎたんだ。でもな、今迄よりもっと、ずっとずっと良い生活ができるのは間違いないぞ」


「そっか、トトはなんか幸せな気分になってきた」


 ふと、キリを見ると涙ぐんでいた。

 え、キリ、泣くんじゃない。まだ酒が残ってる?

 キリは昨日、泣き上戸だったことを思い出す。


「私も幸せな気分だよ。ほ、本当に喜んでいいんだよね?」

「俺らが見ている物は、幻じゃない。今回は誰にも騙されてない。この金貨だって、カンゾウさんが換金したものだ」

「うん、うん、イチ君、ありがと」


 そうだな、そうなんだ。よく騙されたもんな。

 俺らは、いつも、ボロボロに貧乏だったんだ。


 あはは、俺だってうれしいぞ。




 てなわけで、俺ら4人で街に繰り出した。


「服一式買ったら、銭湯行くぞ。んで、さっぱりしたら新しい服着て、飯屋に行こう」


 俺は白いシャツにゆったりとした紺色パンツを2セット買った。

 外套は黒い物を選んだ。ウダユウは俺と同じ物を購入した。


 トトとキリは、とにかく時間が掛かった。


 ゆっくり選べばいいさと、ウダユウと向かい茶屋で待つ事にした。


「ウダユウ、座会の専属契約はどうする?」

「どうするも何も、契約するに決まってる」

「カンゾウさんが、推薦するって言ってたが、本当に座会と契約できるなんてな」

「まったくだ、あの座会と契約だ。有名どころの冒険者しか在籍してないぞ」

「俺らと契約して、なんのメリットがあるんだろうな」

「お前とキリだな、太陽の塔と、モノリスの因子だったっけ、特にお前の能力は異常だよ」

「トトの豪運だって異常だぞ」

「・・・それは、同意するよ」

「太陽の塔って何だろな?」

「・・・知らないか」

「おう、まったくもって」


 すると、トトとキリがたくさんの袋を抱えてきた。

 ようやく服選びが終わったみたいだ。満足そうな顔をしている。


「イチ、とりあえず今日のスケジュールをこなそうか」

「それじゃ、銭湯に行って生まれ変わりますか」




 俺らは計画通り、銭湯でさっぱりしてから、購入した服に着替えた。薄汚れた古い服は全部捨てることにした。


 トトとキリは、見違えるほど、キレイに見えた。

 シャツだって、スカートだってパリッとした新品だ。


 街中を歩いているだけなのに、すべてが新鮮に見えた。

 誇らしく高揚とした気分だ。


 昼食はレストランに行った。

 安宿の食堂や屋台でしか飯を食べたことない俺らには敷居が高かったが、もう大丈夫だろう。

 トトとキリは、俺とウダユウの背中に、身を隠す様に様子を窺っていた。俺も少し緊張したがな。


 肉から魚まで、いろんな料理を注文した。

 どの料理もキレイに盛られていた。

 これ、食べていいのかと仲間同士でアイコンタクトをとる。

 俺が先陣を切って、皿に手をつけると、それが合図となり、ガチャガチャと食事がスタートした。

 はじめの緊張感は緩和し、皿に付いたソースをトトは舐めだす。おい、そんなにも美味しかったか、うん、美味しいよな、そのソース。俺だって舐め回したいぞ。

 見かねたキリが、トトに注意をするが、え、何でなんって顔を浮かべてた。




 次に向かったのは武器と防具を扱う店だ。

 冒険者ギルドの近くにあり、冒険者御用達の店に行く。


 ウダユウは重装備、俺とトトは軽装備、キリはローブ系。

 店の店員に希望するオーダーを伝え、予算にあった装備を見繕って貰う。


 ウダユウは鉄製の兜から、膝当てまで全身鉄コーデである。大盾に鉄槌を持たせると、重戦士らしく見える。細マッチョなので、アンバランスに見えるが鉄槌を軽々とぶん回していた。


 俺は、ほぼほぼトトと同じだ。魔物の革製の防具に鉄製の剣を購入した。トトは俺とお揃いだよ。と言ってご機嫌である。


 キリは革製防具の上に、ローブを羽織る。初級ではあるが魔石の付いた魔法杖を選んだ。


 ウダユウとキリは、予算を超えたが足りない分は、パーティー資金から捻出した。


 それから、冒険者として必要な道具類を購入した。

 テントやら水筒やら、いろいろと。




 一通りの買い物を終え、安宿に戻る途中、俺らは気付いた。


 トトが、見知らぬ子供と手を繋いで歩いている。

 2度見をし、それを認識すること数秒、誰だそれは?


「トト、その子供どうした?」

「ん、ポポちゃんって言うんだよ」


 ポポは、ペコリと俺らに頭を下げる。


「ポポは、ポポと言うのじゃ」


 ん、あー、男の子、女の子、どっちだ?


「ポポちゃんはね、イチちゃんと一緒に太陽の塔へ行きたいんだって」



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