第3話 パーティー登録を実行しますか?

 俺は、勝ち組になったことを妄想する。


 まず、トトとキリに、きれいな服を買ってやる。もちろん、ウダユウは後回しだ。


 かわいい下着もたくさん買う。一緒にああだこうだと、形や色等を相談しながら買い物をする。

 ウダユウのことは知らん。男の下着をなんで俺が心配せにゃならん。かわいい下着、もってのほかだ。自分で考えろと文句を言ってやる。


 てなことを妄想してると、コンコンとノックされた。


「イチちゃん、準備できたからいくよ」

「おう、すぐいく」


 俺らはD級冒険者で駆け出しだ。

 ずっと貧乏暮らしが続いていたが、最近はだいぶましになったと言えよう。


 今日から再びダンジョン探索をする。


 王都フィツベルから南に2時間ほど歩くとD級ダンジョンがある。 


 そう一昨日、俺が頭を強打してお花畑状態になった危険なダンジョン:ポポのお花畑。


 道中、透明人間のことを考えると自然と妄想がふくらむ。


 女風呂で、だな。

 まさにお花畑・・・だな。


「イチ君、どうしたんですか?鼻がふくらんでいますよ」

「お、おう、ちょっとな」

「透明人間になって悪さしようと考えてる?」


 ぬ、キリはいつも鋭い。御名答である。


「そんなわけあるか、どう運用するか、うちのパーティーでどうすれば効率よくなるかを考えている」

「あら、それは失礼しました」


 まったくもって失礼だ。

 俺は、失礼なことばかり考えている。

 謝りたいのこっちのほうだ。



 それでは、うちのパーティー構成を考える。


 タンク:ウダユウ

 アタッカー:トト

 遊撃:イチマツ

 後衛:キリ


 と、なる。遊撃である俺のスキルは、かなり有効になるはずだ。問題となるのは、味方も俺の存在を見失う。


 深刻な問題だ。

 トトの攻撃を喰らう恐れがあるのだ!


 しかし、トトは言った。匂いでわかる。と


「イチちゃん、臭いから大体の位置はわかるよ」


 おふっ、俺ってば臭いのか。

 いや違う、トトは獣人なのだ。

 鼻がよくきくのだ。

 トトよ、言い方があるだろ。俺は傷ついたぞ。


 トトは銀猫獣人、希少種である。

 なので、メチャクチャ鼻が利く。



 銀猫獣人の少女と言えば奴隷商、垂涎の希少種だ。

 だから危険な目に何度もあっている。

 では、なんでその危険がいままで回避できたか?


 トトと同じ銀猫獣人のカンゾウさんが助けてくれるからだ。この人は王都で、けっこうな権力者で、貧乏な俺らの援助者でもある。


 話がそれた。


 俺が臭いって、話だったはず。


「だから、大丈夫だよ」


 臭いから大丈夫だとよっと。


「んじゃ、獣系の魔物は通用しないな」

「ウダユウの言う通りだよ。イチちゃん気を付けようね」

「あ、はい」


 そういうことで、基本はウダユウが敵の攻撃を受け、トトが敵を削り、俺が背後から攻撃を仕掛ける。キリは後衛で周囲を警戒し仲間達を補助する。





 ポポのお花畑に到着した。ポッコリとした丘に綺麗な花が咲き乱れており、その丘の下部にポッカリと穴があいている。


 ポッカリとした穴が入口だ。

 外観的に緊張感はまったくない。

 ピクニックにきた気分になりそうだ


 先頭はトトが努めている。

 銀猫獣人は非常に敏感で索敵能力に優れている。

 罠を察知することもできるが・・・失敗もする。

 2番手ウダユウ、3番手キリ、最後尾は俺の配置だ。


 第1層は洞窟だ。土肌が見え、所々に花が咲いていた。花は仄かに光りダンジョンを薄暗く照らしていた。


 トトはキビキビと動き、自信を持って行動していた。

 どこからその自信が湧いてくるのか、ちょっとだけ不安になる。


 最初にエンカウントをしたのは、2匹のゴブリンだった。


 ウダユウがゴブリンを引き付け、攻撃を盾で受ける。トトが隙間を巧みに剣で突いていく。


 スキルを発動した俺は背後に回り、背中から心臓あたりに剣を突き刺す。


 2匹共、不意の攻撃で容易に絶命した。


 ゴブリンの右耳を削ぎ落とす。討伐証明だ。

 冒険者ギルドに持っていけば換金してもらえる。


 しばらくすると、ゴブリンの体は粒子となり、ドロップした魔石1個が転がる。

 たまに魔石がドロップすることがある。貴重な収入源だ。


 うむ、作戦通り、討伐できた。


「イチ、かなり簡単だったな」

「だな、効率が段違いだ」


 俺はAタブレット№1が点滅していることに気付く。


「ちょっと、待って、点滅してる」

「何が?」

「ああ、あれだよ、Aタブレット№1」


「ん、わかった。んじゃちと小休止だ」


 タブレットの点滅を見ると、


 《パーティー登録を実行しますか?》


 ウダユウ

 トト

 キリ


 仲間の名が明記されていた。


「なあ、俺のタブレットにお前らの名前が載ってて、パーティー登録するかって?」


「登録したらどうなる?」

「わからん。わからんが俺みたいに出来るかもしれん」

「それは、スキルのことか?」

「ああ、可能性があるかなって」

「えええぇゑ〜、トト、登録する!」

「私もします!」


 女子は即答した。


「ウダユウはどうする?」

「んんー、これはチャンスだろ。どうにかなったら責任とれよ」


 トトが勢いよく挙手する。


「私も、イチちゃんに責任とってもらう」


 お、おう、トトの責任の意味が怖い。


「んじゃ、登録してみっか」




「あっ」


 と、キリがタブレットを指差した。

 え、見えるのか!


「イチちゃん、これがタブレットなの」


 トトが覗き込む。


「イチ、見えるぞ!」


 続いてウダユウとキリが覗き込んだ。



 ウダユウ 人族 15歳 男

 スキル

 重戦士   LV0 0/30

 商人    LV0 0/30

 スキルポイント:32.25P


 トト   銀猫獣人 15歳 女

 スキル

 獣戦士   LV0 0/30

 豪運    LV0 0/10

 スキルポイント:46.58P


 キリ   ハイホビット 15歳 女

 スキル

 治癒士   LV0 0/30

 付与魔法士 LV0 0/30

 スキルポイント:31.19P


 イチマツ 人族 15歳 男 

 スキル

 スキルデッキLV0 0/50

 インベントリLV0 0/50

 影法師   LV2 0/30

 気配遮断  LV1 0/10

 無音歩行  LV1 0/10

 スキルポイント:41.21P




 きた、これ!

 どうするよ!


 みんなスキルポイントがあるではないか!

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