23杯目
「ただいまー!」
「お邪魔します……」
お店の二階にある、皆さんのプライベートエリア。つまり、山田家のご自宅に、私は初めて足を踏み入れた。
「おかえりなさい。あらあら、花子さん、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。今日は七絵の引っ越しのお手伝いありがとうね。はいはい、みんな疲れてるでしょ、ささっ、中にどうぞ」
返事をする間もなく、玄関から奥の部屋へと案内される。ん?足元に何か……。
「あ。ハナちゃん」
そっか。喫茶店 太陽の看板猫のハナちゃんも、お休みの日には、ここにいるんだよね。うん、うん。はぁ、この毛並み、もふもふ……癒される……。
「……花子ちゃん。ハナをもふるのはいいけど、先にご飯にしよっか」
「あ、ごめんなさい。つい……」
「まあまあ、ハナも花ちゃんにいらっしゃいしてるんだから、挨拶みたいなもんだよ。お兄ちゃんこそ、そんな緊張しないで、ほら、洗面所に花ちゃん案内してあげて」
若干気まずい雰囲気の中、私は洗面所へと案内される。ご飯の前には手を洗う、うん、大事。手を洗っている私の側には、ちょっと固い顔の和宏さん。えっと、怒ってる?あれ、そういえばさっき七絵ちゃんが……。
そんなことを考えていると、鏡の中で、和宏さんと目が合った。
「……ごめん、花子ちゃんが家に来るってことで、俺、ちょっと緊張してるかも……顔、怖かったでしょ」
「いえ、そんな。約束の時間になってもまだ片付けてたり、連絡いただいたのに気が付かなかったりと、私達に呆れてるのかなって思ってて……こちらこそ、お待たせしてごめんなさい」
「あー、いや、それはさ……うん、俺が焦ってたというか、もしかして、二人して疲れて寝てるんじゃないかって心配になって。あ、いや、その……」
「……」
気まずい。鏡の中で目が合ったまま、動けない。
狭い洗面所で、この空気。一応恋人にはなったけど、今まで甘い雰囲気とは無縁だし、というか、ここご自宅……ご実家だし、声が聞こえそうな距離にはご家族も……。
「えっと」
「はい」
「ご飯、食べに行こうか」
「はい」
洗面所を出る和宏さんの背中についていく私。あれ?和宏さん、耳がちょっと赤い?
◆
「ねえ、七絵」
「うん?」
「もしかして、私達お邪魔かしら?」
「うーん。初めてお邪魔したその日に、恋人の実家でお母さん同席の食事って、私ならハードル高いけどさ、花ちゃんは、その前から私達とは顔を合わせて話してるし、食事だけならこの間もしたんだし、いいんじゃない?」
「そうかしら。今日はずっと和宏そわそわしててね、部屋を片付けている間もずっと時計やスマホを気にして、うろうろしてて、ちっとも片付けが進まないのよ」
「まあ、お兄ちゃんも、緊張してるんでしょ。私のアパートだって、ここから数分とはいえ、お昼も夕方も顔出してさ、まあ、お休みの日にも花ちゃんを見たかったんだろうけど」
「……青春ねぇ」
「もう二人ともいい大人だけどねぇ」
「二人して洗面所で……」
「もう、お母さん。あの二人のこと、応援してるの?邪魔したいの?」
「あ、ごめん。あー、私も年を取ったのかしらね。あんまり揶揄うと和宏に怒られそう」
「そうそう。やっと付き合いだしたんだからさ、見守ってあげててね」
「はいはい。花子さんにも嫌われたくないからね」
「うん。それ大事。でも、私、もし二人が別れても、花ちゃんとはお友達でいるからね」
「あらあら。そうね、私も花子さんとはお友達でいたいわ」
「うん。だから、……あ、洗面所から出てきたみたい」
◆
「はい、じゃあ、みんなお疲れ様!」
「お疲れさま」
「お疲れさまー!」
「お疲れ様です」
かんぱーい!と、グラスを鳴らし、乾いた喉を潤す。
さっぱりとしたお茶が染み渡るなあ。お酒は?と聞かれたけど、疲れた体にアルコールを入れるとすぐ寝そうだったので、お断りしておいた。
「はい、じゃあね、こっちが甘口で、こっちが辛口。あとは好きな具を好きなだけ盛り付けて食べてね。お代わりはたくさんあるからどうぞ。あ、サラダもあるからね」
わぁ、凄い!
目の前には、さっきから食欲を刺激する香りのカレーの鍋が二つ。そして、揚げ物、肉団子、ゆで卵、ウインナー、焼き野菜などのトッピングの皿、それからポテトサラダ。そして、ラッキョウと、福神漬けの小瓶。
「わあ……カレーパーティですね」
「ふふ。これ、お店で貸し切りにした時に時々出してる特別メニューなの」
「そうなんですね。あれ?貸し切りって、出来るんですか?」
「そうよ、最近はしていないけど、太陽さんが元気で、和宏たちが学生の頃はよくしていたの。ほら、部活の打ち上げとか、卒業や転校なんかのお別れ会でね。子供たちの食欲を満たしつつ、並べておけば勝手に食べてくれるので、楽なのよ」
そう言って笑う康子さんの表情は、山田家だけでなく、地域のお母さんとしての頼もしさがあった。
「花ちゃんのところは、どうだった?この辺りは、ファミレスも無いから、何か集まって食べる時って、よくうちでしてるんだ。さすがにお酒は出ないから、大人の会食なんかは別のお店だけどね」
「うーん。ファミレスだったかなぁ?もう覚えてないや」
「そっか。まぁ、お店も落ち着いてきたら、また貸し切りするかもしれないし、その時は花ちゃんよろしくね」
「あ、うん」
「さて、七絵も仕事の話はそれくらいにして……ほらほら、お喋りもいいけど、食べよっか。花子さん、何か取ってほしいものある?」
「あ、大丈夫……じゃなくて、えっと、ポテトサラダをお願いします」
「はいはい。ちょっと待っててね」
ポテサラ。好きなんだけど、一人暮らししてから自分で作ることは無かったし、スーパーのお惣菜コーナーにあるのは何だか好みではなかったし、実家の味が懐かしいなと思ってたから、山田家のポテサラも気になるんだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
カレーの前に、まずはポテサラから……。
「あ、美味しい。しっかり味がして、これだけでずっと食べていられそうです」
「ほんと?良かった。それ、俺が作ったんだ」
「そうなんですね。私、この味好きです。後でレシピ教えてもらっていいですか?」
「あ、そんなに変わったものは入れてないからレシピってほどでもないけど……、味付けはマヨネーズと、塩コショウ、砂糖とコンソメかな。分量なんかは後でメールしようか」
「へぇ、砂糖とコンソメ。あ、市販のポテトチップスみたいな味なんですね」
「あぁ、そうかも。これ、お酒のおつまみとして作るなら、コンソメ増やしたり、コショウを粗挽きにしたりしてもいいんだよ」
「なるほど」
ふんふん。ポテサラひとつでも、いろんな作り方があるのね。そっか、コンソメか。そうね、市販の味をヒントにすると、お互いにイメージ掴みやすいのかも。多くの人が知っていること、えっと、確か共通認識だっけ。
「ささ、花ちゃん。ポテサラでお腹いっぱいになる前にカレーもどうぞ。甘口?辛口?それとも合わせて中辛にしちゃう?」
「え?合わせて中辛?」
「ふふふ。ご飯の上で、甘口と辛口を半分ずつかけることで、中辛になるのだよ。これこそカレーパーティの醍醐味!」
「七絵ちゃん凄い!」
「あとはトッピングで量や味を調整してもいいし、他の人の真似をしてもいいし、とにかくコツは『小さく盛って何度もお代わりすること』かな」
「あ、それでお皿がカレー皿にしては小さいんだね」
「そうそう。バイキング形式は、回数重ねるのも楽しみの一つだからね。まぁ、たまに欲張りすぎてトッピングが溢れそうになる子供もいるけど」
「そうねぇ、七絵もそのタイプだったわねぇ」
「ちょっとお母さん。私は、ぎりぎり落とさない盛り方をしてたでしょ?」
「はいはい。それを真似した子供が、ね……」
「う。それは、その……はい、悪いお手本でした」
ふふふ。子供時代の七絵ちゃんが、お皿一杯にカレーとトッピング盛っているの、なんだか目に浮かぶなぁ。ちらっと和宏さんを見ると。
「ん?どうかした?あ、肉団子もお勧めだよ。お弁当のミートボールと同じで味時はついてないから、カレーと一緒に食べてね」
お代わりの最中でした。そっか、ミートボール美味しかったなぁ、じゃあ、まずは甘口カレーと肉団子、それから焼き野菜を頂こうかな。
「あ、その肉団子、私にもお願いします」
「とりあえず2個でいいかな……はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
こうしてわいわいと食べる食事、久しぶりだなぁ。
実家より賑やかだし、なんだろ、学生時代みたい。
「それにしても、七絵がいなくなると、食卓も静かになるわねぇ」
「まぁ、近いんだし、疲れたらこっちで食べて帰ればいいんじゃないか?」
そっか。引っ越ししたから、こうして賑やかなのは、もう最後なんだ。
「えー、そんな一人暮らしに水を差すようなこと言わないでよ。……でも、うん、たまにはこっちに食べに来るかも」
「そうよ、最初から無理しなくて大丈夫だからね。そうそう、花子さんも、良かったら食べにいらしてね」
「え、私ですか?」
「そうよ、あ、私も時々、お友達と食事に行くこともあるし。お店終わったら、こっちに上がって和宏と二人で食べてもいいのよ」
「まぁ、お店で食べるのとは違うメニューなら、うちで作るのがいいけど……まぁ、花子ちゃん、良かったらまた来てね」
えっと。これは遠慮してはいけない雰囲気?
「花ちゃん花ちゃん」
隣に座っている七絵ちゃんが、膝をつついた。
「……あのね、お母さん、言い出すと聞かなくて……」
「あ、うん」
小声でやり取りする私達をにこにこと見つめる、康子さんと和宏さん。
「あの、じゃあ、時々お邪魔、します」
「そんな、邪魔なんかじゃないから、遊びに来たらいいんだよ」
「そうそう。それにね、私もまた、母のところに行くこともあるし、和宏が一人で寂しくないように来てもらえると嬉しいわ」
「あ、はい」
なんだろう、康子さんのペースと、和宏さん、似てるかも。
「花ちゃん花ちゃん」
「ん?」
「あのね、この二人、笑顔で押しが強いとこあるけど、嫌なことは嫌っていうと、ちゃんと引いてくれるから、本当に困ったらはっきり言ってね」
「うん。わかった」
「……私が口うるさくなるの、黙ってると勝手にあれこれ決めちゃう二人のせいかも……」
小声でいろいろと教えてくれる七絵ちゃん。その向こうで、カレーのトッピングで楽しむ二人。
そっか、家族の力関係というか、身内にしか見せない顔というか……これからもいろいろと見えてくるんだろうし、私のことも……。うん、人付き合いは浅い関係しか繋げてこなかったから、こういうのは慣れないけど、嫌いじゃ、ないかな。
「大丈夫、七絵ちゃん、私、この雰囲気……たぶん、好きになると思う」
「え、大丈夫?無理してない?」
私の返事が思いがけないものだったのか、あたふたとし始めた七絵ちゃん。
心配性なんだなぁ。
「ん?どうした、七絵は食べないのか?」
「いーえ、食べますよ。あ、そのエビフライ最後の一個もらうね!」
「はいはい、それは七絵に取ってあるんだからどうぞ」
「わーい!お母さんありがとー!」
妹キャラかと思ったけど、しっかりしてるし、夢に向かって頑張ってるし、かっこいいな、七絵ちゃん。
自分で人生を切り開いていく人って、なんかこう、もっと大きな世界に飛び立つとか、大きなお金が動くような世界のことかと思っていたけど、こうやって身近な存在にもいるんだな……私は……。
「あのさ、花子ちゃん」
「あ、はい」
あ、ついつい、また自分の思考の海に沈んでた。
目の前の和宏さんが、心配そうな顔して私を見てる。
「このポテトサラダをさ、お店のメニューに出せたらなって思うんだけど、他のメニューの付け合わせじゃなく、これが主役になるやつで。何かいいアイデアない?」
「ポテサラが主役……でも、お酒のおつまみじゃなくて、ですよね」
「うん。あくまでも喫茶店のメニューとして、ね」
「そうですね……軽食としてピザの上にポテサラとチーズを乗せても美味しそうですし、これならお子さんでも食べられそうですね。あとは……ちょっと手間ですけど、タコ焼きみたいに丸く焼いても面白そうかな」
「うんうん。それいいね、小腹空いた時とか、もう一品何か欲しい時に喜ばれそうだ」
「あ、ただ自分が食べてみたいなって思ったものなので、作る手間とかお値段とかは全然考えてなくてごめんなさい」
「ん?何で謝るの?アイデアを出してもらったのはこっちなんだから、謝ることなんてないよ。逆に俺がありがとうって言う側だからさ、あ、試食はよろしくね」
「はい、任せてください」
それなら私にもできる、と自信満々に返事をしたら、とっても良い笑顔で頷かれた。食いしん坊キャラか、私。
「ささ、お喋りもいいけど、食べてしまいましょ。花子さん、カレーのお代わりはどう?」
「ありがとうございます。じゃあ、ご飯少な目で、辛口をお願いします」
「はーい。トッピングは?自分で取るかな?」
「はい。後は自分でしますので」
「うんうん、いっぱい食べてね」
「はい」
……いっぱい、食べました。ご馳走様です。
お、お腹苦しい……。
引っ越しのお手伝いだからと、動きやすい、つまり緩い服を着てたから良かった……。ふぅ。
食いしん坊キャラを自分で加速させた気もする……まあ、美味しかったので気にしない。なんとなく皆さんの視線が優しいのも気にしない。こういう時は遠慮するのも失礼だしね。
「あ、そうそう。和宏、後で花子さんと、七絵を送ってあげてね」
「ああ、そうだね」
「あの、私は一人で大丈夫ですから」
康子さんの何気ない一言に、胃がびっくりしそうになる。暗い時間とはいえ、大人になって誰かに送ってもらうなんて人生で無かったから……。でも、康子さんの言葉に、和宏さんも普通に答えてるし、あれ?構えてるのは私だけ?
「いいのいいの、どうせ同じ方向なんだから。たまには、お兄ちゃんと一緒に歩くのもいいんじゃない?」
「そうだよなぁ、同じ方向というか、同じアパートの別棟だからなぁ……まあ、商店街に近くて、女性の一人暮らしだもんな、そんなに選択肢もないから仕方ないか」
「そうなの。本当は、花ちゃんと同じ棟……お隣が空いてたらって思ったけど、さすがにそう上手いこといかなくてさ。ちょうど麻奈美ちゃんが、このタイミングで引っ越しするっていうから、じゃあって、大家さんと交渉してみたんだ」
「七絵は、こういう時の決断力と行動力は、本当に凄いのよね」
「チャンスとタイミングは、来た時に掴まないと二度目があるとは限らないからね」
ふふん、と胸を張る七絵ちゃん。そっか、それが彼女の強さの秘密かぁ。
「七絵は、昔はあんなに優柔不断で、お店に入っても食べたいものも決まらずめそめそしてたのにね」
「もう、お母さんってば、そんな学生の頃の話を持ち出さなくても……私だって成長するんだからね」
「え、意外だなぁ。七絵ちゃん、そんなイメージ無かったもん」
「うーん、花ちゃんは今の私しか知らないからかも。まぁ、そのうち、いろいろと昔語りするから、……花ちゃんのことも教えてね」
「ええ……私の昔なんて、面白くもなんともないってば……」
「ふふ。また女子会していっぱいお喋りしようね」
いつまでもお喋りは尽きないけど、そろそろいい時間よ、と康子さんに背中を押さるように、私達三人は山田家を後にした。
「せめて洗い物だけでも……」
と、後片付けの申し出をしたんだけど、いいのいいの、と笑顔で断られてしまって諦めた……私もだんだん分かってきたかも。康子さん、あの笑顔の時は素直に言う事を聞いてた方が良い時だ。
「あのさ、花子ちゃん」
「はい」
「母さんさ、ちょっと押しが強いけど、悪気がある訳じゃないから……でも、迷惑な時はちゃんと言っていいからね」
「え、そんな。凄く良くして下さってますし、私の方こそいろいろと甘えてばかりで申し訳ないくらいですよ」
帰り道、と言っても、二人のアパートまでそんなに時間もかからないから、ちょっとご近所を回ろうかと、商店街をぐるりと回って帰ることにした私達。
「あ、あのね、花ちゃん。多分お母さん、今頃、お父さんと一緒に飲みなおしてるんだと思うの。だから、ゆっくり一人にしてあげた方がいいんだよ」
「お父さん、と?」
「そうだろうね。えっと……俺の……彼女を家に連れてきたの、花子ちゃんが初めてでさ。母さん、嬉しかったみたいで、あれこれ世話を焼きたがってたんだけど、びっくりするからって少し控えてもらってたんだ。お酒も入ると、余計にそれがブレーキ効かなくなるだろ?だから、今頃、お父さんの写真の前で飲みながらあれこれ喋ってると思うよ」
……俺の彼女、という言葉に胸が熱くなったのか、康子さんの気持ちに胸が一杯になったのか、目元がにじんできた。
「俺さ、久しぶりに、母さんが、あのメニュー作るって言った時、つい、父さんはコロッケ好きだったよねって言ったんだ。そしたらさ、ちゃんと作ってあるから大丈夫よって言うんだぜ」
「あれ、コロッケ……さっきありましたっけ」
「無かったよー。お父さんの分だけ、特別なんだと思う。もしかしたらお母さんは一緒に食べる分で、別においてたかもしれないけど」
七絵ちゃんも気が付いてたんだ。
「あのメニューはね、お店の思い出でもあるんだけど、私達だけじゃ大変で……お父さんにしか出来ないって思って、ずっとしてなかったんだ。だから、私も久しぶりに食べたんだよ。あ、カレーだけならよく食べるんだけどさ、あれとは違うから」
「そうだな、俺たち、家族の思い出の味でもあるよな。七絵が覚えてるかどうか分かんないけどさ、あれ、お店のメニューにする前は、休みの日に、家にお友達呼んだ時なんかに、父さんが作ってくれてたんだよ。それが大人気でさ」
「あ、覚えてるかも。そうだね、お店じゃなくて、今日みたいに家で食べた記憶あるよ」
「だからさ、本当にあれは、あのメニューは、父さんが亡くなってから、久しぶりに俺も今日食べてさ、……実を言うと、作っている時から、ちょっと泣きそうだった」
「……うん、私も、見た時に泣きそうだった」
「だからさ、そこに花子ちゃんが居てくれたこと、美味しいって笑ってくれたことが、俺たちも、母さんも、それから父さんも嬉しかったんだよ」
嬉しかったって、言ってもらえるのが、また嬉しくて、私は何も言えなくなってしまった……。
「花子ちゃん」
「花ちゃん」
人通りの少ない夜の商店街で、和宏さんと七絵ちゃんに手を取られ、三人並んで歩いた、この夜の事、私は忘れない。
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