第20話 好きな子とお出かけ……これって実質デートだよな!?①
「っと――待ち合わせは駅前の噴水広場……」
お出かけ当日。
余裕をもって駅前に十五分前に到着する。
彼女が欲しい。
男なら誰しもが一度思ったことがあるだろう。そのためにいろいろな努力をする。
そして今日、俺は好きな子と2人っきりでお出かけすることになった。
運だけど。一瑠のおかげだけど。
ワックスで髪を整え、新調した服を着て気合いは十分。
「九重さんは、長い水色の髪を片方おさげにしてるって……」
九重さんが来るまで、一瑠から貰ったお出かけコースの手引き書を見て、復習でもしておこうかと思っていると、それらしい人物はすぐに見つかった。
何故かというと、噴水前になにやら人だかりができていたから。
その人だかりの隙間から見えたものは見間違えようのない九重さんの姿。
水色の髪……間違いない。
それに――美少女だってのも間違いない。
「うわ、かっわいいー」
「めっちゃ美少女。なに? モデル?」
「おい、お前ちょっと声かけてこいよ」
「いや、お前が行けよ、ナンパには自信あるんだろ?」
視線の先では男どもが誰が話しかけるかで盛り上がっていた。
悪いな君たち。俺が一番に話しかけるから。
人だかりをかき分けて九重さんの肩に触れ、話しかける。
「あ、あの――九重さん?」
緊張で声が弾む。
「はい」という可愛らしい返事と共に、彼女は振り向く。
揺れる水色の髪の隙間から現れたのは――俺が一目惚れした美少女だった。
大きな瞳に長いまつげ。白くきめ細やかな肌にはシミひとつない。
身長は俺よりもちょっとだけ低く、ちょうど上目遣いになる。
そして服装。
コットンシルクフロントタックワンピース。
程よいVネックが首元を綺麗に見せてくれ、九重さんの水色の髪にピッタリ。ワンピース一枚に薄着を羽織っているだけのはずなのに、爽やかな風をまとっているかのようで膝丈のスカートがひらひらとしている。
足先の可愛い紐リボンサンダル。リボンで飾られた真っ白な肌がとても魅力的だ。
胸が自然と早鐘を打ち、緊張に身がこわばる。
落ち着け俺……しっかり話すんだ。
「えっと……今日はお出かけに誘ってくれてありがとうね」
「こちらこそ、急なお願いにも関わらずありがとうございます」
「……」
「……」
(か、会話が続かねぇ……!? えーと、こういう時ってどうやって話題広げるんだっけ?)
どうしようかとオロオロしていると、九重さんがクスリと笑った。
「こ、九重さん……?」
「男性と2人っきりでお出かけするのは初めてで、緊張しちゃいまして……」
「あ、俺もです……」
「佐藤さんもでした。ふふ、同じだなんてなんだか心強いです」
ああ、そうだ。彼女はそういう性格だった。
決して馬鹿にせず、こちらにペースを合わせてくれる。そんな心優しい少女。
「俺、今日は九重さんに楽しいって思わせられるよう頑張ります……!」
「ありがとうございます。ですが、そんなに強張らないでリラックスしていきましょう」
ポンポンと肩を叩かれる。
俺たちの親しげな態度を見て、周りのどよめき、男達の嫉妬の視線が痛い。
九重里緒菜さん……やっぱり好きだな……。
◆◇
「2人ともウブだね〜」
卓と里緒菜を物陰から見守る人物こと、
そして……
「なんだかもどかしすぎて思わずチャチャを入れたくなるよね——天姫ちゃん♪」
一瑠の笑いかけに
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