第26話 国民的女優と水族館①
「お出かけって言ってもどこに行くんだ?」
今は椎波に合わせて歩いている状態。そういえば聞いてなかったと思い、聞く。
「そうですね……。人目を気にせず、タクさんと二人っきりで楽しめる場所……です」
「ほう」
謎なぞみたいだな? 話を聞く限りではどんな場所か思いつかないが……その場所なら人見知りの椎波も楽しめそうでいいな。
「タクさんと一緒に行けるなんて楽しみです」
椎波はすでに楽しそうに、笑みを浮かべた。
「ここです」
「なるほど。水族館かぁ」
「はい。久しぶりに来たかったんです」
俺と椎波は、街の海沿いにある最近リニューアルしたばかりの水族館に足を運んでいた。
夏休みシーズンとあって、家族連れや学生など、客は多い。
それにしても男女2人っきりで水族館……まるでデートみたいだが……。椎波とはそういうのじゃないよな。あくまで、プロデューサーと女優。または、友達同士……。
「ふぅ……」
「おっ、サングラス外すのか?」
変装のためにつけていたであろうサングラスを外す、椎波。帽子で顔は少し隠れているものの間近で見れば、誰もがテレビや雑誌で見たことがある、今大注目の若手国民的女優。四葉椎波である。
「水族館なら基本的に暗いですし、周りの視線も受けづらいと思いまして」
「確かにな」
みんな海の生き物を見に来ているわけだし、注目はそっちにいくだろう。
「それに、もしバレても別人を演じればいいので」
「いや、椎波ならできそうだけど……」
なにせ、声までも変えることができるしな。
「……でも、バレてタクさんと私が親密な関係というのをアピールするのも……」
「え? なにか言った?」
「なんでもないですよ」
椎波が何か言ったみたいだったけど、聞き逃してしまったかもしれない。
だけど満面の笑みを浮かべてこちらを見てくるので、大したことではなかったのだろう。
「入りましょうか、タクさん」
「ああ」
2人分のチケットを購入して、俺たちは水族館へ入った。
【あとがき】
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国民的美少女たちが俺を堕としてくる件 悠/陽波ゆうい @yuberu123
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