第10話 久しぶりの世界改変

依頼とイベントをこなし、ギルドに戻ってきた。


「これが依頼のドラゴンだ」


カイトは得意げにギルドが沸き立つのを待っていた。


「「「「「すげええええ!!!」」」」」


嬉々として歓声のした方に顔を向けると、そこにいたのは


「おらあ!!!まだまだ足りねえぞおおお!!!!」


酒樽を天井に当たりそうなほど積み上げている女戦士の姿があった


「おいっ、こいつはやべーぞ!!本物だ!!!」


「大型新人だぜ!!!!」


誰もドラゴンには目もくれず女戦士がどこまで行けるか見守っていた。


アカネはこっちにきてから何度も経験したことだと、カイトの様子を伺うと


「それ・・・・いわれたかった・・・・」


指を咥えながら羨ましそうに見ていた。

依頼に行く前よりも幼児化していた。


「カイト様。ここで騒がれなくとも討伐の功績は誰もが知ることになると思いますよ?」


「・・・・え?」


「ただのトカゲだとしても下界ではそれなりの存在だったはずです。今気付かれなくてもいずれ世界が気づいてくれますよ」


アカネはカイトの心が揺さぶられるような言い回しをして元に戻そうとした。


「そうかな?」


「そうですよ」


「夢はまだ終わってない?」


「むしろここからですよ」


夢の内容はよくわかってないがここは、立ち直らせることが最優先だ。



「お待たせしました。こちら依頼達成の報奨金です」


なんとか通常状態まで立ち直ったカイトは、報奨金を受け取り、次のイベントを今か今かと待ち侘びた。


「それから素材の方はいかがなさいますか?受け取るか、オークションにかけるか選べますが」


「オークションで」


ドラゴンの素材など受け取っても二人には役に立たないため金に変えることにした。


「かしこまりました。では手続きはこちらで行いますので。本日もお疲れ様でした」


「・・・・・・・・え?」


「え?他に何か?」


「いや、あの。ランクアップとかは?A級とかS級とか」


「ランク?いえ、そのようなシステムはございませんが」


「は?ない?」


「はい。一千年前に塔の出現によってギルドシステムができた時から今までそのようなシステムはありません」


これは、まずい。アカネは思った。これまで主人の言う”お決まり”はほとんどが失敗しており、さらにここで失敗したとなるとカイトの身に何が起こるかわかったものではない。


「カイト様。申し訳ございません」


アカネは、カイトに触れて塔の天辺にいる管理者にリンクを繋いだ。


「今すぐDPを消費して、世界の改変を!!」


「内容は」


無機質な声が返ってくる。


「一千年前のギルドシステムに介入。ランクシステムの導入を!!」


なんと言う無駄遣い。そしてなんと言う大掛かり。たった一人のために一千年の歴史の改変。

だが、これが許されるのが裁定者でありその眷属たち。制約はあるが、それも裁定者に不利益を及ぼさない限りというものだけ。


「ほんとにない?」


「いえ、申し訳ございません。私が忘れておりました。すぐに反映させますね」


「え?あるの?まじ?」


カイトの表情が一変、おもちゃを買ってもらった子供のように輝いた。


「はあ、間に合った」


アカネは、一息ついて何事もなかったかのように振る舞った。


「良かったですね」


「ああ!!」


この笑顔を見ると世界の改変すら正しいことだと思ってしまう。

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