第9話 初依頼と逆鱗

またも枕を濡らした翌朝。


二人はギルドへと向かっていた。昨日と違うのは、カイトのテンションが落ち込んでいると言うことだけ。


「カイト様。早く行きますよ」


トボトボと聞こえてきそうな足取りと雰囲気をまき散らしているカイトをアカネは急かす。


「・・・・・わかってるよ・・・・」


ここまで落ち込んだカイトを気にする事なく歩みを進めギルドに入っていった。


アカネは、掲示板から一枚の紙を剥がし受付嬢に見せカイトのところに戻ってきた


「カイト様。依頼受けてきましたよ」


「いらい?」


精神年齢まで低下しているカイトにイラッとしたアカネだったが、一千年の間、カイトの聖書マンガの話を聞いてきたアカネは、この場面でのとっておきを出した。


「はい。ドラゴン討伐です」


「どら・・・ごん・・・」


「はい。ドラゴンです」


体を震えさせ顔を上げたカイトは髪をかき上げてこう言った


「ここから先は俺の時代だ!!」


「ですね。復活したなら行きますよ」


自分のセリフに感動しているカイトを無視して歩き出した


権能をフル活用して火山の火口で寝ているドラゴンを見つけ、

”座標操作の権能”(移動先の座標と現在地の座標を入れ替える権能。


自分が動くのではなく世界を動かす権能)を使い移動した。冒険感は全くないが使うものは使うのが二人のモットーだ。


「おっ、いたな。じゃ、早速」


”斬の権能:一刀両断”


カイトは、振り下ろした。剣でも刀でもなく手刀を。


ただそれだけでドラゴンの首は落ち絶命した。


「よっし帰るか」


「ですね」


すっかり機嫌を直したカイトを横目にアカネはドラゴンの死体を回収した


「”高次元の権能”」


これは、対象の物体を一次元から四次元までの空間に自由にしまう権能

生命あるものも収納できるため三次元の物体が一次元に収納されると線だけの存在となってしまい、形を維持できず命を落とす。


討伐を終え今度は歩いて帰ることにした二人は、森の中を歩いていた。


「いや〜冒険っていいなあ〜」


「そうですね」


「今度も誘ってみるか」


そんな他愛もない話をしていると


「「止まれ」」


複数の男たちが立ち塞がった。気づかなかったわけではないがあえて触れなかった


「盗賊イベントか」


そう、このために。カイトがワクワクしていると盗賊たちはイベントを進めた


「金目のものを置いていけ」


ブルリッ。とカイトの方が震えた


「お頭。こいつびびってやがるぜっ」


ますます体を震わせるカイト。ため息をつくアカネ。


「嫌だと言ったら?」


ニヤニヤしながらさらにイベントを進めるカイト


「ならそこの女を置いていけ。俺たちで遊んでやるよ」


「「「ギャハハハハハ・・・・は?」」」


盗賊たちの笑い声は最後まで続かなかった。


「イベント発生には感謝するが、アカネには手を出させん。俺の夢よりも最優先事項だ」


盗賊たちはその声を最後に、死体も残さず消えていった


「おしっ、帰るか」


「・・・・・はい」


アカネは顔を赤らめながら一千年支えてきた主人の背中を追いかける。

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