第8話 ギルドとお約束(お決まり)

アンナの屋敷を後にし、ギルドへ向かおうとした二人だが、すでに夜が更けており受付の時間は終了していた。


勢いよく出てきただけにその衝撃は大きく、カイトにとっては天国から地獄への片道切符を突きつけられたも同然だった。


「なんでっ、なんでおれの旅路はこうもうまくいかないんだっ!!」


アカネが落ち込んだカイトを引きずりながら、なんとかとった宿で枕を濡らしながらぼやいていた。


「まあ、いいではないですか。明日の朝早くに行けばその日のうちに仕事ができるかもしれませんし」


いつもの面倒臭い主人を慰めながら、さらに悪化する前に寝る準備をした。


本来寝なくてもいいのだが、面倒臭い時は寝るのが一番だと、主人に作られてから一千年で学んだ。


「そうかなあ・・・・・」


いつになく落ち込む裁定者。


今日だけでお決まりをことごとく達成できなかったことで深く傷ついていた。


「なあ・・・・アカネ〜・・・・」


・・・・・。


「アカネ?・・・・・おい?」


・・・・・・・・・・・・。


「・・・・・・ちくしょう・・・」


その日は、枕が濡れて眠ることができなかった。


翌朝

アカネが目を開けるとそこにいたのは


「・・・・何してるんですか?」


「心の準備だ」


座禅を組み、瞑想をしている裁定者であった。


「なぜそのようなことを」


「何を言う。これから聖地へと向かうのだ。心を清めなければっ」


目的が不純であるが故になんの意味もないのだがこれ以上めんどくさくならないよう


「そうですか」


とだけ返した。


お清めが終わり朝食を食べた二人は、一人テンションがおかしいことを除き、周りの人間たちのように仕事をするためギルドへ向かっていった。


ギルドは、聖王国の中では比較的大きな建物のため迷うことなくたどり着いた。


「よしっ、入るか!!」


(やっとだ!やっと、夢への第一歩を!)


扉に手をかけ、開けたその先には


数多くの冒険者、そして受付嬢、依頼をする依頼主に、パーティの仲間同士で朝から飲んでいるものたち。これぞまさにギルド。といった様子だった。


それをみたカイトは


「・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!」


感動のあまり声も出せず静かに涙を流していた。


気を取り直し、二人は受付へ向かった。


「おはようございます。ご用件はなんでしょうか?」


「ああ、冒険者としての登録を。あとこれを」


要件とともにアンナからもらった招待状を差し出した。


「はい、かしこまりました。少々お待ちを」


受付嬢は、招待状を持ち一旦奥へ下がる。


「何をソワソワしているのですか?」


受付を始めてからずっと落ち着かない様子の裁定者に対しアカネが尋ねると


「いや何。もうそろそろだと思ってな」


「何が・・・・」


アカネが聞こうとしたその時


「おいっ。お前、冒険者になろうっていうくちか?」


その言葉にカイトは、全身を震わせた


「ああ、そうだが?」


ニヤつきを隠せない顔でそう返すと


「そうか。・・・・・頑張れよ!!」


最高の笑顔で応援された


「・・・・・・・・・・・・え?」


「いや〜久々の新人なもんで。お前ら!!!新しい仲間だ!!助けてやれよ!」


「「「「おうよ!!」」」


冒険者たちは、二人を応援するかのように声を荒げてそう言った。


「お待たせしました。カイトさんにアカネさんですね。得意なものをお書きください。どうされました?」


「・・・・・いえ。なんでも・・・・ありまぜん・・・」


アカネ頼む、と記入を頼みその場で涙を堪えていた。


「はい。ありがとうございます。身分はアンナ様に保証されていますので登録はこれで終了になります。では、冒険者ライフを楽しんでください!!」


身分証となる冒険者カードを受け取り、作業は終了。


アカネは、涙を堪えるカイトをなんとか動かし一度宿に戻った。


その日もまた、依頼を受けることなく枕を濡らした。

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