第5話 国へ向けて。その前に
裁定者とアカネは、三カ国のうち中立を謳っている聖王国へ向けて歩みを進めていた。聖王国を選んだ理由はある目的を果たすためである。
「アカネさんや」
「はい」
アカネの一歩前を歩いていた裁定者は突然立ち止まり、顔を俯かせ、体を震わせながら尋ねた。
「おかしくないか?」
「何がです?」
周辺には、森と広大な大地、微かに見える聖王国の入り口。
何もおかしなところはないのだが、アカネは何かあるのだろうと思い
”把握の権能”を使い周囲の全てを視た
しかし、主に視えるのは森を構成する木々の情報と大地の構造情報、空気を構成する分子情報だけ。所々に空間がねじれたところや、古代遺跡、死霊が漂っているだけである。
「特に変わったところはありませんが」
「いやいやいや。ここはあれだろ!?あれ!」
興奮した様相で口にしたものは
「どこかのお嬢様とかが襲われてて、それを助ける主人公カッケー的なイベントが起きるはずだろ!?」
「そんなに世の中うまくありませんよ?」
「いま聖書のほとんどを否定したな!?」
裁定者は目から鼻から大量の液体を出しながらアカネにそう言った
「いえ、そのような意図はありませんが」
「ならその汚物を見るような目をやめろ!」
興奮するだろ・・・・とは言えなかった。最後の最後で羞恥心が勝ったのである。
「もし、お望みのイベント?が起きた時はどうなさるのですか?」
「そりゃもちろん、そのまま家まで行ってお礼と称してヒロインになってもらったり、お金をもらったり?」
「もう一度言いますが、世の中そんな・・・」
繰り返し現実を突きつけようとしたその時
「きゃあああああああああああ!!!!!!」
女性の叫び声が聞こえてきた
「「え??」」
これには二人とも声の方に首を動かした
「ほれみろ」
「・・・・・」
裁定者のドヤ顔にイラッとしたが無視し
「とりあえずいきますか」
「ここからが旅の始まりだぜ!!!」
裁定者は権能を全力で使用し目にも止まらぬ早さで女性の方へと向かった。
アカネが追いついた時にはすでに女性を襲っていたであろう魔物は事切れており、護衛の人にお礼を言われながら、馬車の中の様子を伺おうとしていたところだった。
「来たなアカネ、ここで俺の下界生活での運命が決まるぞっ」
「はあ。あまり期待すると後が怖いですよ?」
「いや、間違いない。あんな綺麗な声をした
裁定者は目を輝かせながら今か今かと待ち侘びていた
「あのっ。この度は助けていただいてありがとうございます」
馬車から出てきたのは綺麗に腰の曲がった素敵なー
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