第4話 現状把握と夢のため

「なあ」


「はい」


「どうすんのこれ?」


「・・・・・」


下界に降りる扉を通り足を踏み入れたはずの二人


その目の前にあったものそれは’’果てしなく澄み切った青’’

そう空である。そして二人は絶賛自由落下中であった。


「ん〜。どうすっかなあ〜」


「新しい権能でも作っては?」


それは裁定者とその眷属たちにしか許されない世界の理を超える唯一の力

下界では、権能の劣化版としてスキルが存在するがあくまでも理解に収まる事象の変化にとどまっている


「そ〜だなあ〜。そうすっか」


そういうと裁定者は目の前にシステムボードを浮かび上がらせ


「”重力操作の権能”作成っと」


作り上げた権能を眷属に付与し


「よしっ、これでどうにか」


早速権能を使うと、自由落下が止まり、空中で体が止まっていた。


これならっ


「なあ、アカネっ」


「はい?」


すでに地面に足をつけているアカネは顔を上げ返事をした。

「・・・・・・・」


「ん?どうしました?変な顔をして」


「いや、なんかこう、感動的なシーンなのではと思いまして」


「いえ。それほどでも」


「あっ。そっすか」


裁定者の明らかに落ち込んだ顔を見て

「もしかしてまた漫画の話ですか?」


「漫画ではないっ!聖書だ!」


そう漫画ではない。裁定者が聖書といえば聖書なのだ。


「それで?空中で何を?」


「なんか生きてるものから少しずつ元気をもらってエネルギーに変えて攻撃するみたいな?」


裁定者は夢の第一歩を踏み出そうとして


「無理ですよ?」


打ち砕かれた。


「え?」


「権能を使えば可能でしょうが、あなたが下界でそれを行うと、世界の生物が干からびてしまいます」


「じゃっ、じゃあ身体能力10倍とか形態変化とかして髪の色変えたりとかは!?」


「世界が崩壊しますね」


その瞬間、重力操作の権能が切れ、裁定者は膝から崩れ落ちた。流石の身体能力で傷一つつかなかったが、精神は豆腐以下だった。


「そんなっ!なんのためにここまでっ」


絶望感に苛まれていた彼にアカネは


「きっといいことありますよ」


適当にあしらった。


それからしばらくしてようやく立ち直った裁定者は、人のいるところへ足を進めた。






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