第2話 裁定者の1日

この世界の裁定者になって長い時が過ぎた。


「あ〜。暇」


人間をダメにするクッションにうつ伏せになりながら呟いた。


「裁定者よ、そろそろ働かれては?」


そう進言したのは、裁定者の守護者兼メイドである。


「アカネ〜。そう入っても最初の百年くらいで大体終わったじゃん。ダンジョンの踏破もまだ序盤も序盤だよ。DPも有り余って使い道に困るし、大体の娯楽も飽きたし」


アカネ、彼女が守護者でありながらメイドであるのは、ただの裁定者本人の趣味であり、厨二患者にとっての夢を叶えただけなのである。だが、その実力は確かなもので、彼女が地上におり、ダンジョンを踏破しようものなら一日もかからないほどの力の持ち主だ。


「しかし、下々のものたちもそれなりにがんばっておりますよ?」


「下々って・・・。まあ、当初の目的は果たせたけどさ〜。帰り方もわからないし、何もすることがないんだよ」


目的。世界を平和にするという当初の目的は百年かかったが達成している。


しかし、この部屋には、始まりの日とは違い、映像を映し出す機械、食材を保存する機械、情報にアクセスする機械、寝床、そして尽きることのない資源であるDP、生活に不満を漏らす要素はどこにもなかった。ただひとつ問題があるとすれば


「不老不死とか聞いてないんだよ。下界で民から税をとってなんの仕事もしない老人と変わんないじゃん、俺」


「すごく具体的な例を出しましたね。まあ、側から見れば否定する要素はないですが」


それを聞いて裁定者は、精神的にダメージを負った。


「では、下界に降りて観光でもしてみては?」


そんな提案がアカネの口からでた。


それを聞いた裁定者は


「いいじゃんそれ。行こうか」


即答だった。


DPを消費し、アカネでも苦戦するレベルの管理者を生み出し、


「とりあえず神子に伝えとくか」


「そうですね」


そう言って、千年前に生み出し今もなお、国に在している神子に観光することを伝えた。


「よっしゃ、出発進行〜」


あまりにも気の抜ける掛け声とともに


この日、一部の関係者を除き、人知れず、世界の裁定者・世界の王が下界に降り立った。

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