第532話 中途半端


「でも、ヴェルトくんは、フォルナちゃんの旦那様だよ? ヴェルトくんが守らなくちゃいけないのは、フォルナちゃんだよ?」


「いいんだよ! だって、フォルナ、俺より強いから! でも、お前は世界一臆病者だから丁度いいんだ!」


「ちょどいい?」


「そうだ! 俺は麦畑で生まれたこの世で最も凶暴なやつだから、世界一臆病なお前は俺でも守れるぐらいに弱いんだから、守るのに丁度いいんだよ!」



 うん、俺が守れるぐらい弱いんだから丁度いい。

 あれ、そうしたらこいつ………


「ッ………ふ、ぷっ………」


 震えてる?

 でも、それは、涙を堪えてるんじゃない。

 怯えてるんじゃない。

 これは………


「ぷっ、ふふ、あははははははは、なーに、それ!」


 あっ、笑った………

 笑うんだ、こいつ………


「笑うなよ~」

「だって、おかしーんだもん」


 気づけば、俺も笑ってた。というより、なんかホッとした。

 

「………も~う、でも、ほんとうなの? 守ってくれるの?」

「ん、ああ、いいよ」

「何があっても?」

「しつけーな、何があってもだよ、多分」

「………ふふ………そうなんだ………」


 女の子を笑わせて、守る。これ、親父が言ってたことだ。

 じゃあ、これでいいんだよな。

 良かった、これならフォルナも怒らないよな?

 後で、ちゃんとフォルナにも………



「旦那ァ、こっちですぜい! この裏通りはこの時間、全然人がいねーのは確認ずみですぜい!」



 って、誰か来た!


「ヴェルトくんッ!」

「しっ! なんか見つかると面倒だから、隠れるぞ」


 ようやくホッとしたのに、誰かが走ってこっち来た。

 慌てて樽から降りて物陰に隠れたけど、誰だ、あいつら。

 なんか、二人の大人が走ってきた。俺もこの辺はよく来るけど、見たことないやつらだ。



「警備がザルすぎるハンガー。これが多くの優秀な人材を輩出したエルファーシア王国の警備体制とはお笑いダッ………ハンガー」



 そして、何だよ、あいつ。

 ちょっと大きめの白い袋を担いだ男。

 一緒に居るヒゲの男に「兄貴」って呼ばれてるけど、こっちの方が若く見える。

 でも、歳よりも格好の方が気になる。

 貴族みたいな高そうなコートのようなマント。

 そして、絵本で出てきた海賊とかが被っているような帽子。

 そんで、あの「手」はなんだ? あれって洋服をかける………



「にしても、兄貴~、その口癖どうにかならないんですかい? いつもの、ほら、アヒルみたいな………」


「今は潜入中ダック……じゃなくて、ハンガー。今の私は、社長より特別な名を授かった身。だから、今は私のことは、『ハンガー船長』と呼ぶように」



 なんで片手が洋服をかける木のハンガーなんだ? 

 それに、もう一人の方は、縞々の服に、頭に頭巾かぶった柄の悪そうな大男。

 こいつはなんか海賊の下っ端にしか見えないぞ?


「そんなもんすかねえ」

「そうだ。それよりも、早く王都を出て、国境を越えるハンガー。積み荷が起きて暴れださないうちに」

「へへ、兄貴の『極限魔法』のスリープ使ったんすから大丈夫でしょう?」

「侮るなハンガー。子供とはいえ、『暁光眼』の持ち主だハンガー」


 ん? 暁光眼?



「にしても、想像以上に楽でしたね。まさかこのガキが発表会に行かずに公爵家の屋敷に閉じこもっていたとは。おかげで、女王陛下ともう一人の姫の護衛と警備のため、ほとんどの兵が発表会に行ってて、公爵家には僅かな護衛しかいなかったんすから。おまけに、一番厄介だと思っていたこのガキも、簡単にこうして眠らせて浚えたんすから」


「確かに拍子抜けハンガー。何やら泣き疲れて元々眠っていたようだったハンガー。今はその眠りを更に深くしているハンガー」


「屋敷の連中も全員三日は起きないでしょう? 三日もありゃ、俺たちは楽に『スタト』まで行けやすね? あとは、姐さんの『邪悪魔法』の『洗脳』で、このガキを逆らえないようにすりゃあ、完璧ですぜい!」



 なんだろう………………なんか、スゴイ大変なことが起こってるっぽい。







 ――――――――――――



「とまあ、初めてまともにペットと話したのがそん時だったわけで……って、お前ら食いつきすぎだぞ?」



 気づいたら、ニート、アッシュ、ブラック、そして俺の膝枕でヘブン状態だったムサシまで起き上がって…………



「と、ととと、殿! お待ちくだされ! 今、殿とペット殿の思い出話が、なにやらとんでもない大事件の脇で起こっているように思うのですが…………」


「お、おお、ほんとそうなんで! えっ、なんなの、それ? お前、それ、なんか凄いこと起こってねえ? ぶっちゃけ、今ので、お前とペットって子の話が一気にどうでもよくなったんで!」


「にゃっはどうなったの! そのあと、そいつらなんだったの?」


「そうよ! ちゃんと話しなさいよ!」


 

 あっ、ああ、そっちね。まあ、そうだよな…………



「つうか、だから話すのめんどくさかったんだよ! 俺とペットの話は大したことねーけど、それを話すと色々と面倒な話も絡むし!」


「だって、こっちはそういうの全然予想してなかったんで!」



 ニートの言葉に同意するように、ムサシたちも同時に頷いた。

 なんか、「お前とペットの話はどうでもいい」のあたりが、実際そうなんだけど、なんか釈然としねえ。

 だが、同時に…………



「あの、皆様……博物館に着きましたが……その……どうされますか?」



 運転手が運転席から俺たちに声をかけて来た。

 ああ、なんだよ着いたのか。

 周りの景色なんて全然見れなかった。こっちも話すのに気を取られてたからな。


「ほら、着いたってよ。なら、行こうぜ。この続きも話すとなると、すげー長くなるから」

「いや、ちょ、ちょっと待って欲しいんで!」

「さて、ニートの言うとおり、この世界の歴史とやらを拝みに行くとするか」


 今は、そんな昔の話よりも、ニートの言うとおり、多少なりともこの世界のことを知っておく必要が……



「殿~~~~! 殺生でござる~!」


「無理なんで! この後で、世界のどんだけトンデモな歴史が仮にあったとしても、全然頭に入らない自信があるんで!」


「にゃっは気になって仕方ないよーッ!」


「ちょっとー、だから、そのあとどうなっ、行くなーーーっ! 中途半端に終わらせるなーッ!」



 まるで、野球場のドームのような巨大な建造物。これは、元の世界じゃお目にかかれないような大きさだ。

 この、巨大な分だけ多くの歴史があるわけだ。

 まずは、それを見に行くとするか。






――あとがき――


【ぐおおぉぉぉ~_(´ཀ`」∠)_お願いがあります】


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