第497話 異文化交流
「では、世界を超えて現れた友に乾杯!」
「「「「「乾杯っ!」」」」」
正直なところ、五分ぐらい誰かも分からねえおっさんの高説がベラベラと言われたが、大半が頭に入らんかった。
唯一分かったのは、最後の乾杯の言葉ぐらい。
「バスティスタ様、そ、その、えと、ご、ご趣味は……い、いえ、まず、ご結婚されていたりとか、好きな方はいらっしゃいますか? わ、たしは、特に許嫁いないものでして、もしよろしければ、差し支えなければこのあとにでも『相性検査』をこのあと、う~、まあまあまあ、私ったらはしたない。それと、こちらお土産です。我が国の名産のレザージャケットとレザーパンツです。世界最高級の革を素材とした我が国の名産品として高い評価で、その、私とどちらが良いですか?」
「少し落ち着いたらどうだ? 言葉が支離滅裂だぞ、バーミリオン姫。だが、服はありがたく頂戴しよう。この手触りは、向こうの世界にはないものだ」
「ほら、えーと、あんたニートだっけ? その、これ、私の国の友好の証みたいなブレスレッド。っと、こほん……付けたげるね、お兄ちゃん♪ あと、私のシングルCDとか、ブロマイドとかも、えへへ、良かったら~、聞いて欲しいな~♪」
「あっ、ブラック姫、それほんとお土産だって分かるように包装して欲しいんで。そんなの丸出しで持って帰ったら、妖精に殺されるんで、まあ、CD持って帰っても聞けないけど」
「にゃっは! それじゃあ、ムサシさんはおじいちゃんに剣術を教えてもらったんだ~。私もね、私の国の『仙人』って呼ばれてる老師様に武を教えてもらったんだよ。もう、すごい高齢なはずなのに、にゃっは若々しくて可愛い女の子の姿なんだけど、本当はニャっは強くてね」
「拙者の大ジジも一族のみならず、亜人大陸全土にその名と剣と心を伝えたでござる。今は拙者も独立した身ではござるが、その受け継いだ魂は、旦那様の下でも変わらぬでござる、えへへへ、殿のことを旦那様と拙者はまた言ってしまったでござる♥ アッシュ姫、今のは内緒でござるよ?」
「そういうことってね♪ 遥か昔、私たちの先祖の天才科学者である『シルバー』が、私たちの世界の技術の素を作って、更には人間、亜人、魔族の脅威に対抗するために、数多くの『機動兵器』を完成させたってね♪ その最高傑作が、『七幻神』ってね♪」
「…………七…………ああ、『七つの大罪』…………ルシフェルさんたち? っていうか、君、ほんと喋り方イラっとくるからやめてくれる? 口を引き裂くよ?」
「なるほど、つまりあちらの席に居る、ヴェルト・ジーハという方が本当にあなたたちの世界を制覇して統一したのですね、リガンティナ皇女。………ボソッ………篭絡するなら、アレね……初めての枕営業も視野に入れてブツブツブツ………」
「まあな。流石は我が妹が見初めたといったところだ。次はこちらから聞きたい、ミント皇女。昼間の連中について聞きたいのだが―――」
「はう、だ、だめ、でし、エロスヴィッチさん、テーブルの下から、そんな、し、尻尾、ダメでし、き、気づかれちゃいまし、尻尾でイタズラ、や、や、おねがい、やめてくだしゃい、はう、ダメ、んんっ!」
「ん? どうしたのだ,シアン姫? ほれほれ、ここがいいのだろう? ふふん、あんまり真っ赤になって震えると、部下や国王、更には他国にも気づかれるのだ。それにしても、嫌だ嫌だといいながら、体は既にわらわの『ゴールドテイル』にメロメロで、ここはこんなに………じゅるり、今夜、戴くとするのだ♥」
「あの、ペットさん、その、一つ聞きたい事が………あなたたちの世界では十代の恋愛も自由とのことですが………………その、お、男の人同士の恋愛とかはどうでしょうか?」
「えっ? ………………………………えっ? あの、アプリコット姫?」
もう、既に自由な会話がそれぞれ始まった。
「さて、昼間は娘を含め、騒ぎを沈静化させてくれたことに礼を言わせてもらおうか。ヴェルト・ジーハくん」
会場全体で一斉に乾杯だけしたら、後はご歓談くださいとばかりに、全員が着席した瞬間、早速俺の目の前に居るカラフルな祭服を身に纏った爺さんが俺に訪ねてきた。派手なローマ法王か? に見えるが、ピンクの父親でパリジェン王国の王だとか。
その周りをまた、側近みたいな高級官僚っぽいおっさんたちで固め、俺の隣には姫のピンク、反対側にはコスモス。
そして俺の目の前には……
「なにこれ?」
「十ツ星レストランの超高性能料理マシンが作り上げた料理です。どうぞ、お楽しみ下さい」
目の前の皿には、やけに綺麗に切り分けられているものの、野菜だけ。
いや、前菜だと思えばとも思ったが、それだけじゃなさそうだ。
野菜と豆を中心とした食材ばかりで、確かに新鮮で健康的なんだが、これは…………
「に、肉はねえのか?」
「「「「「肉っ!」」」」」
俺がさり気なく聞いただけなのに、全員ガタガタッと慌てたように顔を引きつらせた。
「っと、ああ、す、すみません。た、確かに、動物性の食材を我々も摂取することはありますが、それはほとんどが、ジャンクフードのようなものに分類されますので、このような公式の場では…………」
「ぷ、くくく、肉だって」
「やはり、原人だな」
まるで、高級フランス料理屋で和食でも頼もうとしている非常識なやつを見るかのような目。更に言えば見下して小馬鹿にしたような陰口。
全部俺には筒抜けなだけに、イラっと来たな。
「どう、お嬢ちゃん、おいしい?」
「……………ぶ~………」
ピンクが俺の隣に居るコスモスに尋ねると、コスモスは案の定不満気な顔。
コスモスの口には合わねえというか、肉とか麺とかそういうの食ってたコスモスには物足りねえだろうな。
「パッパやジッジが作ってくれたゴハンの方が、あったかくておいしい」
そして、お世辞の知らないコスモスは率直な感想を言えば、また目の前の連中は驚いた顔をした。
それは、コスモスが料理を美味しくないと言ったことに対してではない。
「りょ、ご、はんをつく、作る? おいおいおい、ほ、本当ですか?」
「えっと、ヴェルト・ジーハさんですね。あなたは…………ご自分で料理を?」
なんだよ、その珍獣を発見したかのような目は。つうか俺は、ラーメン屋の店員だぞ、コラァ!
「んだよ、男が料理すんのがそんなに変か?」
「「「「「じじじじじじ、自分で料理を作るッ? なんで、そんな無駄なことを!」」」」」
えっ? そこ?
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