第364話 豪快な再会

 パワーアップの手段として、ユズリハの背中に飛び乗って、あの感覚を思い出し、そして魅せる。

 すると………



「よし………いくぞ、ゴミヴェルト……」


「おう。邪魔なカラクリモンスター共を―――――」


「ん。あのゴミ父を蹴散らす」


「ああ、蹴散らし………ん?」



 ユズリハ、そのまま上昇し、カラクリモンスターたちを無視して、なんかそのまま真っ直ぐ、未だ快進撃を続けるシンセン組に向かって飛びやがった。


「ちょ、お前、何考えてんだ!」

「う~~~~~、邪魔な粗大ゴミたちめ、死ねッ!」


 まあ、当然カラクリモンスターたちも邪魔してくるわけだが、それが目に入ってないのか、眼中に無いのか、それすらもユズリハは薙ぎ払い、真っ直ぐ飛んだ。


「うおおおおお~~~~~~~! ワシのユズリハちゃーーーーん!」

「ユズリハ姫……」

「あははは、姫様もお元気そうで良かったですね、局長」


 飛んで来たユズリハの姿を見て、イーサムは嬉しそうに号泣している。

 うわ、やっぱ、まんま親バカなのな。


「って、ユズリハ~~! なんじゃ、その後ろの男は! 貴様、ワシのユズリハを足蹴にするとは………ん? あ………おおおおおおおおおおおっ! 小僧!」

「お前は、ヴェルト・ジーハ!」

「これはこれは懐かしい……まあ、つい最近まで忘れていましたが……これはなんということですかね。まさか、ジャックポット王子とユズリハ姫が、彼と行動をしていたなんて」

「げっ! あの男!」

「あの時の人だよ!」

「何でいるの?」


 イーサムたちも俺の姿を見て、そして驚愕の声を上げている。

 そうだな。二年ぶりだよ。そして、今じゃ聖騎士の魔法も解けて、俺のことを思い出している。



「なんじゃあ、お前! 何しとるんじゃ、そんなところで! というより、何故ワシのユズリハちゃんの背中に乗っておる!」


「黙れ、ゴミ父」


「うおおおお、ユズリハちゃん、元気じゃったか? しかし、あのユズリハちゃんが背中に人間を乗せるとは、どういう心境の変化じゃ? 結婚が嫌で家出して、そこから何があったんじゃ?」


「ふん、私の勝手だ。いいか、私は絶対に結婚なんかしないからな。誰か貴様の選んだオスと添い遂げるものか! そして、私はこの背中のゴミに私はキズモノにされた。だから責任を一生取らせる。こいつを生涯扱き使うから、結婚しなくてもオスはもう間に合っている」


「えっ? マジ? なんちゅう偶然じゃ!」


「何がだ?」


「ユズリハちゃん。ワシが見つけた、お前の結婚相手は、そいつにする予定だったんじゃ!」


「…………………………………………………………………?」


「ほれ、ワシが見つけた面白い奴ってのは、そいつのことじゃよ! なんじゃ、おぬしら、偶然出会って、それでいてそんな関係になったのか? グワハハハハハハハハハハハハハ! こりゃ、めでたい」


「…………………………………………………………………ッ!」


――――――ブンブンブンブンブンブンブン


「グワハハハハハハハハハ、なんじゃ、ユズリハちゃん。顔真っ赤にして、尻尾を嬉しそうにブンブン振っておるとは、こりゃもう、ベタ惚れじゃな! 小僧~、やはり大したもんじゃな! こりゃ、孫を見る日も近いか!」



 なんか、もう、物凄い父娘の会話を交わしながら、俺はどう反応していいか分からなかった。

 つか、確かにそんな話が昔あったな………



「つうか、お前ら戦争中に、何くだらねえ親子喧嘩してんだよ!」


「おお、そうじゃった! 全く、少しは落ち着いて再会させろというんじゃ、このたわけどもがッ!」


 

 しかし、それでも油断でカラクリモンスターの攻撃により、イーサムが遅れをとることはない。

 前は、あまりにも力の差がありすぎて分からなかったが、なまじ俺も半端に強くなったもんだから、余計にその力がどれほどのものか理解できる。


「殲滅殲滅殲滅殲滅」

「防衛防衛防衛防衛」

「ロックオンロックオンロックオン」

「発射発射発射発射」


 機械的な目を光らせて、銃口を向けてくるカラクリモンスター。

 豹、鷹、ワニ、ゴリラ? まあ、そんなもんはどうでもいいや。

 なぜなら……



「ふんぬりゃあああああああ!」



 瞬殺されるからだ。


「つ……つ、強すぎだろ、このハッスルジジイ」

「……う~~~~……うう~~………」


 言葉も出ねえとは正にこのことだ。

 ユズリハも、さっきまで憎まれ口叩いていたのに、自分のオヤジの圧倒的な強さを前に萎縮しているのか、少し縮こまっている。

 ほんと、俺らが援護する必要は、あんまなかったなと、乾いた笑いが自然と俺の口から漏れた。



「………ん~……全軍止まれい!」



 だが、イケイケモードだったはずのイーサムが、急に全軍停止の言葉を発した。

 理由は分からないが、大将の言葉である以上、シンセン組は急ブレーキで止まった。

 一体何を?


「懐に飛び込みすぎたわい。今にも爆ぜそうな火薬の匂いがプンプンするの~」


 ニヤリと笑みを浮かべながら、イーサムはカラクリモンスターたちを見渡し、急に方向転換した。

 火薬の匂い? 爆ぜる?



「ッ!」



 俺は一瞬で理解した。先日の戦いで、最後何があったのかを。



「させるかよ! ふわふわ世界!」



 あの時の俺は出来なかった。だが、今なら出来る。

 こいつらが、ドラと同じカラクリモンスターなのだとしたら、俺に扱えねえわけがねえ。

 だから、俺は浮かせる。カラクリモンスターたちを全部だ!



「ほう」



 イーサムの感心したような視線を感じながら、俺はカラクリモンスターたちを宙に浮かせた。

 何故なら……



「なかなか大きな花火じゃな」



 宙に浮いたカラクリモンスターたちは、その数秒後に大爆発を起こした。

 自爆。どこで見ていたのか分からないが、戦況を見て、ラブ・アンド・ピースの連中が、カラクリモンスターを自爆させて、イーサムたちもろとも吹き飛ばすつもりだったんだろう。


「危なかったですね。まさか……あんな機能まで……」


 正に急死に一生って奴だな。

 状況がまるで理解できないほとんどの亜人たちは、思わずその場で武器を落として、へたり込んでしまっている。

 雲が全部吹き飛ぶほどの爆発。呼吸がうまくできなくなるほどの硝煙。そして、耳鳴り。

 だが、壊滅しなかった。その現実に、俺は冷や汗を掻きながらもホッとした。


「ぐわはははははははは、まさかお前に助けられるとはの~、婿よ」

「……誰が婿だ、誰が」

「二年ぶりか……あのすぐあと、帝国でマッキーラビットを殴り飛ばした映像を見たとき、スカッとしたわい」

「はは、俺にも懐かしい話だぜ」

「しかし、その後、ワシはどういうわけかおぬしのことを忘れていた。数日前の魔族大陸での、あの娘っ子との結婚式でおぬしを見て、何かひっかかる程度には感じていたが、なんか気づいたら思い出しておった」


 思わず俺も地面に座り込んでしまった所に、イーサムが近づいてきた。

 ああ、間近で見ると、相変わらずデケエな。



「まあ、そんなことはもうどうでもいい。それに、何故おぬしがここに居るかも、ジャックやユズリハと行動しているかも問わん。言いたいことはただ一つ。なかなか成長したようじゃな、助かったぞい」



 なんだろうな。

 半殺しにされ、腕をぶった切られて、本来ならボコボコにしてやりたいぐらい憎みたい相手のはずが、ただ一つ褒められただけで、何だか嬉しい気がした。

 俺は、照れた様子を気づかれないように、頭を掻いて俯いて誤魔化した。



「ヴェルトー!」


「ちょっと、今、何があったのよ、ヴェルト君!」


 

 気づけば、不完全燃焼気味な仲間たちが俺目掛けて駆け寄ってくる。

 イーサムもその存在に気づき、また、豪快に笑った。


「ガハハハハハハハハハ、あの魔族の娘っ子もおるな。それに、仲間も女も増えているようじゃな。結構結構。ユズリハ~、ちゃんと抱いてもらっておるのか?」

「だい………ッ、うるさい、エロゴミ!」

「よし、気分が良い。散った同胞たちを弔いながら、宴にするぞいっ!」


 いや、宴って……俺はコスモスを助けに行くから……


「俺は……」

「小僧、宴にするぞい。ワシの娘の処女喪失話でも肴に一杯やるぞい!」

「いや、俺は今から俺の娘を……」

「ガーハッハッハッハ! しっかし、まだまだ小柄なユズリハとヤルとは、お前もなかなか鬼畜じゃの~、や~い、ロリ~! まあ、ユズリハはペッタンコじゃが、胸もないなりに、そそるじゃろ?」

「やってねーーーーーーーーーーーーーーー! つうか、俺の周りの女は今、かなりデリケートな時期だから自重しろ!」

「グワハハハハ……ん? くんくん……どういうことじゃ貴様ーッ! ユズリハまだ膜がついとるではないか!」

「何で匂いで分かるんだよ! つうか、テメエ少し黙れ!」


 先を急ぐために、ゆっくりピクニックも出来なかったはずの俺らは、何故かハッスルジジイに捕まって、宴会に強制参加させられることになった。

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