幼馴染との昼休み

彼氏と別れたひなは、昼休みになると俺の教室に迎えに来る。

「おーい、とーや」

ひなは手を振っているのを半眼で見ながら、弁当箱を二つ持ってひなに付いて行った。

前日に別れた報告を聞いているので、次の日からひなの弁当も作らないといけないのだ。

人目のつかない屋上へ行くと、ひなは手を前に突き出して弁当を催促してきた。

「とーや、おべんとーちょーだい」

「あいよっと」

俺はひな用の小さ目の弁当を渡すと、ひなは目を輝かせながら弁当を開ける。

「久しぶりのとーやのおべんとーだぁ

いただきます

私、とーやの卵焼き大好きなんだよね

とーやに私の胃袋掴まえられちゃってるよ〜

責任取ってよね」

ひなは嬉しそうに弁当を食べていった。

「いや、なんでだよ」

「なんでも良いじゃん

にひひひ、それともとーやくんは私に弁当作るのイヤなのかな?」

「別に…」

「ちゃーんとお金は払うからネ」

「別にいいよ

俺じゃ出来ないゆきの相談に乗ってくれてるみたいだし、それの対価だと思ってくれれば…」

俺は弁当を開け、食べ始める。

「ゆきちゃんに関しては別に気にしなくても良いんだけどなぁ〜」

「それでも俺達は親友だから、なるべく対等でいたいから貸し借りはあまりしたくない」

「むぅ、ねぇ…」

「なんだよ」

「なんでもないよーだ」

ひなは小さな唇を尖らせながら、最後に残していた卵焼きを口に放り込むとゆっくり咀嚼して飲み込んだ。

「ごちそーさま」

「あいよ、お粗末さん」

俺は水筒に用意してたお茶をひなに手渡し、弁当の残りを掻き込んだ。

ひなはお茶をチビチビと飲み干し、俺が食べ終わるのを見計らって、飲み干したコップにお茶を入れて手渡してくる。

「ありがとさん」

俺はお茶を受け取ると、一気に煽る。

間接キスとかひなとの関係を考えると今更だ。

いちいち気にしていたらキリがない。

「ごちそーさん」

「フフ…」

「なんだよ」

「なんか、カップルっぽいなぁ〜って思ってただけ…

全然そんなんじゃ無いんだけどね」

「そうだな」

「とーやは美少女なひなちゃんと一緒に食事が出来るんだからありがたく思いなさい」

ひなは少し大きめな胸を張り、威張り散らす。

俺は頬に手を付き、適当に返事しながら空になった弁当箱を片付けた。

「それじゃあ待ち合わせ場所と時間は…」

こうして昼休みは、ひなと休日の買い物の段取りと予定を決めて消費されていった。

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