檜山さんちの事情

俺は三年前から妹と二人暮らしをしている。

というのも両親は俺が中学二年、妹が中学一年の時に交通事故で他界してしまっているからだ。

両親が残してくれていた家と生命保険のおかげで、俺達は二人でもなんとか暮らしていけていた。

でも流石に未成年二人だと世間的にも不味いので、母さんの妹で俺達の伯母である士道夜千代しどう やちよさんに保護者の代わりをして貰っている。

と言っても夜千代さんにも仕事がある訳で、普段は別々に暮らしていて、週に一度こちらの様子を見に来てくれている。

ちなみに伯母さんと呼ぶと怒るので名前で呼ぶようにしていた。

帰り道、ひなと別れた俺は、スーパーに寄って夕飯の買い物をしてから早々に帰宅する。

溜まった家事をこなし、夕飯を作って、もうすぐ帰って来るであろう妹のために湯を張り、バイトに行く準備をしていた所で妹が帰ってきた。

玄関へかおを出すと我が家の天使である檜山雪菜ひやま ゆきなが靴を脱いでいた。

我が家の天使は俺とは似ずに文武両道で、艷やかなショートの黒髪にその上超美人だ。

「ただいま〜

あっ、にぃにぃ今からバイト?」

「おう、夕飯作ってあるから食べな」

「うぃ、ありがと〜」

万年帰宅部である俺と違って、雪菜は陸上部で将来有望で注目されているからだ。

だから、なるべく家事は俺が負担して、妹には部活に専念して貰いたいのだが…

「あ、にぃにぃ、家事は二人で分担しようっていつも言ってるでしょ?」

とこの調子だ。

「大丈夫だ

ちゃんと雪菜の仕事を残してある

洗濯だけよろしく

もうちょいで洗い終わると思うから、部活で汚したやつとかも洗っておいて」

流石の兄でも年頃の妹の下着などは、勝手に洗ったりはしないのだ。

「あ、そうだよね

うぃ、その辺は任せといて」

「おう、風呂出来てるから、飯食ったらさっさと入っちまいな

んじゃ、行ってきます」

そうやって俺はバイトへと出掛ける。


バイトを終えて帰って来ると、リビングでキャミソールにショートパンツを履いた雪菜が出迎えてくれる。

「お帰り、にぃにぃ」

「ただいま

あ〜、雪菜、家の中とはいえ、ちょっと無防備すぎやしませんかね?」

「にぃにぃ以外にこんな姿見せないから全然大丈夫」

そうゆう問題じゃないんだけどな…

「それとも妹によくじょーしてるの?」

「なーに言ってんだ」

ニヤニヤした顔で雪菜はこちら見てくる。

俺はそんな雪菜の額に軽くデコピンをした。

雪菜は弾かれた額を抑えて涙目でこちらを睨んだ。

「ぼーりょくはんたーい」

「はぁ、それよりなんか上に羽織る位しとけよ

お前も女の子なんだから」

「うぃ、それよりもひなちゃんまた別れちゃたの?」

「らしいな

それ、ひなから聞いたのか?」

「うん」

「親友としては良い奴を見付けてくれれば良いんだけどな」

「そうだね

後、学校でさ…」

そんな日常の出来事を話しながら檜山家の一日は終わる。

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