第14話 テスト3

「接触して見るかとか」

オレはローグに視線を向けずに、パソコンの画面を見ながら言った。

ローグからは、なぜか楽しそうな気配が漂ってくる。

これがこの女の本性かと思ったが、こういった性格の方が、今のような任務には向いているのかもしれない。

ロボット体とは言え、女性らしいボディーフォルムの彼女を眺めていると、忘れかけた感情が蘇ってくるような感覚をおぼえた。


忘れかけた感情というか、感覚とは、こいつ可愛いというような思いである。

つまり、抑制されているはずの性欲。

ただ、このような感覚がまるきり制限されているわけではなく、少しは残っていた。

ただ、物理的には、性的な行為は出来ないので、それは抑制されていた。

そうでなければ、多分気が狂ってしまう。


「そうね、こうも資料が集まらないと、調べようは無いし」

「でも、わたし達の事が、敵に知られているという事はないのかな?」

ローグは心配そうな様子もなく、オレの肩をポンポンと触った。

オレはローグの、こういった来やすい態度が嫌ではなかった。

脳の破損が激しくて、過去の記憶の一部がなくなっていたが、懐かしい感覚があった。

なんだか昔に、恋人と、こういった間柄で有ったのでは無いかと、そのように思わせてくれた。

懐かしいというか、不思議な感覚だった。

記憶そのものはないのだから、その感覚が本物かどうか、確かめようもないのだが、あたたかい気持ちになれたのは、何年ぶりなんだろう。

ローグという女は、オレを優しい気持ちにさせてくれる。

恋などと言う青臭いものとは違う気もするが、とても大事な感覚である事は、荒んだ機械の脳みそでもよく理解できた。


「誰から接触するのが良いと思う?」

オレはシュウに直接接近した方が良いのではと思ったが、ローグはなんというのかな。

少し興味があって、聞いたのだ。

「わたしはサントスから接近した方が。順番としては正解だと思う」

「どうして?」

「どうしてって、当たり前じゃない」

ローグはさも当然といった様子で、呆れたような声で答えた。

オレもその事に気が付いて、そうだなと、納得した。

「シュウはリーダーだから、接近して行けば、警戒されるかも」

「だけれども、サントスだったら、近付きやすいんじゃないの?」

ローグはオレの考え違いを、確認させてくれた。


「こいつらの居そうなところはどこだろうな」

アジトはだいたいわかっていたが、直接行ったら、素直には入れてくれないだろう。

だから、個人で居る時に、その瞬間を狙って接近した方が良いに決まっている。

「先ずは基地内の調査からかな」

ローグも首をひねる。

オレはカップに残った、もう既に冷めてしまったコーヒーを、一気に流し込んだ。

ローグはオレのその様子を見て、ニヤリと笑ったような気がした。

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