第13話 テスト2

戦闘用サイボーグか。

オレは溜息とともに、ローグが入れてくれた、ブランデー入りのコーヒーを口にした。

良い香りだった。

豆は、いや、オレの部屋にはインスタントしかないはずだが?

それにブランデーなんて高級なもの、持っていない。

酒は飲むが、ブランデーだけはオレの趣味ではない。

香りがキツいから、飲まない。

自分で料理でもしないかぎりブランデーなんて買わないから、軍に居る間は、買わんだろうな。


しかし美味いな、このコーヒー。

「ローグ?」

「情報局の仕事なんてわからないよ」

「いや、そうじゃ無くて、このコーヒーとブランデー、どこのものなのかと」

オレが言うと、ローグは嬉しそうに声をうわずらせて答えた。

「コーヒーはバラモン星、ブランデーはサントス星のものよ」

2つとも、オレでも知っている高級ブランドだな。

ローグは嬉しそうに言った。

「どう?有り難くいただきなよ」

オレはそうする事にする。


音を立てずにすすると、口の中に心地よい香りと味がひろがった。

高級品もたまには良いかなと思う。

「美味いな。あんたのコーヒーの入れ方が上手いのかな?」

「ドリップマシンとポットが優秀なのよ」

ローグはポットを机の上に載せた。

1リットルの水筒である。

そうか、ローグはバッグを抱えていたな。

「いつも持ち歩いているのかな」

「たまによ。今日は着任しただけで、移動日でしょ?暇だと思ってね」

そういうことか、この女の行動パターンが、何となくわかった気がした。

気がしただけだが。


コーヒーのおかげか、少しだけ、疲れが取れて、頭の靄が取れたような気がした。

集中力が戻ってきたようだった。


「何かわかりそう?」

ローグが机に手をついて、オレの肩越しにパソコンの画面を覗き込む。

生身の身体だったら、絶対に勘違いしているな。

もう少し若かったら、接待に勘違いしている。

オレは、ローグの仕草に、ドキリともしなかった。


ローグはそれに気が付いた。

「あら、詰まんないな~、もうちょっと反応してよ」

拗ねて見せたが、なぜかそそられなかった。

彼女に色気がないのではない。

サイボーグ体は、性欲が抑制される。

だから本当は、ローグもオレをからかっているだけなのだが、オレはそれにのってやる気分にはならなかった。


「もうちっと、色気があったらな」

オレは意地悪い口調を加味しながら話したつもりだが、なかなか上手く行かないな。

彼女はオレの頭を軽く小突いた。

いつの間にかそう言う間柄になったのかな?

そういった細かな事は、気にしない事にした。

ローグはオレをにらみつけた。

「ゼロ、絶対にモテないでしょ?」

その通りだな、オレは薄く笑った。

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