第12話 テスト開始

オレは相手のデータを、克明に調べてみた。

当然、基地のコンピュータを使ったので、アクセス記録が残る。

多分相手もその事に気が付いているだろうから、データを覗けば、その分、こちらの身分がわれる危険だってある。


だが、調べないわけには行かない。

リーダーのシュウ、これは女性だが、凄腕のエージェント。

秘密の任務についているらしいが、任務の内容は不明。

どうして秘密の任務についていると思われるのかというと、彼女は内務調査のための組織と噂の部署にいたからだ。

彼女の部下のサントスは、仕事でも彼女の部下だった。


ちなみに記録上は、シュウは結婚した形跡があるが、旦那とは死に別れている。

停戦の4ヶ月前に戦死している。

子供は無し。

サントスも同じようなもので、結婚した相手は、戦死している。

やはり、子供はない。


シュウの嗜好は酒、それ以外は映画を見るのが好きらしい。

学歴は意外と高学歴で、大学院まで行っている。

サントスは大学までで、嗜好品はやはり酒、そして、意外にも、読書である。

出身は、二人ともに不明。

記録に書いてない。

群の記録なのに、不思議だ。

詐称ではなく、記録されていない。

どう言う事かは不明。


おそらく、何かから目を惹く、あるいは目くらましなのではないかと思われます。

兎に角何か目的があって、経歴に穴があるのだ。

気になるが、なんでそんな事をするのか、オレには想像するしか出来ない。

他に不審な点があるかと丹念に読み返してみるが、不審な点はないように思われた。

思われたというのは、オレにはわからない、と、そういうことだ。


ローグはオレの居室にいた。

オレの脇で、コンピューターの画面を覗いている。

許可した覚えがないのだが、ついてきて、隣でオレの作業を覗いていた。


「ねぇ、こいつらって、二人とも、Z2-3型のサイボーグよね。男女のデザイン違いではあるけれども」

ローグが言った。

Z2-3型というのは、戦闘タイプのサイボーグという事だ。

「戦闘の多い部署だったとか?」

オレは言ったが、不信感が残った。

「こいつらのいるのって、スパイの部署よ?不自然じゃない?」

ローグの言う事はもっともな意見だった。

オレもその事に気付かされて、さらに疑問が増えた。


謎が多いな。

本当に、ただのテストかな?

「何か裏があるのかな?」

オレはローグに尋ねてみた。

ローグは、「そーねー」と言いながら、なに探してみたが、今の段階ではよくわからなかったようだ。


いずれにしろ、今の段階では、何も判断できない。

いや、不信感や不安感から、任務を断って、逃げてしまうと言う事は出来る。

だが、それをやったら、軍隊を辞める事になる。

そうなったら、このサイボーグ体を維持できなくなってしまう。

金がかかり過ぎるので、維持できないのだ。

オレは自殺の趣味は無いので、このまま調査を続ける事にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る