第2話 戦乱の惑星 2

身体が自由になってきた。

コールドスリープから醒めて1時間が経った。

任務に必要なデータは、脳内のチップから、オレの記憶として流れ込んでくる。

今回は、目標となる団体の構成や、リーダーの性的な趣向まで、完璧に網羅されている。

今回も、本当にこの調査資料は凄いと感心する。


オレはすべての準備を30分で終わらせて、まず、立ち上がった。

そして、四肢の動作をチェックする。

どこにも異常はない。

任務に支障はない。

支障があるとするならば、オレの心の方だろうか。


武装のチェックも入念に行う。

オレは、左腕から精神波をエネルギーにして打ち出す必殺の隠し武器を持っている。

手首を思い切り下に下げると、小さな銃口が突起して、エネルギーが発射できる。

サイコブラスター、そう呼ばれる最新の暗殺用兵器。

元々オレはサイボーグだから、手荷物チェックにもひっかからない。


サイコブラスターの銃口を突起させると、視界の前面に、照準が映し出される。

適当に、その辺の物に照準を合わせてみると、拡大できるという合図が出てくる。

画像が拡大表示出来て、精密射撃にも対応できるのだ。

スナイパーモードと言われている。

拡大表示させてみる。

120倍まで拡大表示出来る。

照準器の精度は折り紙付き。


オレは武器のチェックも済ませて、銃口をしまう。

さすがに発射テストは出来ないから、これで、動作チェックは終わらせる。

視界に浮かんだ照準も、瞬時に消えた。


機能チェックが一通り終わった頃に、右手のドアが開いて、男が一人入ってきた。

第三太陽系連合軍の制服に身をくるんだ、階級章から見ると、准将クラスの、背の高い頑強そうな体格をした男だった。

顔つきも、頑固そうな、意志の強さを感じさせる顎のラインだ。

目はバイザーで隠されており、覗く事が出来なかった。

オレはその男に見覚えがあった。


脳裏に刻み込まれた情報の中に、この男のデータがあった。

第三太陽系連合第一特務隊隊長、准将、トーリ・サトナカ。

オレの上官になる男だ。

「よく来たな。ゼロ」

ゼロとはオレのコードネームだ。

スパイ作戦のために、軍籍を一時消されている。

だから、何も無いゼロなのだ。

本名はあるが、ここでは意味もなさない。


「わたしの事はわかるか?」

サトナカ准将が言う。

オレは頷いた。

盗聴されている危険は多分にある。

だから、お互いの名前では呼ばないし、あえて階級も言わない。

ま、盗撮の危険もあるから、こうして姿をさらしているのだから、正体のばれる事を懸念しても仕方がないのだけれども。


オレはベッドから起き上がろうとしたが、サトナカが、オレを制した。

「そのままで良い」

オレは言われるままに、ベッドの上に起き上がって、じっと彼を見た。

「やる事は、わかっているな?」

オレは頷いた。

「ここが君の部屋になる。荷物は持ってこさせた。自由にこの部屋を使うと良い」

それから、ポケットから基地のパンフレットを取り出すと、オレに渡してから、クルリと向きを変えて、部屋を出て行った。

パンフレットには、基地内の施設の配置が描かれていた。

サイボーグといえども腹は減る。

取りあえず食堂だな。

オレはベッドから起きて、立ち上がって、自分が裸だという事に気が付いた。

取りあえずは、服を着る事だな。

部屋の中を物色して、自分の服を探し当てて、着用した。

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