バーサーカー血風録

酎ハイ呑兵衛

銀河大戦休戦条約

第1話 戦乱の惑星 1

オレが目覚めたのは、メタスと言うど田舎の惑星だった。

まだ移民が始まったばかりだったが、帝国軍の前線基地が作られて、この星も、銀河大戦の最前線となったのである。

オレはその基地に、補充要員として送り込まれ、今、コールドスリープから、目が覚めたばかりなのだ。


今の星間国家は、地球を発祥として、1100の惑星に進出した人類が、分離独立を繰り返して、今の形になったものである。

人類はいくつもの太陽系に進出して、勢力を広げていった。

勢力を広げても、いわゆる宇宙人には出会う事が出来なかった。

それだから、この戦争も、いまだに地球上の戦争の延長上にあった。

人は数千年の後も、宇宙に居を移しても、争いは一向に終わる事は無かった。

それどころか、殺戮はエスカレートしていった。


惑星破壊兵器等というものまで登場するに到り、さすがに人類は、自らの行為に恐怖した。

そしてもう一つ進化した技術があった。

それは、医術の究極のかたちとでも言うか、神をも恐れぬ技術というか、究極のサイボーグテクノロジーの進化である。

半壊した脳からも、装置の追加で人を補完し、改造して蘇らせる技術である。

オレはその最先端科学の粋を駆使して蘇らされた兵士の残骸だった。


殆どロボット化した身体。

こんな身体になっても真面な精神など維持できるのか。

多くの人間が、絶えきれなくて精神を病む。

それ故に、血液の中に注入する栄養剤の中には、ある種の、精神作用のある薬が混ぜてあるものがあった。

オレはまだそのようなものは必要としなかったので、調合栄養剤は摂取していなかったが、そのような薬にも副作用というか、反作用もあって、やはり改良の余地があった。

どんな状態になっても、生きているという状態だけは維持できるようになったが、これではまるで機械人形、ロボットである。

戦争にかり出された兵士達は、地球時代の太古の戦争から、宇宙戦争のこの時代にも、科学者達のモルモットである事に、違いは無かった。

国のため、家族のために戦っていたものが、そのような姿にされて、しかも最新鋭の秘密兵器でもあるために、帰宅する事も、除隊する事も許されない存在とされてしまった。


そのストレスたるや、尋常なものではなかった。

さらに精神を病み、犯罪めいた行為に出るものまであらわれ、各地でサイボーグ兵士達の反乱も絶えなかった。

オレは前任地ではその反乱の鎮圧にあたっていた。

そしてその任務が終わってからこのメタス前線基地に赴任したが、ここでの任務もやはり、サイボーグの反乱を防ぐ任務だった。


ただ、今回のは前回とは違って、潜入任務である。

氾濫を起こしそうなサイボーグ達に接近し、これを排除せよとの命令だった。

本当に酷な任務である。

だがオレには、それを断り切れない理由もあった。

任務を断れば、廃棄処分が待っていたからだ。

こんなオレでも、さすがに自分が死ぬのは、やはり恐くて仕方がなかった。

銀河大戦が休戦協定が結ばれる中、サイボーグ兵の犯罪や反乱事件が多発し、その危険が顕在化した。

オレの他にもこのような任務に充てられているものが多数いると聞いたが、まったく嫌な仕事である。

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