第3話 戦乱の惑星 3

サイボーグと言えども、腹は減る。

作戦は腹ごしらえをしてから考えよう。

どう急いでも。すぐに任務に移行するのは、難しいだろう。


頭の中の資料を覗きながら、食堂へ向かう。

組織の中に内通者でも作らないと、今回の作戦は上手く行かないだろう。

今回の目的は、反逆組織の壊滅だけでは無い。

裏に控える誰かを捜し当てなければ、作戦成功とは言えないのだ。


組織の壊滅だけだったら、リーダーや主要人物を捕らえたりすれば良いのだ。

今回はもっと後ろの、バックに控えた大物を釣り出すのが目的である。

オレのやるべき事は、先ずは組織と接触して、潜入して、内情を探る。

そのためには、潜入してから、組織内に内通者を作らなければならない。


どうして内通者が必要なのか。

それは、自分の安全のためと、さらには情報提供者の安全のためである。

いざとなったら、情報提供者を安全に逃がしてやる必要が出てくるかもしれない。

故に、ある程度事情を話して、仲間に引き入れる必要があるのだ。


だが、これが難しいところだ。

本当ならば、何も知らないうちに、情報だけを抜いてしまう方が、相手にとっても安全な手法かもしれない。

だが、今までの経験からすると、そうやって聞き出した相手は、情報漏洩をした事がばれてしまうと、口の軽いヤツだと思われて、かえって命の危険があるのだ。

ペラペラと情報を漏らす人間は、口封じに殺される事もある。

つまり、見せしめのために、と言う事である。

オレは自分自信が溜息を漏らしているのに気が付くと、今回の作戦は思いのほか大変なのだと、改めて思った。


通路の角をいくつか曲がったところで、女性のサイボーグ兵士が、オレに話しかけてきた。

本物の身体はどうだったのかは想像すら出来ないが、見た目はずいぶんと男性好みのする体型だ。

身長も、高すぎず、低すぎず、見る人に与える印象を計算したフォルムである。

声も作られている可能性もあった。

低く落ち着いた声である。

聞きやすく、安心感を与えてくれる。


オレは通路の途中で立ち止まって、後ろから来た二人組の邪魔にならないように端に避けて、呼び止めてきた彼女の方を向いた。

「どうしました?」

オレは丁寧に答えた。

「わたし、この基地に着任したばかりで、実は食事がしたくて」

彼女は恥ずかしげに、俯き加減に応えた。

「それなら、わたしも食堂に行くところです。ご一緒しませんか」

オレは、邪険に扱うわけにもいかないなと思い、彼女に同行を打診してみた。

彼女は願ってもないと言った様子であった。

基地は広いから、初めてだと迷子になる。

オレも、あらかじめマップをもらっていなかったら、迷っていたところだ。


オレもまだ、年齢的にも生物的にも女性に興味もある。

彼女と話しながら、基地を散策しながら、食堂へと向かった。

知り合いは多い方が良い。

作戦の足しになるし、味方になってもらえるかもしれない。

そういった、打算的な考えもあった。

それに、オレの知らない事を、彼女は知っているかもしれないのだ。

情報収集のため、そう割り切って、彼女との会話を楽しむ事にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る