第五十章 疑惑の大臣
第五十章 疑惑の大臣
「待ってください。その前にこの場で皆様に見ていただきたいものがあります。」
アニルはそう言ってサクセーナ大臣を横目で見てからソミン指揮官に意味ありげな視線を投げた。ソミン指揮官はそれが何を意味しているのかすぐに理解した。
「実は今日、ソミン
アニルがソミン指揮官に言った。
「はい。」
ソミン指揮官はそう言うと
「紹介状のようだが、これが一体何か?」
外務大臣がアニルに尋ねた。
「紹介者のところにサクセーナ大臣のサインがある。」
財務大臣が言った。
「サクセーナ大臣が紹介したのは兵士のようですな。ええと、アマルト、アミト、アーナンド、ラメーシュ、ラーエ。」
農務大臣が紹介状に
「これはハルシャ王子を襲った五人のスターネーシヴァラ兵の名前です。」
アニルがそう言うと、大臣たちは
「シンハ、これについて何か言うことはないか?」
アニルが鋭い視線を送って言った。
「それはシャシャーンカ王が送った五人の
シンハがそう言うと、
「アノンドという男が五人の中のリーダーのようですね。この男が口を割ればあとの二人も素直にこちらに従うでしょう。」
アニルはそう言いながら書状をソミン指揮官に渡した。
「さて、サクセーナ大臣、何か言うことはありませんか?」
じわじわと
「それはわしが書いたものではありません。」
サクセーナ大臣が言った。
「
ソミン指揮官が
「シンハ、カルナスヴァルナ城でサクセーナ大臣、あるいは大臣の
アニルが尋ねた。
「いいえ。」
シンハが答えた。
「サクセーナ大臣が味方だと知っていたか?」
またアニルが尋ねた。
「いいえ。」
シンハはまたそう答えた。
「
アニルが
「本当に何も知らなかった。知っていたらノコノコ
シンハがきっぱりと言った。
「では、この
アニルはシンハの言葉がまるで聞こえていなかったかのようにしつこく質問をした。
「知らない!シャシャーンカ王からその紹介状のことは何も聞かされていない!」
シンハはいささか声を
「
アニルはわざとシンハが一番傷つく言い方をした。
「私は
シンハがアニルに噛み付かんばかりの
「この紹介状に見覚えは?
アニルがまっすぐ大臣を
「先ほど申し上げた通りです。」
サクセーナ大臣は
「あの
「本当じゃ焦げとる。」
クールマが言った。しゃべる亀に四人の大臣たちの注目が静かに集まった。
「
ルハーニと二匹を黙らせようとソミン指揮官が言った。
「でもインクは
ルハーニがソミン指揮官に言った。ソミン指揮官ははっとして、紹介状を左目でよく見た。ルハーニの言うとおり確かに紙は焦げているのに、インクは変色していなかった。
「アニル殿これはわざわざあらかじめ焦がした紙に書いています。そうでなければインクの色が変色しているはずです。おそらくぼやの後に何者かが忍び込ませたのです。」
ソミン指揮官が早口に言った。
「ソミン指揮官、その紹介状を私に渡してください。」
アニルが言った。ソミンが紹介状を渡すと、アニルはサクセーナ大臣から目を離して紹介状に目を走らせた。そして近くの
「何をするのです!?」
外務大臣が声を上げた。サクセーナ大臣も驚いた顔をして見ていた。
「それはサクセーナ大臣がシャシャーンカ王と通じていたという証拠だったのに!?」
財務大臣が
「術がかけられておるようじゃな。」
クールマが言った。
「おそらくこの紹介状が兵士宿舎に忍び込まされたのはぼやが起きる前です。そうでなければこのような術をわざわざかける必要はありません。」
アニルが先ほどのソミン指揮官の言葉を
「ぼやの
スバル医薬長が言った。
「ということはつまり、サクセーナ大臣は
プータマリ司書長が言った。
「おそらくそういうことでしょう。疑って申し訳ありません、サクセーナ大臣。」
アニルは
「いいえ。わしがあなたの立場であれば同じことをしていたでしょう。」
サクセーナ大臣も
「アニル、サクセーナ大臣が書いたのでなければ誰が書いたんだ?」
ハルシャ王子が尋ねた。
「分かりません。ただ今言えることはサクセーナ大臣に
アニルがハルシャ王子にそう答えた。そして一同を見回した。
「シンハ、この術をかけたのはお前か?」
アニルが紹介状にもう一度
「私ではない。」
シンハが答えた。
「カルナスヴァルナ国にはこういう術が使える者がいるのか?」
「分からない。カルナスヴァルナ城で祭司とは会わなかった。だが、一つだけ言えることがある。カルナスヴァルナ国では祭司の扱いがここほど良くない。そんな国にそれだけの術を
シンハはシャシャーンカ王の自分に対する態度を思い返しながら答えた。
「そうか。」
アニルは何か考えるような
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