第四十四章 アニルとシンハ
第四十四章 アニルとシンハ
シンハはジェイ
「私はカルナスヴァルナ国の祭司シンハ。シャシャーンカ王の書状を持ってきた。開けてくれ。」
返事は当然なかった。シンハはもう一度呼びかけようとした。
「何をなさっているのです?」
シンハは突然背後から声をかけられた。驚いて振り返ると、
「そこは
ソミンはそう言った。
「あなたは?」
シンハは自分の正体が知られていないことを願いながらソミンに尋ねた。
「
ソミンは服をつまんで見ての通りだと示した。けれどそれはシンハが期待していた答えではなかった。シンハは相手を
「祭司殿はこんなところでどうかなさいましたか?」
ソミンは何気なく尋ねた。シンハは答えに困った。
「いえ、別に。」
シンハは言い訳を考えられずにそう言った。
「そうですか。それならばその部屋に不用意に近づかないのが
シンハは驚いた。まさか五人の
「三人はもう何か話しましたか?」
シンハは恐る恐る尋ねた。
「いいえ。口が堅くて手こずっているところです。」
ソミンは困っているような口ぶりで言った。
「大変そうですね。では私はこれで失礼します。」
シンハは
「お待ちください。どちらへ?私がお供いたします。」
ソミンがそう申し出た。いつものソミンらしくない行動だった。
「いいえ、
シンハは逃げるように立ち去った。
シンハは青ざめた顔をしていた。すぐに
その時だった。シンハは廊下の角を曲がると、
「シンハ。」
アニルが驚いて言った。
「アニル!」
シンハは自分から
「シンハ、生きていたのか。」
アニルが言った。
「ええ。」
シンハは短く答えた。シンハの後ろからソミンがやって来た。ソミンはアニルとシンハが顔を会わせているところを見ると、アニルに
「どうかしましたか?」
アニルはその
「こちらの祭司殿が
ソミンは意味ありげに言った。ソミンは捕まえた三人のカルナスヴァルナ兵が何も話さないので、誰の命令でやって来たのか知る手がかりはないかと
アニルは冷静な目でシンハを見た。アニルもシンハの様子がおかしいと思った。命からがらで帰って来たように見えなくもないが、誰にも
「裏切ったのか?」
アニルが冷たい眼を向けて尋ねた。
「私は裏切られたのだ!」
シンハは恨みのこもった声でそう答えた。シンハの背後でソミンは
「ソミン
アニルは二人に指示を出した。二人はすぐさま行動に移した。シンハそれを邪魔しようとはしなかった。黙って三人が去り二人だけになるのを待った。
「おとなしく
その場に二人だけになるとアニルが言った。
「
シンハが
「そう言うだろうと思った。」
アニルがそう言って
「
アニルはつぶやいた。シンハは何のことだろうと
「やはり
アニルが言った。
「ああ、そうだ。私とサチン、アビジートでお前を
シンハはわざとらしく
「じゃあ、その黄色い蛇は何だ?」
アニルが指を指して尋ねた。シンハは手首に巻きついている
「これはアビジートの
シンハはうっすら悲しみの色を見せた。
「それが何なのか知っているのか?」
アニルがそう言うと、シンハはアニルが言わんとしていることが分からず、
「それこそ
アニルが言った。シンハはにわかには信じられなかった。まさかアビジートが盗んでいたのかと心の中で疑った。黄色の
「シンハその
アニルは手を差し出した。アニルの中で
「私の気を逸らして術で私に
シンハは自分を術にかけるための作戦ではないかと疑った。
「それはもともとただの
シンハはアニルの顔を見た。
シンハは手首に巻きついている黄色の
「アニル、これが欲しいか?」
シンハの目が
「欲しいなら追って来るがいい。」
シンハは走り出した。アニルは追うしかなかった。
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