第四十三章 王の帰還
第四十三章 王の
その日は
ナリニーはいつものように王宮の
「ナリニーはどうしてる?」
スグリーヴィー
「いつもの通りです。蓮の池から動こうとしません。」
ギリジャーは静かに答えた。
「そうかい。」
スグリーヴィー
「どういたしましょう。」
ギリジャーが心配そうに言った。
「放っておいてあげなさい。今は何を言ってもあの子の心には届かないよ。」
スグリーヴィー
ナリニーは自分の後ろでそんな会話が取り交わされているのにも気づかず、ただ池を
「ナリニー、いつまでそうしているつもりだ?」
ナリニーは突然背後から声を掛けられた。ナリニーは振り返った。そこにいたのは大臣たちとの会議を終えたばかりのアニルだった。スグリーヴィー
「アニル様。」
ナリンが元気のない様子でアニルを見て言った。
「ずっとそうしていては皆が心配する。」
ナリニーは反省したようにうつむいた。
「そもそもそこで何をしている?」
アニルは
「ナリニー、答えなさい。」
アニルは
その時だった。池の水が急に大きな空気の
「ラージャ王!」
アニルは目を
「ナリニー、これは一体どういうことだ?」
なぜラージャ王の
「シーツにまじないをかけたのです。ラージャ王が王宮に戻りたいと思えばいつでも帰って来られるようにと。」
ナリニーはか細い声で答えた。アニルは服が水に
「最後の最後で帰りたいと思ったらしい。ハルシャ王子にお知らせして、
アニルは
「ナリニー、自分の役目を忘れたのか?」
アニルが
「今すぐにハルシャ王子を
アニルはもう一度言った。
「分かりました。サクセーナ大臣にはお知らせしなくてよろしいのですか?」
ナリニーは冷静さを取り戻して言った。
「ああ、知らせなくていい。サクセーナ大臣は
「え?」
「ハルシャ王子を襲った五人はカルナスヴァルナ兵だった。その五人にサクセーナ大臣は
「まさかそんな…!」
ナリニーが青ざめた顔で言った。
「今は誰も信用できない。サクセーナ大臣を含めて全員。君も気をつけるんだ。裏切り者がいるかもしれない。」
アニルは
「分かりましたわ。ハルシャ王子以外決して知られぬように致します。」
ナリニーはそう言うと、ハルシャ王子の部屋へ向かった。
ハルシャ王子の部屋には
「祭司アニル様の使いで
ナリニーは二人の兵士にハルシャ王子に用があることを伝えると警備兵は部屋の中に入ることを許可した。部屋の中にはハルシャ王子とラーケーシュが一緒にいた。
「ハルシャ王子、私と一緒に来てください。」
ナリニーは
「どうかしたの?」
ハルシャ王子は心配そうに尋ねた。ナリニーがいつもと様子が違うことを感じ取ったのだ。
「ここでお話しすることはできません。一緒に来てください。」
ナリニーがキビキビとした
「私も一緒に行きます。」
そこへラーケーシュが口を
「アニル様のご命令です。ハルシャ王子以外連れて行くことはできません。」
ナリニーはきっぱりと言った。
「さあ、
ナリニーはラーケーシュがつべこべ言う前に
「ラーケーシュ、僕、行って来るからここで待ってて。」
ラーケーシュはショックを受けたような顔をした。ラーケーシュはハルシャ王子が自分も一緒に連れて行くようナリニーに言ってくれることを
「私はここに置いてけぼりですか?」
ラーケーシュがまさかという
「西の
ハルシャ王子は疲れているであろうラーケーシュを休ませるためにそう言ったつもりだったが、ラーケーシュには
「では失礼いたします、ラーケーシュ様。」
ナリニーは
「ねえ、ナリニーどこへ行くの?」
ハルシャ王子が
「
「
ハルシャ王子はそう聞き返してナリニーの顔を見上げたとき、ナリニーの目が涙ぐんでいるのに気づいた。歯を食いしばって泣くのを
二人は
「兄上!」
ハルシャ王子の目からも涙が
「ナリニーがまじないをかけていて、
アニルは静かに言った。ハルシャ王子はアニルの言葉など聞こえていないかのように泣き続けた。
「ハルシャ王子、考えたのですが、カルナスヴァルナ国に
アニルは泣き続けるハルシャ王子に
「今回の一件をなかったことにするだと!?」
ハルシャ王子が泣き顔を上げて
「そうです。」
アニルは
「兄上は殺されたんだ。それを水に流すことになんかできるものか!」
ハルシャ王子はアニルに向かって叫んだ。その声は
「その通り。ラージャ王は亡くなられました。ですからラージャ王なしでこのスターネーシヴァラ国はこの
アニルは今までに見せたことがないような
「なんて奴だ!アニル!お前はスターネーシヴァラ国を守るためなら兄上の死をも利用しろと言うのか!?お前に兄上の死を悲しむ気持ちは無いのか!?」
ハルシャ王子はアニルが
「ハルシャ王子、どうかアニル様の言うとおりにしてください。」
その時、一緒に泣いていたナリニーが言った。
「私はラージャ王のシーツにまじないをかけました。王宮に帰りたいと思えばいつでも帰ってこられるようにと。ラージャ王は亡くなる
ナリニーは泣き
「分かった。ナリニー。アニルの言う通りにする。」
ハルシャ王子は静かに言った。
「ラージャ王の
アニルは再び
「今ラージャ王の死を
アニルはきっぱりと言った。ハルシャ王子は申し訳なさそうにラージャ王の顔を見た。若くして王位に就き、歴代の王の誰よりも国民に
「誰もが兄上の死を
ハルシャ王子がつぶやいた。
「あなたとナリニーに見送ってもらえればラージャ王はお喜びになるでしょう。」
アニルは少し優しい声になって言った。アニルもやはりラージャ王の死を
「さあ、そろそろ行きましょう。カルナスヴァルナ軍がこちらやってくる前に手を打たなければ。」
アニルがハルシャ王子とナリニーに言った。三人は
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