第二章 アジタ祭司長
第二章 アジタ祭司長
ラージャ王はナリニーと別れた後、何事もなかった振りをして王宮の廊下を歩いた。顔色はさっきよりも良くなっていた。ラージャ王が向かっている先は王宮の一室にあるハルシャ王子の部屋だった。ハルシャ王子はラージャ王のたった一人の弟で、まだわがまま盛りの九歳。
「ラージャ王!」
後ろから誰かに呼び止められた。振り返るとそこには白い
「アジタ
ラージャ王は
「ラージャ王!お
真っ赤な顔でギョロっとした大きな目をこれでもかと見開いて迫ってくるや否や、アジタ
「ハルシャの所へ行くだけすよ。ご
ラージャ王はアジタ
「関係ありませぬ。どこへ行くときであろうとも、一国の王は万が一に備えてお
「はい。」
ラージャ王は
「それに、そもそも、あなたは王としての自覚が無さ過ぎます。わしが目を離せばすぐに王宮を抜け出して、こっちへフラフラ、あっちへフラフラ。この間など城を抜け出して町の大通りを歩いていたというではありませぬか。」
「その時はちゃんとお供をつけていました。」
ラージャ王は思わず反論してしまった。アジタ
「お供をつければどこへでも行っていいというわけではありませぬ!ああ、
「すみません。」
「ああ、アーディティヤ王やプラバーカラ王がご存命であったなら何と仰るか。」
『二十三歳という若さで何とかスターネーシヴァラ国を治められるよう教育して下さったのだから、祖父も父上もあなたに感謝しているに違いない。』
ラージャ王は心の中でそう言った。
「フラフラとどこかへ行ってしまうアンポンタンにあなたをお育てしたわしの教育が至らなかったと、お
『アンポンタン?』
ラージャ王はずいぶんな言い方ではないかと思った。
アジタ
「申し訳ありません。アジタ
ラージャ王は十分反省したという顔を作って謝罪の言葉を述べた。もちろんそれはこの場を切り抜けるための
アジタ
「まあ、分かってくだされば良いのです。お耳に入れなければならないこともあることですし、わしがお
アジタ
「ありがとうございます。ところで耳に入れておきたいことと言うのは何でしょうか?」
早速ラージャ王が尋ねた。その表情は先ほどとは打って変わって
「
「アニルが何か?」
ラージャ王は
「いいえ、何事もなく身柄は
「では何でしょう?」
「アニルが盗んだ宝物のことです。先ほど調査に当たっていた
「どういうことです?」
ラージャ王は言っていることに意味が分からないと言うように顔をしかめて尋ねた。
「
ラージャ王はすぐにアジタ
「
「はい。実はアニルが去り
「何と言っていたのです?」
ラージャ王の目がアジタ
「『
「嘘とは言い切れないのが
ラージャ王は目を細めて
「城の中は捜索したのですか?」
「はい、くまなく探しましたが、見つけられませんでした。おそらく、城の外に持ち出されたのではないかと。」
アジタ
「カルナスヴァルナ国への出立を明日に控えておられるのでお耳に入れたくはなかったのですが。気苦労をおかけ致します。」
アジタ
「
「はい、
アジタ
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