スターネーシヴァラ国物語~シャシャーンカ王の罠~
相模 兎吟
第一章 ラージャとナリニー
序
スターネーシヴァラ国は地図の北にある小さな国。気温は温暖で土地は肥沃。ヤムナー川の水に恵まれた緑豊かな土地だ。この国を治めるのはラージャ・ヴァルダナ王。父王の死後、
第一章 ラージャとナリニー
王宮の中庭に面した廊下を一人の若者が歩いていた。美しい豊かな黒髪の持ち主で、きれいにとかして頭の上で束ねていた。顔は整っていて、歳の割には大人びて見えた。それは黒い目が
若者の前方からシーツの山を抱えた一人の若い侍女がやって来た。侍女は
侍女はシーツの山で前が見えなかった。一方の若者の方も考え事をしていて前からやって来る侍女に気づいていなかった。
「あら、ごめんなさい。」
侍女が気の毒そうに言った。
「こちらこそ、すまない。」
しりもちをついた若者は立ち上がりながら言った。その声を聞いた侍女はハッとした。
「もしかしてそのお声は!」
若者の方も声を聞いて相手が誰だか気づいた。
「その声はナリニー?」
若者がぶつかった相手は
「申し訳ございません。私の
ナリニーは相手の正体が分かると、
「大丈夫、しりもちをついただけですから。私がぼうっとして歩いていたのがいけませんでした。ナリニーの方こそ
ラージャ王はナリニーに
「はい、私は何ともございませんわ。」
ナリニーは申し訳なさそうに言った。
「それなら良かった。ところでナリニー、そのシーツの山はどうしたのですか?」
ラージャ王は自分を吹っ飛ばした
「これはカルナスヴァルナ国へ持って行くラージャ王のシーツですわ。隣国とは言え長旅になりますでしょう?これくらい持って行かなければ。全部
ラージャ王はそう言われてようやくシーツから
「いい香りですね。」
ラージャ王がそう言うと、ナリニーは嬉しそうに
ラージャ王は
「ところでラージャ王、お
ナリニーは王宮の中とはいえ、一人でフラフラと出歩くラージャ王を心配して言った。
「大丈夫、大丈夫。王宮からは出ません…。」
ラージャ王はそう言ってナリニーの申し出を断った。その時だった。ラージャ王は突然、
「どうかなさいまして?」
「ラージャ王?」
声がした方を見ると、ナリニーの二つの黒い
「最近、突然変なものが見えるんです。いつも同じ光景で、空が見えるんです。きっとこのスターネーシヴァラのどこかの景色なのでしょう。それなのに…」
ラージャ王は心の
「ラージャ王。それはきっと何かの
「それはできません。この身に何が起ころうと行かねば。では、私はこれで。」
ラージャ王はそう言って
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