第18話 またまたホテルへ
網走海豹ホテルに戻った私と京子は、夕食後、1階のロビーでくつろいでいた。喫茶コーナーで、私は紅茶を、京子はメロンソーダを注文した。
「でさあー小春ー、係長って、まだ一応疑われてるのよね。網走署はまだ係長を見つけられないのかしらねー。尾崎さん、網走は都会じゃなくって小さな街だって言ってたのにさー。おかしくない?」
「係長は刑事だから、警察の内部事情を知っているから、まだ見つからない、のかな……」
「んー、じゃなくて、誰か警察内部の人間が手引きしてるとかさあー」
「そうね、考えられないことじゃなわね」
「尾崎さんが係長をかくまってるとかさあー」
「……」
「……」
二人とも黙って顔を見合わせた。
「京子、それ、すごく可能性高いわよね……」
そう言って、私は紅茶を一気に飲み干した。
21年前の事件のことを考えたかったし、その上疲れていたのでしばらくロビーにいた。京子はスマホで無料動画サイトのユー・ストリームを見ているようだった。
「あーーー! 小春! 見てよこれー!」
突然京子が大声を上げた。
「びっくりした。何よ、京子」
「見て、見て、これ!」
京子は私にスマホの画面を見せた。『萌えろ、オホーツク・フィッシング』が流れていた。
「よーく見て、この人の腕のところ」
京子が指さしたところをよく見てみた。
「えっ、刺青? あっ、ラッコの刺青!」
「そうよ、小春。このラッコの刺青、あの桜井って男の刺青と同じよー」
「この動画に出てる人は、あの北網走漁業組合会長の桜井さん……」
「係長はこの刺青に気づいたんじゃない?」
「うーん、だとしても、係長がこの動画の男のことを桜井さんだとわかったのかしら?」
「そのことを相田さんが知っていたとかー?」
「うーん、どうだろ?」
「きっとそうよ、だから係長が相田さんを誘拐したのよー」
「いや、それはさあ」
「ついでに佐々岡さんを殺したのよー」
「いや、短絡的すぎるって」
京子は自信満々に見えた。
「小春、よく見るとさあ、『萌えろ、オホーツク・フィッシング』に出てくる女性、毛皮を何着も持ってるみたいねー。桜井って男も、いろんな毛皮を着てるみたいね」
「そうなの? どれどれ、うーん、わかりにくいけど、言われてみれば、動画ごとに毛皮が変わってる気がする。よく気づいたわね、京子」
「佐々岡さんが毛皮コレクターだったことに関係あるわねー」
「そうかもね」
京子が細かいことに気づいてくれたおかげで、もやもやが少し晴れた気がした。
「京子、千島
「あー、あのおばあちゃんねー。何か隠してる感じがしたのよねー。でも話してくれるかなー?」
「明日、行ってみましょ」
私たちは、翌日に青島さん宅を訪問することにした。
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