第17話 再び網走署へ
私たちは再び網走署へ来た。署内ではまだ北網走漁業組合会長の桜井さんが受付で文句を言っていた。この人は仕事しないで何をしているのか、暇なのだろうかと正直思った。
私たちは刑事課へ行き、係長の実家を訪れたことを伝えて、尾崎刑事を問い詰めた。
「尾崎さん、村田係長の父親に殺人の容疑がかかっていたという件に関する事件記録を見せてください!」
「……わかりました。こちらへどうぞ」
私たちは資料保管庫へ通された。そこで、事件の記録に目を通した。
21年前、漁港近くで男性が殺害された。名前は牧田明、46歳の漁師。検視結果では、刃物で胸を刺されて即死ということ。事件現場には、千島
私と京子はそこで思わず、「あっ」と声を出してしまった。千島
「京子、どう思う?」
「えっ? どうって……なんかー、いろんなことが繋がりそうで、でもそんなことない感じかなー」
「私もそんな感じかな。自分の義父である千島
「うん、十分あり得る話ねー。だけど、北海道警では、網走署の捜査に口出しできなかったってことなんでしょうねー」
「……で、なぜか今、係長は網走に来て、それから佐々岡さんが殺されたり、相田さんがさらわれたりした」
「小春、こう考えられない? 千島さんが殺されるのを目撃した相田さんが、あいまいな証言をしたんでしょ。もし、ちゃんと証言していれば、千島さんを殺した犯人を逮捕できたかもしれない。それで、係長は網走に来て、相田さんに会って確かめた。相田さんは認めたんじゃない? 自分がいい加減な証言をしたってことを。だから、係長は復讐のために相田さんを誘拐した」
「京子、それはいくら何でも……」
「えーーー。刑事なんだから、私情を挟まずに可能性のあることを考えなきゃさあー」
「確かにそうだけど……。だったら、佐々岡さんは? なぜ殺されたの?」
「係長がやったのよー」
「……京子……、なんか言い方ひどくない?」
「だってー、係長が網走に来てから、起こったのよー。しかもー、係長の不在時にー」
「うーん、確かにそうなのよね。でも……うーん。漁師の牧田さんが殺されたことは?」
「んー、係長の実家に案内してくれたおばさんはさぁ、北網走漁業組合の桜井って人が犯人じゃないかって言ってたよねー。そういえば、その桜井って人、毛皮のコート着てなかったっけ?」
「そういえば、そうね。今さっきも毛皮のコートを着てたわよね。千島
「うん、確かそうね。毛皮かー……」
「なんか、いろいろと接点が見えてきたわね……」
いろんなことが繋がりそうで繋がらないというもどかしさを、私は感じていた。夕方なので、私たちはホテルへ戻ることにした。
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