第12話 高校へ

 翌日になり、私たちが朝食を終えてすぐに、嶋村先輩から連絡がきた。

「香崎、鑑識から調査結果がきた。それよりもまず、係長のことを先に話そうか。村田係長、高校を卒業するまで、網走にいたらしい」

「え! 本当ですか!」

「えー、マジでー!」

 私も京子も驚いた。

「網走出身なんですか?」

「うーん、『北海高校』を卒業するまでは網走にいたことは間違いないようだが、出身かどうかまではわからない。たぶん、網走出身なんだろうな」

「そうですか。網走にいたって……北海高校……」

「俺も驚いたよ、昨日刑事部長から聞いたんだ」

「えっ、どうやって刑事部長とお話を……」

「どうやってって、俺と刑事部長、麻雀仲間だから」

「……はぁ……」

「それと、もう一つの件だ。係長のパソコンの履歴を復元してもらった。係長は無料動画サイトのユー・ストリームを見ていた。番組名は、『萌えろ、オホーツク・フィッシング』だ。その番組ばかり、数時間も視聴していたみたいだ」

「数時間も……。先輩、ありがとうございました。その番組、調べてみます」

「なんだー、エロいサイトじゃないのかー」

 私たちは早速、スマホでその番組を見てみた。前月に投稿された最新話であるNo.76の動画を最初に見た。太った男が出てきて、番組の冒頭で「毛皮に萌え~!」と叫んだ。その男はボートに乗って釣りをしていた。男は帽子をかぶってサングラスをしており、顔ははっきりとはわからなかった。アシスタントの女性が厚着なのに、その男は素肌の上に毛皮のコートを着ていた。私は釣りに興味はないので、正直つまらい動画だった。次に、No.75の動画を見た。内容はほぼ同じだった。どんどん遡って過去の動画を見ていった。どの動画でも、男は「毛皮に萌え~!」と叫んでいた。No.65の動画ではアシスタントの女性が水着で登場した。

「係長、この水着ギャルが目的だったんじゃないのー」

「オホーツク・フィッシングだから、オホーツク海で釣りをしてるんだよね」

「普通に考えたらそうでしょうねー」

 私たちは全ての動画を見たが、特別な情報を得ることはできなかった。

 二人で相談して、係長の母校である北海高校を訪れることにした。


 地図アプリのおかげで、すぐに北海高校に到着することができた。私たちは警察手帳を見せて事情を話した。校長が対応してくれることになった。私たちは校長室へ通された。

 校長はまだ40代だった。なので、20年くらい前のことなどわからないということだった。係長のことを調べてもらったが、よくわからないということだった。係長が卒業した頃の卒業アルバムを調べてもらったが、村田圭吾という名前は見つからないと言われた。私と京子はお互いに顔を見合わせた。二人とも、奇妙だなと感じていた。

 校長は他の教員たちに尋ねてくれた。だが、誰も知らないということだった。とても奇妙だった。

「ねえ、小春、あれ見て」

「えっ、何?」

 京子は壁に並んで飾られてある写真の一つを指さした。

「この間の、あのおばあちゃんじゃない?」

「そういえば、面影あるような、ないような……」

「絶対そうよ。間違いないって」

 その写真の女性は、相田さんが連れ去られた現場にいた、あの高齢の女性によく似ていたのだ。

「ああ、あの人ですか。青島先生ですね。元校長です。私、青島先生の教え子の一人なんですよ」

「その、青島先生の住所、わかりますか?」

「うーん、わかるかなぁ。定年したのが10年くらい前だし」

 校長は棚の中のダンボールを開けたり、机の中のファイルを開けたりして調べてくれた。

「小春ー、これじゃない?」

 京子がたくさんある卒業アルバムを見ながら、青島さんの住所を発見した。

「あーそうか、アルバムに載ってますね。ええそれですね。青島恵子さん」

 私は青島さんの住所を写メに撮った。

 私たちはその青島さんに会いに行くことにした。

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