第11話 係長を疑う
私と京子は網走海豹ホテルに戻り、その日の夜はゆっくりと休んだ。
翌朝になった。係長はまだ戻っていなかった。
尾崎刑事から連絡がきた。昨日の高齢の女性が言っていた理恵ちゃんというのは相田理恵さんのことで、車で連れ去られたらしいということだった。それと、係長の行方はわからないままだということも。係長のことについて何か知っているのなら教えてほしいと言われたが、知らないと伝えるしかなかった。
「相田さんがー!」
「そうよ」
「どうして相田さんが連れ去られるようなことにー!?」
「係長が関係してるのかしらね」
「ひょっとして、係長が連れ去ったんじゃないのー?」
「まさか、そんなこと……」
「だってさあ、またこそこそとホテルから抜け出したわけでしょー。怪しくない? 私たちの前から消えてすぐに、相田さんが連れ去られたなんて、タイミング良すぎない?」
「……そうね……」
私は万が一のこともあると考え、T県警の山崎課長に連絡した。係長が行方不明であることを伝えたが、特に課長から指示はなかった。次に、嶋村先輩に連絡してみた。
「嶋村先輩、香崎です。実は係長が行方不明になりまして……」
「ああ、聞こえてたよ。課長に電話してたろ。しかし、ヤバい状況だよな。係長が関わってるなんて思いたくないけどさ」
「ええ、このままでは、係長に殺人の容疑と誘拐の容疑がかかるかもしれません。先輩、課長と高木先輩にも訊いたのですが、休暇を取る前の係長に何か変わったことはなかったでしょうか?」
「んー、そういえば、係長、パソコンをじっと眺めてたような気がするけどなあ……」
「パソコン……ですか」
「ああ、パソコンの画面をな」
「先輩、係長のパソコンの履歴、見れませんか?」
「ああ、見てみようか。ちょっと待って――――。ダメだ、履歴が消去されてる」
「消されてますか……履歴を消すなんて怪しいですよね、先輩?」
「どうせー、係長のことだからー、いかがわしいサイトでも見てたのよー、小春ー」
「先輩、鑑識に頼んで、履歴を復元してもらえないでしょうか?」
「いや、まずいよ。そんなこと勝手にできないだろ」
「お願いします。何とかして係長を探し出さないといけないんです」
「もし係長に容疑がかかってるのなら、できるけどさぁ」
「鑑識に調べてもらった結果、履歴がエロいサイトばっかだったらどうすんのよー、小春ー」
「いやー、俺の判断じゃできないよ……、……え……、……課長がさあ、親指立ててる。OKサインだわ。わかった、係長のパソコン、鑑識に回しとくよ」
「あ、ありがとうございます」
「礼は課長に言って、じゃあ」
「ちょっと待ってください、先輩。あと、係長の経歴について調べてもらえませんか?」
「経歴? 経歴なら、高木がお前らに話したって言ってたけど」
「高木先輩から聞きましたけど、もっと詳しくとかは無理でしょうか?」
「まあ、一応、調べておく」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
その日は嶋村先輩から連絡はなかった。
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