第10話 事件に遭遇
私と京子は来た道を通って、ホテルへ戻ることにした。歩き出してほんの数分してからだった、その悲鳴が聞こえてきたのは。
「きゃーーーーーー!!! 誰かーーーー!!!」
高齢の女性の声だった。私たちは声のする場所へと急いだ。女性が路上で膝をついているのが見えた。同時に、白っぽい車が走り去るのも見えた。
「どうしました! 大丈夫ですか!」
「連れ去られた! 誘拐よ! 早く警察呼ばないと!」
その女性はかなり取り乱していた。
「京子、車を追って!」
「オッケー!」
京子は走り去った車の方へ急いだ。
私は携帯を取り出して110番通報しながら、女性に話しかけていた。
「大丈夫ですか! どこかケガは!」
「ケガはないわ。それよりも警察よ!」
「安心してください」
そして、110番につながり、事の次第を伝えた。
「理恵ちゃんよ、助けないと……」
「大丈夫ですよ、安心してください。私も警察官です」
「へえー、警察の方!?」
女性は少しホッとしたように見えた。京子が戻ってきた。
「小春、ごめん、ダメだった……ハアハア……全然追いつけない」
「女性が連れ去られたのですか?」
「そうよ、きっと理恵ちゃんよ」
「理恵ちゃん? お知り合いですか、ご家族の方ですか?」
「昔の教え子の理恵ちゃんよ」
「おばあさん、ちょっと落ち着きましょうよー。そこの縁石に座りましょー」
京子が女性を立たせて縁石の上に座らせた。
しばらくして、網走署のパトカーが到着した。
私たちは網走署の刑事に事情を説明した。その後、網走署に行って、詳細に説明した。私と京子は、捜査に協力を求められると思っていたが、そんなことは一切なく、あっさりと帰宅の許可が出た。私たちが警察官であることが理由なのだろうか、それならなおさら目撃者として協力できるはずなのだが、どうもしっくりとこなかった。張り合いが抜けたのだ。
私と京子はとりあえず、ホテルに戻ることにした。
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