第8話 係長を迎えに行く
翌朝、私たちは朝食を済ませた後、これからどうするか対策を練っていた。そこへ、網走署から私に連絡が入った。嫌疑不十分で係長が釈放されるので、身元引受人として署まで迎えに来てほしいということだった。
私と京子はタクシーで網走署まで向かった。
「おう、香崎、磯田、わりぃな。迷惑かけてしまって」
「ええ、ホント、迷惑ですよー、係長ー」
京子がすごく嫌そうに言った。係長は顔を歪めていた。尾崎刑事は必死で笑いをこらえていた。尾崎刑事によると、現職の刑事であること、そして逃亡の恐れがないと言う理由で釈放になったということだった。
私たちはホテルに戻った。1階ロビーのソファーに座って、ゆったりとしながら私と京子は係長に質問をした。
「係長ー、キャリアなんですよねー。どうして私たちに言わなかったんですかー?」
「わざわざ言うことじゃないだろ」
「キャリアって言ったほうがー、女性警官にモテるんじゃないですかー?」
「このハードボイルドな俺に、そんなこと必要ないだろ」
「あっそ」
京子はすごく冷たく返事をした。
「係長、殺害現場に係長の名刺が落ちていたそうですが、この休暇中に網走で名刺を渡したのですか?」
「さあ、どうだろうな。そういえば、名刺入れを道に落としてな、その時に何枚か名刺が散らばったのに気づかなかったのかもしれん」
「またまたー、そんな子どもみたいな言い訳、通じるわけないでしょー。相田さんに渡したんじゃないですかー?」
「いや、相田さんには渡してない」
「そうですか」
「係長ー、ガールズバーに行って名刺を配ってたんじゃないんですかー?」
「バカ言うんじゃないよ。そんなとこ行って、警察の名刺を配るわけないだろ」
「たしかに、それもそうですねー」
「あっ、そういえば、海獣祭りで仲良くなったコスプレイヤーに渡したかもしれんな」
「係長、その方の名前とか人相は?」
「知らないよ、そんなの。お互い着ぐるみ着てたんだから、人相なんてわかるか」
「なぜ、名刺を渡したんですかー?」
「そりゃ、なぜだろうな。って、お前ら、何で俺が尋問されなきゃいけないんだよ。網走署で似たようなことを散々訊かれたよ。疲れた、俺はもう部屋行くぞ」
係長は怒って自分の部屋に戻って行った。私と京子も自分らの部屋に戻った。
しばらくして、係長が私たちの部屋をノックした。
「おう、俺の部屋のシャワー、故障してんだよ。だから、お前らの部屋のシャワー貸してくれないか?」
「何でー? 貸すわけないじゃん」
「いいだろ、シャワーくらい」
「係長、セクハラ相談窓口に連絡しますねー」
「しょうがない、大浴場に行くしかねえな」
京子に言われて、係長は寂しそうに退散していった。
「京子、今の何か、怪しくない?」
「何が?」
「係長の態度よ」
「えー、別にー」
「シャワー貸してくれって、貸すわけないでしょ。だから、それを分かってわざと言いに来たんじゃないかな」
「どういうこと?」
「大浴場に行くことをわざわざ私たちに知らせに来たのよ」
「だから、どういうこと?」
「アリバイづくりよ。たぶん係長、外出するわよ」
私と京子は係長の部屋を見張った。係長が出てきた。私たちは後をつけた。係長はエレベーターに乗った。エレベーターは1階へ降りて行った。私たちは階段を使って急いで1階へ降りた。係長はホテルから出ていった。
「ほらね、京子」
「尾行しましょ」
私たちは係長を尾行することにした。
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