第7話 係長のことを調査
私たちはホテルへ帰り、部屋に戻った。
「私は、やっぱり相田さんと係長との関係が気になるなぁ。京子は何とも思わないの?」
「えー、だから、あんな美女とコスプレ親父に関係があるわけないじゃん。いや、あるとしたら、お金の関係でしょー」
「京子は係長のこと、何か知ってる? T県警に来る前にどこの署にいたとか」
「全然知らない」
私は係長のことが気になっていた。私はT県警の山崎刑事課長に尋ねることにした。
「課長、香崎です。村田係長のことなんですが。休暇を取る前に何か変わったこととかありませんでしたか?」
「変わったことか、んー、先週なんだけど、13日だったかなあ、あの人、突然一週間の休暇を取りたいと言ってきたな。15日から休みたいということだった」
「15日ですか。係長が網走に来る前日ですね。ということは、おそらく、網走に来たくて、休暇を取ったのでしょうかね。それについて、係長は何か言ってませんでしたか?」
「んー、いや、特に何も。俺に訊くよりも、お前とか磯田のほうが普段から付き合いがいいだろう」
一緒に聞いていた京子がムッとして話に参加しようと、私のスマホを奪った。
「課長ー、プライベートなところまで知るわけないじゃないですかー! 係長とは仕事上の付き合いしかありませんよ!」
京子が半ギレで言い返した。
「ああ、そうか」
「課長ー、大体どうして一週間も休暇を許可したんですか? 断ればよかったのにー」
「ああ、断りたかったんだが、どうしても気を使うだろ、村田係長、キャリア組だからさ」
「………………は?」
私と京子は驚いて言葉に詰まった。
「いや、『は?』って何だよ。あの人キャリア組なんだから、断りづらいだろ」
私と京子は顔を見合わせた。
「…………えっと、課長、えっと、係長って、キャリアなんですか?」
「そうだよ。えっ、まさかお前ら知らなかったのか?」
私と京子は顔を見合わせた。
「…………はい、知りませんでした」
「お前ら、もう1年以上も一緒に仕事して知らなかったのか?」
「係長は何も話さなかったので、知りませんでした」
「そうか。あの人、話しそうにないもんな」
「でもー、係長って30代後半でしょー? キャリアなのにまだ警部補って、出世、遅くないですかー?」
「そうだな。何かいろいろと理由があるらしいんだが、詳しくは高木にでも訊いてみろ」
「はい、わかりました、課長、ありがとうございました」
私たちは自分たちの上司のことをほぼ知らなかったのだ。
次に、高木先輩に連絡してみた。
「高木先輩、香崎です。突然ですが、村田係長のことを尋ねたいのです。係長、網走と関係があったりするんでしょうか?」
「ああ、今、課長がお前と話してたみたいだな。村田係長は昔、北海道警にいたそうだ。キャリア組で採用されて、東京でしばらく勤務してから、本人の希望で北海道警に行ったらしい」
「北海道警ですか。本人の希望って、そんなの可能なんですか?」
「いやそれが、普通はそんな希望は通らないらしいんだが、係長の場合、北海道に行きたがってて、それが通ったっていうんだよ」
「それ、確かな情報なんですか?」
「だと思うよ。前の前の本部長から直に聞いたからな」
「えっ、どうやって?」
「俺、釣り仲間だから」
「……はあ、それもすごいですけど、係長の経歴もすごいというか……」
「なんでも、係長さあ、実は、網走署に行きたがってた、って聞いたんだよ」
「網走署!?」
「そう。普通そんなとこ希望しないよな? で、今回の事件だろ。これは裏に何かあるぞ」
私と京子は顔を見合わせた。
「でもー、高木先輩ー、北海道警だったら網走署に行けるんじゃないですかー?」
「いや、無理だ。管轄が違うだろ」
「えっ? 何でー?」
「京子、網走署を管轄してるのは、北見方面本部よ。北海道は広いから特別なのよ」
「なんだ磯田、そんなことも知らなかったのか?」
「先輩を試しただけですよー」
「高木先輩、ありがとうございました」
私たちはまた顔を見合わせた。係長が昔網走署に行きたがっていたことと、係長が今回の殺人事件の重要参考人になっていることが、単なる偶然とはとても思えなかった。
時刻は夕方、外はすでに暗くなっていた。
その晩はゆっくりと休むことにした。
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