前日譚:第四話
「椿、頑張ってくるんよ!」
「うん。それじゃ、行ってくる!」
試験会場まで送ってくれたお母さんに手を振る。
よし、いざ本番!
――なんて物は、思ってた以上にスムーズに。
気がついたら終わっていて。
あっと言う間に外は暗くなり、お母さんの迎えを待ちながら自動販売機で買ったココアを飲む。
「……毎回ココア持ってきて応援してくれたの、本当に嬉しかったな」
なんて、独り言を呟いているとお母さんの声がする。
「椿ぃ、迎えに来たよ」
どうやった?と聞かれる。
「思った以上に上出来だと思う」
「それならよかったわぁ」
あ、そうだ。とお母さんは鞄の中を漁り、私にスマホを見せてくる。
「桜ちゃん合格したって!」
「本当に!?良かった!」
なんか、凄い自分まで嬉しくなって。
「椿も大丈夫そうやし、お母さん安心したわぁ」
「まだ発表されてないってば、でも大丈夫だと思うから」
楽しみやぁ、とお母さんは微笑む。
「今夜はお鍋やよ」
「本当!?ちょうど食べたかった所!」
桜ちゃんから美味しいもん届いたからねぇ、とお母さんが嬉しそうに私の手を引く。
「わっ、危ないって!」
「ごめんごめん、早く椿に会いたくてなぁ」
試験なんて学校より短いじゃん、なんて思いながら。
嬉しさがこみ上げてくる。
「それじゃ帰ろか、椿」
「うん」
***
――数日後。
「合格っ!」
送られてきた通知書、合格の文字を見て安堵する。
「流石私の娘やぁ!良かったわぁ……」
嬉しさと、安心感と。同時に溢れてきたんだろうなぁとお母さんの顔と声で判断する。
私も……嬉しさと、安心感と。感謝の気持ちでいっぱいになる。
「早速報告してくるわぁ」
ゲームを起動してチャットに書き込むお母さん。
『無事に娘合格したよぉ!』
ぽこん、と通知音がなる。
『おめでとう!』
『良かった!』
ちょうどみんなが居る時間でチャットは賑わう。
「なんか恥ずかしいな……」
「みんな喜んどるの見て嬉しいわぁ」
その後も続々とお祝いのチャットが飛んでくる度に画面を見せてくれるお母さん。
名前だけなら知ってる人、名前は知らないけどアイコンは知ってる人、本当に知らない人――。
いろんな人からおめでとうとお祝いされる。
「友達よりも先にこんなにお祝いされるなんて、なんか……おもしろいな」
友達にもまだ言ってないというのに、お母さんの知り合いから沢山来てるなんて。
「お、桜ちゃんからも来とるよ」
ちょっとだけピクっとしながら画面を見る。
『おめでとう!お互い合格してよかった!』
……えへへ、と笑ってしまう。
「なんや椿、嬉しそうにして」
「いや、同い年だから親近感湧いちゃて」
それに――なんだか、もっと近い何かが。
あるようなないような。
うーん……なんか引っかかるけど、嫌な感じじゃないのだけはわかる。
「とりあえず友達にも報告しないと!」
「ここで盛り上がっとったもんなぁ、報告したらみんな喜ぶやろねぇ」
合格した旨を友達に送ると、通知が飛んでくる飛んでくる。
「あはは、ゲームでもメッセージでも忙しいや」
「それだけ愛されとるってことやろ?お母さんも嬉しいわぁ」
その後お父さんがケーキを買って帰ってきてくれて。
みんなでお祝いをして――。
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